カール・ゴードン・ヘナイズ

カール・ゴードン・ヘナイズ：宇宙への情熱を燃やした天文学者、宇宙飛行士

カール・ゴードン・ヘナイズ（1926年10月17日 - 1993年10月5日）は、アメリカ合衆国の天文学者、宇宙科学者であり、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の宇宙飛行士としても知られています。彼の研究人生は、マコーミック天文台やウィルソン山天文台といったアメリカ国内の著名な天文台だけでなく、南アフリカのラモント-ハッシー天文台、オーストラリアのストロムロ山天文台など、世界中の天文台を舞台に展開されました。アポロ15号、スカイラブ2号、3号、4号の宇宙飛行士サポートクルーを経て、1985年にはスペースシャトル・チャレンジャーのミッションSTS-51-Fにミッションスペシャリストとして搭乗し、宇宙へと飛び立ちました。

1993年、NASAの機器テストのためエベレストに登山中、高山病により66歳でその生涯を閉じました。

幼少期から天文学者への道

1926年、オハイオ州シンシナティで生まれたヘナイズは、幼い頃から宇宙に強い興味を持っていました。少年時代のヒーローは冒険活劇の主人公バック・ロジャースと、エベレスト初登頂を成し遂げたエドモンド・ヒラリー卿でした。宇宙飛行がまだ現実のものではなかった時代、彼は天文学に情熱を注ぎました。ボーイスカウトでは天文学のメリットバッジを取得しています。

プレーンビルとマリエモントの学校に通い、高校では野球と体操に打ち込みました。第二次世界大戦中にはV-12海軍大学訓練プログラムに参加し、デニソン大学、バージニア大学へと進学しました。海軍士官候補生となる前に終戦を迎えたため、海軍予備役となり、1967年に宇宙飛行士となるまでA1の徴兵資格を保持していました。バージニア大学では数学の学位を取得し、マコーミック天文台で研究に従事。1948年から1951年まで、南アフリカのラモント＝ハッシー天文台に駐在し、南天の輝線星や星雲の観測を行いました。この経験が、彼の生涯にわたる輝線天体の研究の原点となりました。1954年、ミシガン大学で天文学の博士号を取得しています。

1952年にはキャロライン・ローズ・ウェーバーと結婚し、4人の子供を授かりました。

研究者としての功績

博士号取得後、ウィルソン山天文台で輝線星や星雲の研究を続けました。1956年からはスミソニアン天体物理観測所 (SAO) で人工衛星の追跡プログラムに携わり、ベーカー＝ナン・カメラを用いた衛星追跡局の世界的ネットワークの開発と運用に貢献しました。

1959年、ノースウェスタン大学で教鞭を執り始め、惑星状星雲、化学特異星などの研究を進めました。1961年から1962年にはオーストラリアのストロムロ山天文台で客員観測員として研究を行いました。

また、ヘナイズは宇宙空間での天文学研究にも尽力しました。ジェミニ計画やスカイラブ計画において、宇宙空間での紫外線スペクトル観測実験を主導しました。スペースラブ計画では、紫外線望遠鏡の開発にも携わっています。

75本以上の天文学に関する論文を発表しており、中でもマゼラン雲の輝線星や輝線星雲をまとめたカタログは、彼の名声を確立しました。カタログに収録された天体の中には、「Henize 206」のように、彼の名前が付けられたものも存在します。

科学者宇宙飛行士としての挑戦

1963年に最初の科学者宇宙飛行士に応募しましたが、年齢制限により叶いませんでした。しかし、1967年、NASAが再度科学者宇宙飛行士を募集した際、年齢制限が適用されないことを確認し応募、見事選抜されました。ジェット機の操縦経験がなかったヘナイズは、53週間のジェットパイロット養成プログラムを修了し、生涯で2,300時間のジェット機飛行時間を記録しました。

アポロ15号では、科学的な知識が求められるサポートクルーとCAPCOMを担当。スカイラブ計画でも同様の役割を果たしました。1977年には宇宙実験室シミュレーションミッションに参加しています。

スペースシャトルでの宇宙飛行

18年間の待機期間を経て、1985年、ヘナイズはスペースシャトル・チャレンジャーのSTS-51-Fミッションにミッションスペシャリストとして搭乗しました。このミッションでは、天文学、太陽物理学、電離層研究、生命科学、超流動ヘリウムの研究など、多岐にわたる実験が行われました。ヘナイズは、実験装置の操作、ロボットアームの操作、スペースラブシステムの保守を担当しました。

58歳での宇宙飛行は、当時アメリカ人としては最年長記録でした。

宇宙飛行士引退後

1986年に宇宙飛行士を引退後、リンドン・B・ジョンソン宇宙センターでスペースデブリの研究に従事しました。彼は、スペースデブリが宇宙ステーションに与える影響について研究し、スペースデブリ問題の重要性を訴えました。

エベレストでの死

1993年、NASAの機器テストのためエベレストに登山中、高山病により亡くなりました。彼の遺志により、遺体はエベレストに埋葬されました。

受賞

Robert Gordon Memorial Award (1968)
NASA Group Achievement Awards (1971, 1974, 1975, 1978)
* NASA Exceptional Scientific Achievement Medal (1974)

人となり

ヘナイズは、科学者や宇宙エンジニアが集まるオープンハウスを主催し、子供や若者への教育活動にも熱心でした。彼の功績を称え、テキサス大学オースティン校には「カール・ヘナイズ記念学部生奨学金」が設立されています。

彼の生涯は、宇宙への情熱と探求心、そして人々に貢献しようとする強い意志に満ち溢れていました。

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