カール・ツァイスのレンズ製品一覧

カール・ツァイスは、ドイツを拠点とする光学機器メーカーであり、そのレンズ製品は世界中で高い評価を受けています。当初、すべてのレンズは「ツァイス・アナスチグマート」という名称でしたが、1900年頃にレンズ設計の系統に応じて「プラナー」、「ウナー」、「テッサー」、「プロター」などと命名されるようになりました。その後も、さまざまな用途に応じた高性能レンズを開発し続けています。

概要

カール・ツァイスのレンズは、写真用だけでなく、顕微鏡や望遠鏡、高級メガネレンズなど、多岐にわたる分野で使用されています。その高い性能は世界中で認められており、プロフェッショナルからアマチュアまで幅広い層に支持されています。

「カール・ツァイス」のブランドはカール・ツァイス財団が所有していますが、ボシュロムやコシナなど、他のメーカーによってライセンス生産または委託生産されたレンズも多く存在します。しかし、本家カール・ツァイスでは現在も、シネレンズ、顕微鏡、望遠鏡、半導体ステッパー用など、多種多様なレンズの開発と製造を続けています。

レンズコーティング技術も進化しており、以前は単層コートのTコーティングが用いられていましたが、現在は多層膜のT（ティースター）コーティングが主流となっています。ただし、全てのレンズにTコーティングが施されているわけではありません。

マウント呼称

近年では、ライセンス生産のレンズにおいて、他社のレンズマウント規格に対しツァイス独自の呼称が用いられています。

- ZAマウント: ソニーのα AマウントまたはEマウントに相当し、ソニーが製造を担当しています。
- ZEマウント: キヤノンのEFマウントに相当し、日本ではコシナが製造を担当しています。
- ZF・ZF2マウント: ニコンのFマウントに相当し、日本ではコシナが製造を担当しています。ZF2はカメラ本体との通信チップを搭載し、Ai-P相当の機能を持つ一方、絞り環には露出計連動爪がない仕様です。
- ZKマウント: ペンタックスのKマウントに相当し、日本ではコシナが製造を担当していましたが、2010年秋に生産を終了しました。
- ZMマウント: ライカのMマウントに相当し、日本ではコシナが製造を担当、一部はドイツで製造されています。
- ZSマウント: M42スクリューマウントに相当し、日本ではコシナが製造を担当しています。
- ZVマウント: ハッセルブラッドのVマウントに相当し、ドイツで製造されています。

シリーズ名称

2013年以降、ツァイスが開発・設計するレンズには、ファミリーネームが付けられ、カテゴリー分けされるようになりました。

- Otus: 35mmフルサイズ対応の一眼レフカメラ用マニュアルフォーカスレンズのフラッグシップシリーズ。ラテン語でフクロウの一種を意味します。
- Touit: APS-Cサイズミラーレスカメラ用オートフォーカスレンズ。ラテン語でオウムの一種の属名を意味します。
- Loxia: 35mmフルサイズ対応のミラーレスカメラ用マニュアルフォーカスレンズ。ラテン語でイスカの属名を意味します。
- Batis: 35mmフルサイズ対応のミラーレスカメラ用オートフォーカスレンズ。被子植物のバティス目に由来します。
- Milvus: 35mmフルサイズ対応の一眼レフカメラ用マニュアルフォーカスレンズ。ラテン語でトビの属名を意味し、コシナとの共同開発です。

単焦点レンズ

以下に、ツァイスの代表的な単焦点レンズについて、アルファベット順に解説します。

- ビオゴン: 対称型広角レンズで、ルートヴィッヒ・ベルテレによって設計されました。
- ビオメター: 東ドイツで設計されたクセノター型レンズのブランドで、ハリー・ツェルナーによって設計されました。
- ビオター: 東ドイツで設計されたダブルガウス型レンズのブランドで、ウィリー・ウォルター・メルテによって設計されました。
- ディスタゴン: 西ドイツで設計された逆望遠型レンズのブランドで、エルハルト・グラッツェルによって設計されました。
- フェルン: ミラーボックスを併用する超望遠レンズで、後にテレテッサーに改名されました。
- フレクトゴン: 東ドイツで設計された逆望遠型レンズのブランドで、ハリー・ツェルナーとルドルフ・ソリッシによって設計されました。
- ヘラー: 2群5枚構成のレンズで、ジルヴェスター・フーバーによって設計されました。コーティング技術の発展により、試作のみに終わったレンズです。
- ホロゴン: エルハルト・グラッツェルによって発明された超広角レンズで、歪曲収差がほぼ完全に補正されています。
- ルミナー: マクロ写真用レンズで、顕微鏡の交換レンズとしても使用されます。初期のモデルには「ZEISS WINKEL」のロゴが刻印されています。
- ミクロター: マクロ写真用レンズで、1930年代から東ドイツで継続生産されました。西側への輸出では商標を避け、単に「M」と刻印されました。
- ミロター: 反射望遠レンズのブランドです。
- ネッター: 3群3枚の普及版レンズです。
- ノヴァー: 3群3枚の普及版レンズです。
- オルソメター: ウィリー・ウォルター・メルテによって、航空写真用として発明されました。
- オルソプラナー: マイクロフィルム用高解像度縮小レンズで、引き伸ばしにも用いられます。特殊用途のため「S」が冠されています。
- パンター: 3群3枚の普及版レンズで、元はゲルツの商標でしたが、別物として設計されました。
- パンコラー: 東ドイツで設計されたダブルガウス型レンズのブランドです。
- プラナー: ダブルガウス型レンズで、パウル・ルドルフによって設計されました。
- プロター: パウル・ルドルフによって発明され、ウナーを経てテッサーの原型となったレンズです。
- ゾナー: ルートヴィッヒ・ベルテレによって設計されました。当初は大口径標準レンズとして使用されましたが、現在は望遠レンズとして用いられています。
- テッサー: パウル・ルドルフとエルンスト・ヴァンデルスレプによって発明されたレンズで、コンパクトレンズや望遠レンズの基礎となっています。
- トポゴン: ロベルト・リヒテルが開発した対称型広角レンズです。
- トリオター: 3群3枚の普及版レンズです。
- テレスーパーアクロマート: ハッセルブラッドVシリーズ用のレンズです。
- ウナー: パウル・ルドルフによってプロターを改良して発明され、テッサーの原型となりました。

ズームレンズ

ズームレンズには、各レンズ構成名に「可変」を意味する接頭語「バリオ-（Vario-）」が付けられます。ツァイスのズームレンズは、他社の同スペックのレンズよりも大型・大重量になる傾向があります。

- バリオパンコラー: 東ドイツで設計されたズームレンズのブランドです。
- バリオプラクチカー: 東ドイツで設計されたズームレンズのブランドです。
- バリオゾナー: 広角、標準、望遠に関わらず用いられており、ソニーのビデオカメラやデジタルカメラの上位機種に採用されています。
- バリオテッサー: コンパクトカメラや小型・薄型デジタルカメラに採用されています。

コンバーター

焦点距離を変えるアタッチメントレンズは、ツァイスでは「ムター（Mutar）」と呼ばれます。

- コンタックスRTS用ムター: リア・テレコンバーターです。
- ハッセルブラッドVシリーズ用ムター: リア・テレコンバーターです。
- ローライフレックス二眼レフカメラ用ムター: フロント・コンバーターです。

参照文献

- Carl Zeiss Camera Lens Division, The right lens for each situation -- Carl Zeiss camera lens types. Camera Lens News, Nr. 38 (December 2010), p. 11 pdf 2010年12月23日閲覧。

設計開発した設計者

- エルンスト・アッベ
- エルンスト・ヴァンデルスレプ
- ルートヴィッヒ・ベルテレ
- パウル・ルドルフ
- ロベルト・リヒテル
- ウィリー・ウォルター・メルテ

提携企業

カール・ツァイスと提携している、または過去にした企業を以下に示します。

- アルパ
- コシナ
- ハッセルブラッド
- ロジクール
- ノキア
- ライカ
- ローライ
- ジナー
- ソニー
- ヤシカ
- 京セラ
- ヴィーヴォ

その他

映画「バリー・リンドン」では、アポロ計画用プラナーF0.7が使用された例があります。

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