ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット! (EP)

ローリング・ストーンズの記念碑的ライブEP『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』

1965年、ローリング・ストーンズによって世に送り出された『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』(Got LIVE if you want it!)は、バンド初の公式ライブ音源を収録したEPです。この作品は、彼らがイギリス各地で行ったツアー公演の中から、リヴァプールとマンチェスターでの熱狂的な演奏を収めたもので、バンド初期の勢いとエネルギーを鮮やかに捉えています。

生々しいサウンドと録音の謎

『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』最大の特徴はその生々しいサウンドです。多少の音質調整はされているものの、ライブならではの臨場感あふれる演奏が聴く者の心を掴みます。エンジニアであるグリン・ジョンズは、録音に際し、バルコニー上にマイクを設置したという逸話も残っています。しかし、このEPには興味深い謎があります。「アイム・オールライト」という楽曲は、後にリリースされたLP版にも収録されましたが、EPとLPではボーカルパートが異なっているのです。このことは、複数のテイクが録音されていたことを示唆しており、当時の録音技術の工夫が垣間見えます。

アルバムタイトルは、ブルースマン、スリム・ハーポの楽曲「アイ・ガット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」を捩ったものです。ちなみに、同公演で演奏された「ダウン・ザ・ロード・ア・ピース」は、ブートレグとしてリリースされています。さらに「リトル・レッド・ルースター」や「ラスト・タイム」といった楽曲も録音されていたとされ、未発表音源としてファンの間で語り継がれています。「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」もこの公演で録音され、1966年にリリースされたアメリカ盤LPに収録されました。

各国のチャートと評価

1965年6月、イギリスで発売された『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』は、EPチャートで堂々の1位を獲得しました。音楽評論家、リッチー・アンターバーガーはAllMusicにおいて、「生のエネルギーがはっきりと伝わってくる」と高く評価し、特に「アイム・ムーヴィン・オン」と「アイム・オールライト」をベストトラックとして挙げています。

アメリカでは当初リリースされませんでしたが、「アイム・オールライト」、「ルート66」、「アイム・ムーヴィン・オン」の3曲が、後に『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』や『ディッセンバーズ・チルドレン』といったアルバムに収録されることとなりました。長らく入手困難なレア盤として扱われてきましたが、2004年には『シングルズ 1963-1965』ボックスセットにCDとして収録され、一般に広く聴かれるようになりました。その後、2010年にはデジタル・リマスター版がリリースされ、2011年の『60's UK EPコレクション』にも収録されました。さらに2013年には7インチ・ヴァイナル盤として再リリースされ、その歴史的価値は改めて認識されています。日本ではロンドン・レコードから12インチ盤が発売され、ユニークな販促物として、コンドームを模した小型のサックが帯に添付されていたことも話題となりました。

収録曲とメンバー

このEPには、ローリング・ストーンズの初期の代表曲に加え、カバー曲も収録されており、彼らの幅広い音楽性を示すものとなっています。演奏メンバーは、ミック・ジャガー（リードボーカル、ハーモニカ、パーカッション）、キース・リチャーズ（ギター、バッキングボーカル）、ブライアン・ジョーンズ（ギター、バッキングボーカル）、チャーリー・ワッツ（ドラムス）、ビル・ワイマン（ベースギター、バッキングボーカル）という、バンドの黄金期を支えた面々です。

まとめ

『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』は、ローリング・ストーンズの初期のライブパフォーマンスを体感できる貴重な作品です。その歴史的価値、生々しいサウンド、そしてバンドメンバーの若々しいエネルギーは、今もなお多くのファンを魅了し続けています。入手困難な時期もありましたが、様々な形で再リリースされており、現在でも容易に入手することができます。ローリング・ストーンズの歴史を語る上で欠かせない、まさに記念碑的な一枚と言えるでしょう。

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