キクイモ

キクイモ（菊芋）とは

キクイモ（学名: Helianthus tuberosus）は、北アメリカ原産のキク科ヒマワリ属の多年草です。別名として、アメリカイモ、ブタイモ、カライモ、サンチョーク、エルサレムアーティチョーク、トピナンブールなど、様々な名前で呼ばれています。夏には黄色いキクに似た花を咲かせ、地中にできる塊茎は食用とされます。草丈は2メートル以上に成長しますが、栽培は比較的容易です。塊茎に豊富に含まれるイヌ[[リン]]は、腸内環境を整え、血糖値を下げる効果があるとして、近年健康野菜としても注目されています。

名称の由来

キクイモの和名は、菊に似た花を咲かせ、地下に芋（塊茎）ができることに由来します。地方によっては、カライモ、シシイモ、ブタイモ、イモギクなどと呼ばれることもあります。中国名は「菊芋」（洋姜）です。

英名であるエルサレム・アーティチョークは、イタリア語の「ヒマワリ・アーティチョーク」を意味する「Girasole Articiocco（ジラソーレ・アルティチョッコ）」が訛って伝わったという説があります。花がヒマワリに、味がアーティチョークに似ていることから名付けられました。

分布と歴史

キクイモは北アメリカ北部から北東部が原産地です。アメリカ先住民はヨーロッパ人が移住する前から栽培していました。現在では、南アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアに移入し、野原や土手、空き地などに群生しています。

ヨーロッパには17世紀初頭に伝わり、乾燥地や痩せ地での重要な農作物となりました。現在では、アメリカよりもヨーロッパで広く栽培されています。食用だけでなく、飼料、果糖、イヌ[[リン]]、アルコールの原料としても利用されています。

日本には江戸時代末期に飼料用として導入され、野生化しています。明治初期には北海道で「ブタイモ」として飼料用に栽培されましたが、家畜の腸内で発酵しやすいことから、その後は栽培されなくなりました。第二次世界大戦中には、非常食として栽培されたこともあります。

特徴

キクイモは多年生の草本で、地下に大きな塊茎を形成します。草丈は1 - 3メートルにもなり、茎は太く、よく枝分かれします。葉は卵状の長楕円形で、粗い毛で覆われています。繁殖力が非常に強いのが特徴です。

花期は秋（日本では9 - 10月頃）で、菊に似た黄色い花を多数咲かせます。開花直前に茎葉が急速に茂り、地下の節から匍匐茎を伸ばし、その先にサトイモのような塊茎を形成します。塊茎は不揃いで凹凸があり、品種によって色や大きさが異なります。地上部は霜に弱いですが、塊茎は低温に強いです。

キクイモに似た植物としてイヌキクイモがありますが、イヌキクイモは茎に毛がなく、夏に花が咲くため区別できます。

栽培

キクイモは比較的栽培が容易で、痩せ地でも育ちます。輪作は1-2年が推奨されます。連作すると収量が低下するため、肥沃な砂壌土が適しています。種芋は春に植え付け、秋に塊茎を収穫します。生育期間が長いため、収穫は晩秋の霜が降りる頃になります。生育力が強いため、掘り残しがないように注意が必要です。

種芋の植え付けは、畝に溝を掘って行い、株間を60cm程度に保ちます。植え付け後は、芽かきや土寄せを行い、倒伏を防ぐために支柱を立てると良いでしょう。収量は10アールあたり1.5 - 3トンほどで、肥沃な土地ではより多くの収穫が見込めます。

収穫したキクイモは、冷蔵保存するか、土に埋めて保存します。長期保存する場合は、土に埋めて貯蔵するのが良いでしょう。

利用

キクイモは主に塊茎を食用としますが、春に出る若い苗も食用にできます。一般的な品種は家畜の飼料としても利用されます。

塊茎は、ジャガイモにゴボウの香りが加わったような独特の風味で、アーティチョークに似た味わいと形容されます。アクが強いため、酢水にさらしてから調理するのが一般的です。サラダ、甘酢漬け、天ぷら、和え物、スープなど、様々な料理に利用できます。煮物にする際は、煮崩れを防ぐために皮付きのまま茹でこぼしてから調理します。イヌ[[リン]]を豊富に含み、健康食品としても注目されています。

若苗は、茹でて水にさらしてから、和え物、おひたし、炒め物、天ぷらなどに利用できます。

塊茎は、果糖の原料やアルコール製造にも利用されています。イヌ[[リン]]は、腸内環境を整え、血糖値の上昇を抑える効果があるため、糖尿病予防にも良いとされています。イヌ[[リン]]の含有量は晩秋頃に最も高くなります。

福岡県築上郡では、キクイモを使った加工品が作られ、地域の小学校では栽培から販売まで取り組んでいます。岐阜県恵那市岩村町では、キクイモの味噌漬けや粕漬けが名物として販売されています。長野県や熊本県などでも、キクイモを使った地域振興が行われています。市場では、国産のキクイモは「トッピナンポ」と呼ばれることもあります。

類似する植物

キクイモに似た植物として、イヌキクイモがあります。イヌキクイモは茎に毛がなく、夏に花が咲くこと、塊茎が細長いことで区別できます。

まとめ

キクイモは、食用としても健康食品としても利用価値の高い植物です。栽培も比較的容易なため、家庭菜園でも育てることができます。独特の風味を活かした様々な料理に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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