キャンベラ (ケント級重巡洋艦)

HMASキャンベラ（D33）の生涯：オーストラリア海軍の誇り

HMASキャンベラは、オーストラリア海軍が保有した重巡洋艦であり、その艦名はオーストラリアの首都キャンベラに由来します。本艦はイギリス海軍の1924年度海軍整備計画に基づき、ケント級重巡洋艦の1隻として建造されました。第一次世界大戦後の海軍軍縮条約により、巡洋戦艦「オーストラリア」を失ったオーストラリア海軍は、新たな戦力を求めていました。そこで、イギリスにケント級重巡2隻の建造を依頼、その結果誕生したのが「キャンベラ」と「オーストラリア」でした。

設計と特徴

ケント級は艦隊決戦よりも、植民地間のシーレーン保護などの任務を重視して設計されました。そのため、条約で定められた排水量内で、必要最低限の武装と引き換えに、高い凌波性、航続距離、居住性が確保されました。艦体は乾舷の高い平甲板型で、艦首には2段のフレアが設けられ、凌波性能を高めています。主砲は20.3cm連装砲塔を前部に2基、後部に2基配置し、3本の煙突のうち2番煙突が太いのが特徴でした。また、復元性と水雷防御のために、船体舷側には広範囲にバルジが装着されていました。

戦間期から第二次世界大戦へ

キャンベラは1925年9月にスコットランドで起工、1928年7月に竣工しました。1929年にはオーストラリアに到着し、1930年代にはニューカレドニアやフィジー、中国などを訪問しました。第二次世界大戦開戦前には、軽巡洋艦と共に東南アジア方面を巡航しました。

第二次世界大戦が開戦すると、キャンベラはタスマン海やインド洋で哨戒や船団護衛任務に従事しました。ドイツ海軍の仮装巡洋艦や封鎖突破船との戦闘で戦果をあげました。

1940年11月、ドイツ仮装巡洋艦「アトランティス」がタンカーを捕獲した際、捜索に参加しましたが発見には至りませんでした。その後、イギリス船の遭難信号を受け、現場に向かい生存者を救助しましたが、「ピンギン」は発見できませんでした。1941年2月には、インド洋での敵通商破壊艦捜索に参加し、3月にはドイツ船「コーブルク」とノルウェータンカー「ケティ・ボルビク」を発見、両船を撃沈しました。その後もインド洋で船団護衛任務を続けました。

太平洋戦争と最期

太平洋戦争が勃発すると、キャンベラはアメリカ海軍のペンサコーラ船団の護衛に加わり、その後、ポートモレスビーへの輸送船団護衛や、シンガポールへ向かう輸送船団の護衛に従事しました。1942年2月にはANZAC戦隊に所属し、珊瑚海海戦にも参加しました。

1942年8月、ガダルカナル島上陸作戦（ウォッチタワー作戦）に参加しました。8月8日深夜から9日未明にかけての第一次ソロモン海戦で、日本海軍の三川艦隊と交戦し、激しい砲撃を受けました。機関が故障し航行不能となり、自軍によって自沈処分されました。この海戦で、乗員85名が戦死、55名が負傷しました。

キャンベラの沈没後、イギリスは重巡「シュロップシャー」をオーストラリア海軍に貸与しました。また、アメリカ海軍は、建造中だったボルチモア級重巡洋艦に「キャンベラ」の名を与え、その名を後世に伝えました。

キャンベラの発見

1992年、海洋調査学者ロバート・D・バラードのチームによって、鉄底海峡の海底でキャンベラが発見されました。船体は比較的原形を保ったまま海底に着底しており、その勇姿は今もなお、歴史を物語っています。

まとめ

HMASキャンベラは、その短い生涯の中で、オーストラリア海軍の象徴として、数々の任務と戦いを経験しました。その名は、現在もアメリカ海軍の艦艇に受け継がれており、その功績は決して忘れられることはありません。キャンベラの戦歴は、オーストラリア海軍の歴史に深く刻まれ、後世に語り継がれるべきものです。

参考資料

伊藤正徳『連合艦隊の栄光』
奥宮正武『ラバウル海軍航空隊』
木俣滋郎『連合軍艦艇撃沈す』
テオドール・クランケ、H・J・ブレネケ『ポケット戦艦　― アドミラル・シェアの活躍 ―』
エドウィン・グレイ『ヒトラーの戦艦　ドイツ戦艦7隻の栄光と悲劇』
『世界の艦船』各号
バレット・ティルマン『第二次大戦のワイルドキャットエース』
R・F・ニューカム『サボ島沖海戦　米軍史上最大の敗北』
ロバート・D・バラード『THE LOST SHIPS OF GUADALCANAL』
ウォルフガング・フランケ、ネルンハルト・ローゲ『海の狩人・アトランティス』
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 潜水艦史』
本吉隆『第二次世界大戦 世界の巡洋艦　完全ガイド』
G. Hermon Gill, Royal Australian Navy, 1939–1942
S. D. Waters, The Royal New Zealand Navy
国立国会図書館デジタルコレクション
海軍研究社編輯部 編『ポケット海軍年鑑』
* 海軍有終會編輯部同人 共譯『一九四〇年版　ブラッセー海軍年鑑』

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