ボルチモア級重巡洋艦

ボルチモア級重巡洋艦：太平洋戦争を駆け抜けた万能艦

ボルチモア級重巡洋艦は、アメリカ海軍が第二次世界大戦中に建造した重巡洋艦の艦級です。ワシントン海軍軍縮条約の失効後、条約の制約を受けずに建造されたため、排水量は14,000トンを超える大型艦となりました。その結果、防御力は列強の建造した巡洋艦の中でもトップクラスを誇り、対艦戦闘能力と対空能力を両立させた、まさに万能艦と呼べる存在でした。

設計と特徴

前級であるウィチタ級重巡洋艦の設計思想を受け継ぎ、主砲には55口径8インチ3連装砲を3基搭載しています。これは当時の重巡洋艦としては標準的な火力でしたが、ボルチモア級は船体サイズの拡大に伴い、副砲も強化されました。具体的には、5インチ単装砲8基から38口径5インチ連装砲6基へと増強され、対空砲火能力が大幅に向上しました。さらに、装甲もウィチタ級の5インチ、ニューオーリンズ級の5.75インチから6インチ（舷側）に強化され、防御力は非常に強固なものとなりました。

排水量は9,000トン級の条約型重巡洋艦から14,000トンへと大幅に増加しましたが、速度には影響がありませんでした。また、56口径40mm機関砲（4連装）や55口径20mm機関砲（連装、単装）を多数搭載することで近接対空砲火にも優れ、対艦と対空の両方に対応できる汎用性の高い艦でした。

戦歴

1941年から建造が開始され、太平洋戦争中の1943年から1945年にかけて次々と竣工しました。竣工後は、要人輸送、機動部隊の護衛、攻略作戦の火力支援（艦砲射撃）、戦隊旗艦など、多岐にわたる任務に従事しました。その高い能力から、太平洋戦域のあらゆる場所でその姿を見ることができました。

後期の建造艦は、上部構造物や煙突の設計が異なっており、オレゴン・シティ級として分類されることもあります。また、船体を流用して建造されたサイパン級航空母艦も存在します。

戦後の活躍

戦後も、ボルチモア級の艦艇は活躍を続けました。「ボストン」と「キャンベラ」はミサイルを搭載してボストン級ミサイル巡洋艦に改装され、1970年代後半まで現役でした。また、一部の艦は大規模な改装を受け、オールバニ級ミサイル巡洋艦として再就役しました。これらの改装は、ボルチモア級が現代の海戦にも対応できる能力を備えていたことを示しています。

兵装

主砲

主砲は、55口径8インチ3連装砲3基9門で、前級のウィチタ級と同じです。砲身はMk.12またはMk.15でしたが、性能的な差異はありませんでした。重量335lbs (151.95kg) の徹甲弾を砲口初速2,500fps (762m/s) で発射し、30,000yd (27,432m) まで到達させることができました。

副砲・対空火器・その他

就役当初は、5インチ38口径連装砲、Bofors 40mm機関砲、Oerlikon 20mm機関砲で構成されていました。具体的な搭載数は、5インチ連装砲6基12門、40mm機関砲を4連装12基48門、20mm機関砲を単装28基28門でした。戦後の改装時には、特攻機に対して有効性の低かった20mm機関砲を撤去し、40mm機関砲をVT信管弾頭対応の3インチ連装両用砲に換装しました。

ボストン級およびオールバニ級として大規模改装された艦艇には、RIM-2 Terrier、RIM-8 Talos、RIM-24 Tartarなどの艦対空ミサイルや、RUR-5 ASROC対潜ロケットが搭載されました。また、USS Toledo、USS Macon、USS Helena、USS Los Angelesの4隻では、SSM-N-8 Regulusの試験運用も行われました。

同型艦

原型（ボルチモア級）

ボルチモア (USS Baltimore, CA-68)
ボストン (USS Boston, CA-69/CAG-1)
キャンベラ (USS Canberra, CA-70/CAG-2)
クインシー (USS Quincy, CA-71)
ピッツバーグ (USS Pittsburgh, CA-72)
セントポール (USS St. Paul, CA-73)
コロンバス (USS Columbus, CA-74/CG-12)
ヘレナ (USS Helena, CA-75)
ブレマートン (USS Bremerton, CA-130)
フォール・リバー (USS Fall River, CA-131)
メイコン (USS Macon, CA-132)
トレド (USS Toledo, CA-133)
ロサンゼルス (USS Los Angeles, CA-135)
シカゴ (USS Chicago, CA-136/CG-11)
ノーフォーク (USS Norfolk, CA-137)（未成艦）
スクラントン (USS Scranton, CA-138)（未成艦）

改良型（オレゴン・シティ級）

オレゴン・シティ (USS Oregon City, CA-122)
オールバニ (USS Albany, CA-123/CG-10)
ロチェスター (USS Rochester, CA-124)
ノーザンプトン (USS Northampton, CA-125/CLC-1/CC-1)
ケンブリッジ (USS Cambridge, CA-126)（未成艦）
ブリッジポート (USS Bridgeport, CA-127)（未成艦）
カンザス・シティ (USS Kansas City, CA-128)（未成艦）
タルサ (USS Tulsa, CA-129)（未成艦）

派生型

ボストン級ミサイル巡洋艦: 2番艦「ボストン」と3番艦「キャンベラ」を改装した、アメリカ海軍初のミサイル巡洋艦。
オールバニ級ミサイル巡洋艦: 7番艦「コロンバス」、14番艦「シカゴ」、およびオレゴン・シティ級2番艦「オールバニ」を改装したミサイル巡洋艦。
サイパン級航空母艦: 船体を流用して建造された軽空母。後に、航空機運搬艦（AVT）、通信中継艦（AGMR）、指揮艦（CC）に艦種変更。
ノーザンプトン: オレゴン・シティ級4番艦として建造中断後、戦術指揮艦（CLC）として再開、後に指揮艦（CC）に艦種変更。

登場作品

『危険な道』: 主人公が乗艦する巡洋艦役で「セントポール」が登場します。真珠湾攻撃時に湾外にいたため攻撃を免れ、残存艦を率いて日本海軍の機動部隊を攻撃しようとしますが、潜水艦の攻撃で損傷します。その後、修理を終えて後半で戦線に復帰し、再び主人公が乗艦して日本海軍と戦闘を繰り広げます。撮影にはアメリカ海軍が全面協力し、実物が使用されています。

関連情報

アメリカ海軍艦艇一覧
* Global Security.org - Baltimore class cruiser

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