キーロフ級
巡洋艦は、ソビエト連邦海軍が1930年代に建造した軽
巡洋艦です。
ソ連海軍における正式な艦種呼称は軽
巡洋艦でしたが、その
主砲口径から重
巡洋艦として扱われることもあります。この艦級は、ソ連が初めて本格的に建造した近代的な
巡洋艦であり、その後の
ソ連海軍の発展に大きな影響を与えました。
開発
1930年代初頭、
ソ連海軍は第二次五ヶ年計画において、
巡洋艦の建造を計画しました。しかし、
ロシア革命後の混乱で海軍技術は大きく後退しており、自力での設計は困難でした。そこで、ソ連はイタリアに技術協力を要請し、最新の軽
巡洋艦である「ライモンド・モンテクッコリ級」の設計図を入手しました。さらに、その後継艦である「エマヌエレ・フィリベルト・デュカ・ダオスタ級」の機関設計図と製造支援を受け、これらを基にキーロフ級は設計されました。
艦形
キーロフ級の
船体形状は、イタリアの
巡洋艦の流れを汲む短船首楼型を採用しています。
バルト海の冬の氷結に対応するため、砕氷構造の艦首を持つのが特徴です。
主砲は三連装
砲塔に収められ、艦首甲板に背負い式で2基、後部甲板に1基が配置されました。
艦橋は操舵
艦橋と司令塔を一体化した構造で、前部には覆いがありましたが、後部は開放型でした。前部
マストは
三脚式で、頂上部には測距儀と射撃方位盤が配置されました。機関配置はシフト配置を採用し、2本
煙突の間には
水上機施設が設けられました。
武装
キーロフ級の
主砲は、当初15.2cm砲が検討されましたが、最終的には18cm砲が採用されました。これは、ソ連がロンドン海軍軍縮条約に調印していなかったため、自由に口径を選択できたこと、既存の15.2cm砲が旧式化していたことなどが理由です。新たに開発された18cm砲は、三連装
砲塔に収められ、全3基9門が搭載されました。しかし、
砲塔設計の都合上、3門の砲身は同時に仰角・俯角運動を行い、斉射しかできませんでした。このため、砲弾の衝撃波が相互に干渉し、散布界が広くなるという問題がありました。
高角砲、その他の備砲
高角砲には、新設計の10cm高角砲が採用され、片舷3基ずつ計6基が搭載されました。また、対空
機関砲として4.5cm高角
機関砲も搭載されました。後に、4.5cm
機関砲は3.7cm
機関砲に換装され、搭載数も増加しました。水雷兵装としては、53.3cm三連装
魚雷発射管を2基装備しました。
電子兵装
当初、キーロフ級には
レーダーなどの電子装備は搭載されていませんでしたが、第二次世界大戦中に
レンドリース法でアメリカ製のSG
レーダーとイギリス製の281型
レーダーが供与されました。戦後、これらの
レーダーはソ連製の
レーダーに換装されました。
機関
機関配置は、
ボイラーとタービンを交互に配置するシフト配置が採用されました。キーロフの機関はイタリアから輸入したものでしたが、ヴォロシーロフには国産の機関が搭載されました。これにより、ヴォロシーロフはキーロフよりも高い速力を発揮しました。最大出力は113,000
馬力で、36
ノットの速力を出すことができました。
艦歴
キーロフ
1935年起工、1938年竣工。
冬戦争や第二次世界大戦に参加し、
タリンとレニングラードの防衛戦で活躍しました。戦後、練習
巡洋艦に類別変更され、1974年に除籍されました。
ヴォロシーロフ
1935年起工、1940年竣工。
黒海艦隊に配属され、第二次世界大戦に参加しましたが、
黒海艦隊司令部の意向により、後半はほとんど活動しませんでした。1959年に
試験艦に種別変更され、
1973年に除籍されました。
諸元
全長: 191.4m
全幅: 17.4m
排水量: 基準7,750トン、満載9,280トン
主砲: 18cm三連装砲3基
高角砲: 10cm単装砲6基(後に8基)
機関: ヤーロー式重油専焼水管缶6基+
アンサルド式ギヤードタービン2基2軸
最大出力: 113,000
馬力
最大速力: 36
ノット
乗員: 734名
同型艦
キーロフ
ヴォロシーロフ
出典
「Conway All The World's Fightingships 1922-1946」(Conway)
「
世界の艦船 1986年1月増刊号 近代
巡洋艦史」(
海人社)
「
世界の艦船増刊 イタリア
巡洋艦史」(
海人社)
「
世界の艦船 2008年6月号・7月号」(
海人社)
アンドレイ・V・ポルトフ、『ソ連/
ロシア巡洋艦建造史』、
世界の艦船 増刊第94集、2010年、
海人社
Vladimir Yakubov, Richard Worth, "The Soviet Light Cruisers of the Kirov Class", Warship 2009, Conway, 2009
外部リンク
Cruiser light 'Kirov' 26 (1935) 「キーロフ」のスペックがあるページ。