ギヨーム1世・ド・シャンリット

ギヨーム1世・ド・シャンリット：アカイア公国の創始者

ギヨーム1世・ド・シャンリット（Guillaume de Champlitte, 1160年代 - 1209年）は、第4回十字軍に参加し、その後のギリシャで初代アカイア公（在位1205年 - 1209年）となったフランス人騎士です。彼の生涯は、十字軍の時代における権力と領土の獲得、そして新たな国家の建設という壮大なドラマを体現しています。

若年期と十字軍への参加

ギヨームは、ディジョン副伯ウード1世・ド・シャンリットの次男として1160年代に生まれました。彼はアリックスという女性と結婚し、後にエリザベート・ド・モン＝サン＝ジャンとも結婚しましたが、離婚しています。1200年、兄ウード2世と共に第4回十字軍に参加。1204年4月13日には、十字軍は東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルを占領。ギヨームは、フランドル伯ボードゥアン4世を皇帝に推戴し、ボードゥアン皇帝のもとには残らず、テッサロニキ王に即位したボニファーチョと行動を共にしました。

アカイア公国の創設

コンスタンティノープル占領後、十字軍の間で東ローマ帝国領土の分割条約が取り決められました。ヴェネツィア共和国はペロポネソス半島の領有権を獲得。1205年前半、ギヨームはジョフロワ1世・ド・ヴィルアルドゥアンと共にペロポネソス半島の征服を開始しました。ボニファーチョ王はギヨームをペロポネソス半島の領主に任命し、ジョフロワはギヨームに臣従。2人は100人の騎士と自身の従者たちと共に、残された半島の諸地域の征服を開始しました。

ナフプリオを出発したギヨームとジョフロワは、コリントスを経てパトラを攻略。沿岸部をアンドラヴィダまで進み、地元領主や民衆と対峙しました。地元のギリシャ人はギヨームを新たな領主として歓迎し、敬意を表しました。ギヨームは征服の際、抵抗しなかった地域に対しては、地元ギリシャ人の土地の保有権や文化、その他の特権を認めました。

初の抵抗はアルカディア地方の征服の際に起こりました。ギヨームとジョフロワはメソニまで進軍しましたが、ニクリ、ヴェリゴスティ、スパルタ地域の現地民や、タイゲトス山脈を拠点とするスラブ系Melingoi族、マニ半島を拠点とする山岳民族の連合軍に遭遇しました。これらの軍勢はミカエルと呼ばれる人物が率いており、多くの歴史家は彼をエピルス地方を領有していたミカエル1世コムネノス・ドゥーカスと同一視しています。ギヨームはメソニを要塞化し、ミカエル率いる現地軍を迎え撃ちました。1205年夏、クンドゥラスのオリーブ畑で行われた戦いで、ギヨーム率いる十字軍は数的に不利でありながらも、大軍であった現地抵抗軍を打ち破りました。ミカエルは戦場から逃亡し、戦後短期間のうちにコロン、カラマタ、Kyparissiaを制圧しました。

アカイア公としての統治と最期

ミカエル軍の撃破後、ギヨームは「アカイア公」の称号を名乗り始めました。アカイアの名称は、十字軍が最初に征服した半島北部のアカイア地域から派生したものでしたが、公位としてのアカイアは半島全体を指していました。1205年11月19日、ローマ教皇インノケンティウス3世はギヨームを「全アカイア地域の公」と呼んでいます。

着実にペロポネソス半島の支配体制を固めつつあったアカイア公国に対して、ヴェネツィア共和国は、1204年に締結された東ローマ領分割条約で承認されていた自身の権利を認めるよう要求。1206年前半にはアミドンとコロンの両都市を征服し、フランク人守備兵を追放しました。

1208年、ギヨームは兄のルイがブルゴーニュで亡くなったとの知らせを受け、一族の領地の領有権を求めてフランスへの帰国を決意。ジョフロワを自身の代理統治者としてアカイア公国に残し、フランスへ向かいましたが、途中のプーリャで亡くなりました。彼の死後、アカイア公国はジョフロワによって統治され、その後、ギヨームの甥ユーグが公国に赴任しました。

ギヨーム1世・ド・シャンリットは、短い治世ながらもアカイア公国を確立し、ペロポネソス半島におけるフランク人支配の礎を築きました。彼の功績は、十字軍の時代における政治的、軍事的リーダーシップの好例として、歴史に刻まれています。

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