タイゲトス山脈

タイゲトス山脈：神話と歴史が息づくペロポネソスの霊峰

タイゲトス山脈は、ギリシャ南部ペロポネソス半島に位置する、雄大な山並みが連なる山脈です。その名は、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』にも登場し、狩猟の女神アルテミスが鹿狩りを楽しむ場所として歌われています。また、ギリシア神話では、巨人アトラスの娘タユゲテに由来するとも伝えられています。

地理

山脈は約115kmにわたり、ペロポネソス半島の中心部から南端のマタパン岬まで続いています。最高峰はプロフィティス・イリアス（標高2,404m）で、ペロポネソス半島最高峰です。山脈には多数の小川が流れ、エウロタス川の源流となっています。山脈はアルカディア県、ラコニア県、メッセニア県の境界に位置し、ラコニア県の県都スパルティとメッセニア県の県都カラマタを見下ろしています。

地質

タイゲトス山脈は、アフリカプレートとユーラシアプレートの衝突によって形成されました。ヘレニック沈み込み帯において、アフリカプレートの先端がエーゲ海プレートの下に沈み込むことで、ペロポネソス半島が隆起し、断層地塊の山が形成されました。タイゲトス山脈は、エウロタス地溝帯に隣接する石灰岩の地塁であり、その東面にはスパルタ断層が位置しています。この断層は、紀元前464年にスパルタを襲った大地震の原因となりました。

自然

タイゲトス山脈の気候は大陸性で、冬には大雪が降ります。標高700mから1,800mの斜面は、ギリシャモミやヨーロッパクロマツの森林に覆われています。2,000m付近までは亜高山帯が広がり、高山地帯では岩と岩の間に多年生植物が生育しています。かつてはクマやシカも多く生息していましたが、現在ではキツネやノウサギなどの哺乳類、希少な鳥類が見られます。また、1,000種以上の植物が生育し、そのうち33種はタイゲトス山脈の固有種です。

歴史

タイゲトス山脈には、ミケーネ時代から人が居住していました。スパルタ時代には、天然の要害として重要な役割を果たしました。スパルタ人は、不適格と判断された乳児をケアダスと呼ばれる深い割れ目に投げ込んだと伝えられています。中世には、山の斜面にミストラスの城塞都市が建設され、ビザンティン文化の中心地となりました。ミストラスは現在、ユネスコの世界遺産に登録されています。

宗教

今日、タイゲトス山脈は預言者エリヤと深く結びついています。毎年7月20日には、山頂にある小さな礼拝堂で大規模な祭りが開催されます。

レクリエーション

タイゲトス山脈は、人気のハイキングコースであり、ヨーロッパの長距離ウォーキングルートE4の一部となっています。山頂からは、エウロタス渓谷やパルノン山脈、カラマタの街並みなど、素晴らしい眺望が楽しめます。

タイゲトス山脈は、その豊かな自然、悠久の歴史、そして神話に彩られた、ペロポネソス半島を代表する山です。ハイキングや観光を通じて、その魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

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