ギラワリ天文台

IUCAAギラワリ天文台について

IUCAAギラワリ天文台は、インドの天文学研究機関であるIUCAA（Inter-University Centre for Astronomy and Astrophysics）が運営する天文台です。プネー市の北約80kmに位置し、現代的な口径2mの反射望遠鏡を擁しています。この天文台は、研究と教育を目的として設立され、インド国内の天文学研究において重要な役割を果たしています。

歴史

1988年に設立されたIUCAAは、当初専用の望遠鏡を持たず、国内外の施設を利用して天文観測を行っていました。しかし、研究活動の拡大に伴い、大学部門での教育・研究に利用できる中口径望遠鏡の必要性が高まりました。この提案はIUCAAの理事会やインド政府の大学助成委員会でも承認され、専用望遠鏡の建設が決定しました。

1996年には、イギリスのPPARC（素粒子物理学・天文学研究委員会）との契約により、王立グリニッジ天文台が口径2mの望遠鏡を提供することになりました。しかし、1998年に王立グリニッジ天文台が閉鎖されたため、リヴァプールのTelescope Technologies Limitedが製造を引き継ぎました。

望遠鏡の設置作業は2006年2月14日に完了し、IUCAAによる運用が開始されました。そして同年5月13日、ギラワリ天文台は正式に開所しました。

立地

ギラワリ天文台は、プネー市から北へ約80km、ゴデガオン近くの丘の上に位置しています。この場所は、観測効率を向上させ、運用負担を軽減するために、プネーから100km以内の範囲で選定されました。また、同じくIUCAAが運用する巨大メートル波電波望遠鏡からは、西へ約15kmの場所に位置しています。

天文台の標高は約1,000mで、敷地は約100m四方の広さがあります。平均シーイングは約1.5秒角と良好で、夜間の空の明るさは、ジョンソン-カズンズの標準測光システムで、Bバンドが1平方秒あたり22等級、Vバンドが21等級、Rバンドが19.4等級と、プネーやムンバイに近いにも関わらず、光害の影響が比較的少ないです。

1996年から1997年にかけての現地調査では、冬季の半年間で、一晩のうち雲量が0の時間が4時間以上ある測光夜が約5割、雲量が3オクタ以下の時間が4時間以上ある分光夜が約8割に達することが確認されています。

施設

天文台の主な建物は、2m望遠鏡を収める望遠鏡棟と、観測者向けの宿泊設備や食堂、図書室などを備えた業務棟に分かれています。望遠鏡棟は敷地の北端、業務棟は南端に配置されています。

望遠鏡を囲むドームは、直径約11mの円筒形で、日中の温度上昇と夜間の赤外線放射を抑制するために、アルミニウム塗料で塗装されています。望遠鏡棟の機械類からの排熱は、業務棟近くの換気扇を通じて排出され、熱によるシーイングの悪化を防ぐ工夫がされています。

望遠鏡

ギラワリ天文台の主力である2m望遠鏡は、リッチー・クレチアン式の光学系と、経緯台式の架台を備えています。主鏡のF値はF3、観測に使用するカセグレン焦点ではF10です。カセグレン焦点は、直射の他に、側面の4箇所で焦点を結ぶことができます。

観測装置

IFOSC (IUCAA Faint Object Spectrograph and Camera)

IFOSCは、2m望遠鏡の直射カセグレン焦点に取り付けられた主力観測装置で、ヨーロッパ南天天文台のEFOSCを元に設計されています。撮像観測と分光観測の両立、広い視野と同時取得波長域、迷光の最小化、透過効率の最大化、幅広い波長分解能の選択可能性が重視されています。

検出器には2K×2KのEEV裏面照射型CCDを採用し、ピクセルサイズは13.5μmです。撮像観測時の空間抽出スケールは44μm/秒角で、視野は10.5分四方、フィルターはU、B、V、R、Iバンドを備えています。分光観測の波長域は350nmから850nmで、グリズムを使い分けることで、波長分解能は190から3700までを実現します。

望遠鏡のカセグレンポートとIFOSCの間には、フラットフィールド補正や分光観測の波長較正用の光源、狭帯域フィルターが設置されています。狭帯域フィルターは、水素のHαの静止波長とドップラー偏移波長に対応しています。

PI-CCD (Princeton Instruments CCD Camera)

2m望遠鏡のカセグレン焦点側面ポートには、プリンストン・インスツルメンツCCDカメラが搭載されています。検出器は1340×1300ピクセルの裏面照射型EEV CCDで、ピクセルサイズは20μmです。IFOSCよりも優れた空間抽出スケールを実現しており、波長帯はU、B、V、R、Iバンドで、IFOSCと同じフィルターを使用しています。

利用

ギラワリ天文台での観測期間は、10月から5月までの8ヶ月間で、4ヶ月ごとに2期に分けて観測提案が募集されます。望遠鏡時間の約6割は、ギラワリ天文台プログラム小委員会(IGO-TAC)が割り当て、残りの約4割は、台長裁量時間、突発現象の緊急観測(ToO観測)、教育用観測計画、天文台プロジェクト、保守・補修などに使用されます。

まとめ

IUCAAギラワリ天文台は、研究と教育の両面において、インド天文学に貢献する重要な施設です。光害の少ない環境と充実した観測装置により、高品質な観測データを提供し、天文学の発展に寄与しています。

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