クライスト・イリュージョン

『クライスト・イリュージョン』（Christ Illusion）は、スラッシュメタルバンド、スレイヤーが2006年に発表したアルバムです。1991年のライヴ・アルバム『ディケイド・オブ・アグレッション』以来、15年ぶりにオリジナル・ラインナップ（トム・アラヤ、ジェフ・ハンネマン、ケリー・キング、デイヴ・ロンバード）で録音された作品として、リリース前から大きな注目を集めました。

制作の背景

2002年にオリジナル・ドラマーのデイヴ・ロンバードが復帰し、2004年から収録曲のデモ・レコーディングが開始されました。当初、バンドは長年の盟友であるリック・ルービンにプロデュースを依頼しましたが、ルービンの多忙により、ジョシュ・エイブラハムがプロデュースを担当し、ルービンはエグゼティヴ・プロデューサーとしてクレジットされました。

物議を醸したジャケット

アルバム・ジャケットは、過去に『レイン・イン・ブラッド』、『サウス・オブ・ヘヴン』、『シーズンズ・イン・ジ・アビス』のジャケットも担当したラリー・キャロルによって描かれました。しかし、その内容がキリストを冒涜しているという批判が起こり、一部では検閲ヴァージョンのジャケットで発売される事態となりました。オリジナル・デザインの一部のみを表示する仕様となっています。

リリースと収録内容

当初は「666」を想起させる2006年6月6日に発売される予定でしたが、最終的には2006年8月にリリースされました。また、当初は11曲入りのアルバムとして企画されていましたが、トム・アラヤの胆嚢の問題により、「ファイナル・シックス」のボーカル録音が間に合わず、10曲入りのアルバムとしてリリースされました。この「ファイナル・シックス」は、2007年7月にアメリカで発売されたDVD付きのエディションで追加収録され、後にグラミー賞の最優秀メタル・パフォーマンス部門を受賞しています。

各国での反応

本作は、バンドの母国であるアメリカのBillboard 200で最高5位を記録し、スレイヤーにとって初の全米トップ5入りを果たしました。収録曲「アイズ・オブ・ジ・インセイン」もグラミー賞の最優秀メタル・パフォーマンス部門を受賞し、バンドにとって初のグラミー受賞となりました。

しかし、インドでは「スケルトン・クライスト」や「ジハード」などの歌詞がイスラム教徒とキリスト教徒の両方を侮辱しているという抗議が起こり、発売元であったEMIインディアは、2006年の時点で本作を回収・破棄し、再発の予定はないと発表しました。

収録曲

1. フレッシュ・ストーム - "Flesh Storm"
2. キャタリスト - "Catalyst"
3. スケルトン・クライスト - "Skeleton Christ"
4. アイズ・オブ・ジ・インセイン - "Eyes of the Insane"
5. ジハード - "Jihad"
6. コンスフィラシー - "Consfearacy"
7. キャタトニック - "Catatonic"
8. ブラック・セレナーデ - "Black Serenade"
9. カルト - "Cult"
10. スプリーミスト - "Supremist"

2007年スペシャル・エディション盤ボーナス・トラック

11. Final Six

参加ミュージシャン

トム・アラヤ - ボーカル、ベース
ジェフ・ハンネマン - ギター
ケリー・キング - ギター
デイヴ・ロンバード - ドラムス

『クライスト・イリュージョン』は、スレイヤーの音楽性、メッセージ性、そして彼らが常に社会に対して挑発的な姿勢を貫いていることを改めて示した作品と言えるでしょう。

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