クリチバ:ブラジル南部の緑豊かな都市
ブラジル南部
パラナ州の州都、クリチバは、
人口約200万人を擁する同国第8位の大都市です。
17世紀、パラナ地方に植民都市として建設されたクリチバは、
標高約940mの
高地に位置し、独特の気候と豊かな自然に恵まれています。年間平均気温は摂氏約17度で、温暖な気候が特徴です。
歴史:先住民から現代都市へ
クリチバの歴史は、
1630年頃、
金鉱を求めて入植が始まったことに遡ります。当初は小さな村落でしたが、
1693年に「ノッサ・セニョーラ・ダ・ルース・ドス・ピニャイス」として正式に村として認められました。パラナマツの広大な森に囲まれたこの地は、次第に「クリチバ」と呼ばれるようになり、
1721年には正式な都市名となりました。「クリチバ」という名は、トゥピ語で「松が多い場所」を意味すると考えられています。
1842年には町に格上げされ、
1853年にはパラナ地方の首府となりました。
金鉱ブームが去った後も、クリチバはリオ・グランデ・ド・スル州との家畜取引の中継地として発展を続けました。
1867年以降は、
イタリア人、
ポーランド人、
ドイツ人など多くの
ヨーロッパからの移民を受け入れ、多様な文化が融合する都市となりました。
1913年には
ブラジル初の
大学であるパラナ
大学が設立され、
路面電車が開通するなど、近代化が進みました。
都市計画:世界に誇る成功例
クリチバは、20世紀後半からの画期的な
都市計画で知られています。1970年代以降、ジャイメ・レルネル市長を中心とした革新的な
都市計画が実行され、その成功は世界的に高く評価されています。その中心は、
自動車中心の都市政策ではなく、市民を優先したヒューマンスケールの都市づくりです。
主要な政策として、以下の点が挙げられます。
公共交通システムの整備: 専用レーンを持つ高効率なバスシステム「トリニティ・ロード・システム」の導入により、市民の85%が公共交通機関を利用するようになりました。特徴的なチューブ型のバス停は、バリアフリー設計にも配慮されています。
緑地政策: 市民1人当たりの緑地
面積は51.5平方
メートルと、ユネスコの基準値の約3倍にも及びます。これは
オスロに次ぐ世界第2位の広さです。工業施設の建設区域は制限されており、自然環境の保全に力を入れています。
都市中心部の歩行者化: 市中心部のメインストリートである11月15日通りを歩行者専用道路とすることで、大気汚染の軽減と街の活性化に成功しました。
統合輸送ネットワーク(RIT):均一料
金で市内全域をカバーするバス網を構築し、郊外住民の利便性向上に貢献しました。
「知識の灯台」プロジェクト: 図書館やインターネット設備などを備えた教育施設を小学校の隣に設置し、子どもの学習環境の整備と治安向上に役立てています。
これらの取り組みが評価され、1996年には国連人間居住会議(ハビタットII)において「世界一革新的な都市」として表彰されました。
交通システム:バスが主役
クリチバの交通システムは、公共交通機関を優先した設計になっています。バスが主要な交通手段であり、用途に応じて色分けされた10種類以上のバスが運行されています。中でも3両連結の幹線バス「ビ・アルチクラード」は、クリチバのシンボルとなっています。
チューブ型のバス停は、効率的な乗降とバリアフリー設計が特徴です。均一運賃制を採用しており、同一ターミナル内やチューブ型バス停内での乗り換えは無料です。
人口動態と日本との関わり
クリチバの人口は、白人が大多数を占め、東欧系移民も多いことから、ブラジルの中でもヨーロッパ的な都市風土が色濃く残っています。ブラジルではサンパウロに次いで多くの日本人が居住しており、その数は約3万人と推定されます。クリチバの都市計画にも多くの日系人が関わっており、カシオ・タニグチ氏(日系2世)は、ブラジル州都初の市長となりました。
クリチバには、三浦知良選手が所属したコリチーバFCなどのサッカークラブもあり、京セラによるスタジアム命名権取得など、日本企業との繋がりも深い都市です。1984年には姫路市と友好都市関係を締結しています。
今後の課題
クリチバの都市計画は、多くの成功を収めていますが、スラムやホームレス問題、都市の郊外化といった課題も抱えています。今後の発展に向けて、これらの問題への対応が重要となるでしょう。
主要施設
ノッサ・セニョーラ・ダ・ルース聖堂: クリチバのランドマークである
ゴシック様式のカテドラル。
パラナ連邦大学: ブラジル初の大学。
11月15日通り: 市中心部の歩行者専用道路。
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24時間通り: 24時間営業を目指した
商店街(現在は閉鎖)。
クリチバは、革新的な
都市計画と豊かな自然、そして多様な文化が調和した魅力的な都市です。今後もその発展が期待されます。