クルフィ

クルフィ（Kulfi）

クルフィは、インド亜大陸の広い地域で親しまれている伝統的な氷菓です。牛乳に様々な風味を加え、じっくりと時間をかけて煮詰めてから冷やし固めて作られます。しばしば「インドの伝統的なアイスクリーム」と称されますが、その製法や特徴は一般的なアイスクリームとは異なります。

概要

見た目や風味はアイスクリームに似ていますが、クルフィはより濃厚でクリーミーな食感が特徴です。一般的なアイスクリームのように空気を含ませて泡立てる工程がないため、固く、ずっしりとした密度があります。この濃厚さゆえに、西洋式のアイスクリームに比べて溶けにくいという性質も持ち合わせています。

クルフィの魅力の一つは、その豊富なフレーバーのバリエーションです。ピスタチオやアーモンド、カシューナッツといったナッツ類をはじめ、ローズウォーター、サフラン、カルダモンなどのスパイスや香料、あるいはフルーツなどが用いられ、多彩な味わいが楽しめます。

インドはもちろん、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、ミャンマー、そして中東といった地域で広く食されており、現在では世界各地で提供されるようになっています。提供形態も様々で、レストランのデザートとして提供されることもあれば、路上で「クルフィワラ」と呼ばれる露天商が販売している姿もよく見られます。彼らは「マッカ」と呼ばれる陶器の器の中でクルフィを冷やしながら販売することがあります。

歴史

「クルフィ」という言葉は、ヒンディー語やウルドゥー語に由来するとされますが、さらに遡るとペルシア語で「覆われた器」を意味する「クフリ」（Qufli）から来ていると考えられています。この言葉の起源はさらにアラビア語にあるとも言われます。

クルフィは、16世紀のムガル帝国時代に誕生したと考えられています。当時のインド亜大陸では、すでに濃厚な練乳を使ったデザートが広く作られていました。ムガル帝国期に、この練乳にピスタチオやサフランなどで風味を加え、金属製の型に流し込み、さらに溶けにくいように塩などを混ぜた氷の中にその型を入れて冷やし固める方法が考案されました。これがクルフィの原型となったのです。実際に、ムガル帝国第3代皇帝アクバルの治世に関する詳細な記録書『アクバル会典』には、遠くヒマラヤから運ばれた氷を保存したり、物を凍らせたりするために、硝石が利用されていたことが記されています。

長い歴史を持つクルフィですが、2000年代に入り、インド国内で西洋式のアイスクリームショップが勢力を拡大するにつれて、これらのモダンなアイスクリームとの競合に直面しています。

製法

伝統的な製法

伝統的なクルフィの製法では、砂糖などで風味をつけた牛乳を、鍋の底に焦げ付かないよう絶えずかき混ぜながら、元の量の3分の2程度になるまで、じっくりと時間をかけて煮詰めます。これにより、牛乳の脂肪分、タンパク質、乳糖といった成分が凝縮されます。この時間をかけた加熱によって、牛乳に含まれる乳糖の一部がキャラメル化し、クルフィ独特の香ばしく、深みのある風味が生み出されます。

煮詰めた濃厚な液体を密閉できる型や容器に注ぎ入れ、急速に冷やし固めるために、塩を混ぜた氷の中に埋め込みます。塩を混ぜた氷は、水の凝固点を下げる効果があり、より低温で素早く凍らせることができます。また、この塩氷とクルフィの容器全体を、「マッカ」と呼ばれることもある陶器の器の中に入れておくことで、外部からの熱を遮断し、氷が溶けにくくする工夫もなされていました。特に、この伝統的な製法でマッカを用いて作られたものは、「マッカ・クルフィ」と呼ばれます。ゆっくりと時間をかけて凍らせるこの製法は、大きな氷の結晶ができるのを防ぎ、クルフィならではの、ざらつきの少ない、非常になめらかな舌触りを実現します。

現代的な製法

家庭や小規模な場所で手軽に作る方法としては、牛乳を沸騰させながらパンくずやコヤ（खोआ、牛乳を煮詰めた固形物）、砂糖などを加えて混ぜ合わせる方法もあります。この際、表面にできるクリームの層を取り分けておき、最後に混ぜて濃度を高めることも行われます。

さらに近年では、市販の濃縮乳や加糖練乳、ダブルクリームなどを組み合わせて使用する方法も一般的です。これらを加熱し、砂糖を加えて煮詰め、とろみをつけるためにコーンスターチで作ったペーストを加えます。ペーストを加えた後、短時間煮詰めることで、より簡単に濃厚なベースを作ることができます。その後、好みに応じて香料、ドライフルーツ、カルダモンなどのスパイスを加え、粗熱を取ってから型や容器に移し、冷凍庫でしっかりと凍らせます。

小さな容器で一人分ずつ凍らせたものをそのまま提供する際は、食べる前に冷凍庫から10分から15分ほど出しておくと、表面がわずかに柔らかくなり、より食べやすい状態になります。

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