クレイジーズ

2010年に制作されたアメリカ合衆国のホラー映画で、1973年のジョージ・A・ロメロ監督作品『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』のリメイク版にあたります。第23回東京国際映画祭においては特別招待作品として上映されました。

ストーリー

物語は、アイオワ州に位置する穏やかな農村、オグデンマーシュを舞台に展開します。ある日、地域の保安官を務めるデヴィッド・ダットンが野球観戦を楽しんでいた最中、突如として住民のロリー・ハミルが猟銃を持ってグラウンドに侵入します。デヴィッドは彼を落ち着かせようと説得を試みますが、銃口を向けられたため、やむを得ずハミルを射殺せざるを得なくなります。時を同じくして、デヴィッドの妻で医師のジュディは、依頼を受けて農夫のビルを診察します。ビルは焦点の定まらない目で「大丈夫だ」と繰り返すばかりで、身体的な異常は見当たりませんでしたが、その夜、ビルは自身の妻と子供たちをクローゼットに閉じ込めた後、家に火を放ち、一家心中を図ります。

これらの不可解な出来事が相次ぐ中、デヴィッドは郊外の沼地からパイロットの遺体が発見されたとの報告を受け、現場に向かいます。沼の底には軍の輸送機が沈んでいたのです。ハミルやビルが沼に近い水源を利用していたことを知っていたデヴィッドは、彼らの異常行動の原因が水にあるのではないかと推測します。墜落した輸送機に積まれていたのは、軍が開発したラブドウイルス科に属するウイルス「トリクシー」でした。このウイルスは水源を通じて町に拡散し、住民を狂気に駆り立てていたのです。町は外部から隔離され、ウイルスに感染した者たちは理性を失い、狂暴化していきます。デヴィッドとジュディは、生存者と共にこの閉鎖された町から脱出するため、絶望的な状況の中を戦い抜くことになります。

制作背景

本作の撮影は、主にジョージア州の中心部やアイオワ州のレノックで行われました。ジョージア州内では、ペリーにあるジョージアナショナルフェアグラウンズやPriester's Pecans、モンテズマ地区のメイコンにあるFountain Car Wash、そしてフォートバレーのピーチ郡高等学校などがロケ地として使用されました。

特殊効果はロバート・グリーン・ホールが手掛け、ウイルスの感染症状を表現するメイクアップは、過去に『REC:レック/ザ・クアランティン』や『フランケンフィッシュ』でメイクを担当したオルモスト・ヒューマンスタジオが担当しました。監督のブレック・アイズナーは当初、感染者のイメージをゾンビに近いものとして構想していましたが、試作品を制作する過程で、より視覚的に興味深いデザインを追求しました。その結果、皮膚の下に血管が浮き上がって見えるようなデザインが採用され、感染者の動きも俊敏で予測不能なものに変更されました。メイクアップチームは、スティーブンス・ジョンソン症候群、狂犬病、破傷風といった実際の病気の症状を参考にしながら、感染者のメイクの基礎を築き上げました。

評価

批評家からの評価は概ね好意的でした。映画批評集積サイトであるRotten Tomatoesでは、148件のレビューに基づき、批評家支持率が71％に達し、平均評価は10点満点中6.4点となっています。同サイトの総評では、「『クレイジーズ』は終始緊張感を保っており、近年作られたホラー映画のリメイク作品の中でも特に優れている」と評されています。また、Metacriticでは、30件のレビューに基づく加重平均値が55/100を記録しています。

シカゴ・トリビューン紙の映画評論家マイケル・フィリップスは、本作に4つ星中3つ星を与え、「無駄のない簡潔な作りで、巧妙に持続する緊張感と効率的な描写によって、原典のリメイクとして優れた出来栄え」と述べ、その完成度を高く評価しました。

その他

サウンドトラックアルバムは、2010年10月27日にジェネオン・ユニバーサルより発売されました。
また、1973年版『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』でキャシー・ボルマン役を演じたリン・ローリーが、本作では「自転車に乗る女性」役としてカメオ出演を果たしています。

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