グナエウス・コルネリウス・レントゥルス・クロディアヌス

グナエウス・コルネリウス・レントゥルス・クロディアヌス（紀元前115年頃 - 没年不明）は、共和政ローマの政治家・軍人として活躍しました。彼は、紀元前72年に執政官（コンスル）、紀元前70年には監察官（ケンソル）という要職を歴任し、当時のローマ社会に大きな影響を与えました。

出自と初期の経歴

クロディアヌスは、平民であるクロディウス氏族の出身でしたが、名門貴族であるコルネリウス氏族レントゥルス家に養子として迎えられました。養父については詳しい記録が残っていませんが、一部の歴史家は、ギリシア語の碑文から、彼の父の名前もグナエウスであったと推測しています。

彼は紀元前115年頃に生まれたとされ、マリウス派が政権を握っていた時代にはローマを離れていました。紀元前82年、スッラと共にローマへ帰還し、政界での活動を開始しました。養子に入る以前には護民官を務めていた可能性があり、キケロの演説にもそのことが触れられています。執政官就任の条件から逆算すると、彼は遅くとも紀元前75年までには法務官（プラエトル）を務めていたと考えられます。

執政官時代とスパルタクスの反乱

紀元前72年、クロディアヌスは執政官に就任し、ルキウス・ゲッリウス・プブリコラを同僚としました。彼らは、ポンペイウスが属州民に与えたローマ市民権を正式に認め、属州民が不在時に有罪判決を受けることを禁止する法令を元老院に提案しました。また、シキリア属州でのウェッレスによる住民虐待に関する報告も議題となりました。

執政官在任中、イタリアではスパルタクス率いる奴隷と剣闘士の大規模な反乱、いわゆる第三次奴隷戦争が勃発しました。元老院は、この反乱を深刻な脅威とみなし、クロディアヌスとプブリコラにそれぞれ2個軍団を与え、鎮圧に向かわせました。総勢3万人以上の兵士で構成されたローマ軍は、ガルガン半島にいた反乱軍を挟撃する作戦を計画しました。

プブリコラはカンパニアとアプリアを経由して進軍し、クロディアヌスはティブルティーナ街道を通り、アペニン山脈を越えて進みました。しかし、スパルタクスはローマ軍の分断を狙い、まずクロディアヌスの軍を攻撃しました。アペニン山脈通過中のローマ軍は、予期せぬ攻撃を受け大きな損害を出し、丘に防御陣を敷かざるを得なくなりました。その後、スパルタクスはプブリコラの軍をも破り、ガリア・キサルピナへと兵を進めました。秋になってイタリアに戻ったスパルタクスに対し、両執政官はピケヌムで防衛戦を敷きましたが、再び敗北を喫しました。

ローマはパニックに陥り、元老院はクロディアヌスとプブリコラに反乱鎮圧は不可能と判断し、執政官任期が切れる前にマルクス・リキニウス・クラッススに指揮権を委譲しました。

監察官時代とその後

軍事的な失敗にもかかわらず、クロディアヌスとプブリコラは紀元前70年に監察官に就任しました。歴史家のテオドール・モムゼンは、この選出は元老院への対抗であり、両者がスッラ体制の解体を試みるポンペイウスとクラッススのために行動したと指摘しています。監察の結果、元老院議員の1/8にあたる64人が除名されるという前例のない事態となりました。また、国勢調査では、同盟市戦争後にローマ市民権を得たイタリア人が含まれたため、ローマの人口は記録的な91万人となりました。

紀元前67年、クロディアヌスとプブリコラは再び協力し、ポンペイウスの副司令官として海賊討伐に従事しました。紀元前66年には、ポンペイウスにミトリダテス戦争の指揮権を与える法案を支持しました。その後、クロディアヌスに関する記録は途絶え、間もなく死去したと考えられています。

人物評

キケロは『ブルトゥス』の中で、クロディアヌスの弁論術について触れており、外見や声の良さによって実際の能力以上に評価されていたと評しています。

クロディアヌスには同名の息子がおり、紀元前59年に法務官を務めています。

クロディアヌスの生涯は、共和政ローマ末期の激動の時代を反映しており、彼の軍事的、政治的な活動は、当時のローマ社会を理解する上で重要な手がかりとなります。

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