グラーキ

グラーキ：クトゥルフ神話の粘滑なる旧支配者

ラムジー・キャンベルによって創造されたクトゥルフ神話の旧支配者グラーキ（Glaaki、Gla'aki）は、イギリス・ブリチェスター近郊の湖に潜む、異形の存在です。その姿は、巨大なナメクジを思わせ、顔からは3本の茎状の組織が伸び、それぞれの先に目が付いているという、見る者をゾッとさせるものです。体表はピラミッド状の突起で覆われ、背中には金属製の棘が無数に生えています。

グラーキの地球への到来については諸説あります。隕石（あるいは宇宙船）に乗って飛来し、その墜落クレーターから生まれた湖の底に棲み着いたという説が一般的です。その故郷は、酸性の湖と汚染された蒸気に満ちた不毛の大地であったと伝えられています。ユゴス・シャッガイ・トンドといった惑星間航路を経由して地球に到達したという説も存在します。一方で、「タグ＝クラターの逆角度」を通じて、隕石よりも早く地球に到達していたとする説や、古代エジプトのミイラやハイチのゾンビ伝説がグラーキに由来するという説も、一部で唱えられています。

グラーキは、触手の先端で人間を刺し、血液中に何らかの化学物質を注入することで奴隷化します。触手が切断された者は死亡しますが、その死体はゾンビとして蘇り、グラーキに服従する存在となります。これらのゾンビは約70年後に強い光を浴びると急速に腐敗し始め、「緑の崩壊」と呼ばれる現象を起こします。しかし、比較的新しいゾンビは日光に対する耐性を持ちます。

かつてグラーキを崇拝する教団が湖周辺に存在し、その教団によって編纂された『グラーキの黙示録』という文献が残されています。この書物はキャンベルの作品において高い頻度で言及され、グラーキに関する重要な情報源となっています。現存する『グラーキの黙示録』は、教団の活動停止時点で11巻まで書かれていたとされますが、その後、内容が欠けた海賊版9巻本が出回り、現在では巻数が増加しているという情報もあります。

『グラーキの黙示録』には、グラーキ以外にも多くの旧支配者や異形の存在が記されているとされます。その中には、以下のような存在の名前が確認されています。

アイホート (Ai'hort): 『嵐の前に』に登場。黙示録第12巻に記述があるとされます。
ダオロス (Da'Olos): 『ヴェールを剥ぎ取るもの』に登場。黙示録に記載があり、TRPGでは外なる神に分類される場合があります。
イゴーロナク (Igo'ronak): 『コールド・プリント』に登場。黙示録第12巻に関連し、ネクロノミコンにも記載があるとされています。
バイアティス (Ba'Yatis): 『城の部屋』に登場。「妖蛆の秘密」やバークリイの郷土資料にも言及があるとされます。名前はロバート・ブロックが考案し、キャンベルがその姿を創作しました。
グロース (Gro'os): 『誘引』に登場。黙示録に記載があるとされます。
ムナガラー (Mu'nagala): 『誘引』で言及されている存在。元々はアメコミに登場する邪神であり、キャンベルの言及によって小説ジャンルにも導入されました。

グラーキとその関連する存在、そして『グラーキの黙示録』は、クトゥルフ神話の奥深い謎と、想像を絶する恐怖を私たちに提示しています。これらの存在の詳細を探求することは、クトゥルフ神話の世界をより深く理解することに繋がります。今後の研究が、グラーキの謎を解き明かすことを期待しましょう。

参考文献

サウザンブックス『グラーキの黙示録』（2022年、単行本『Cold Print』の分冊邦訳）
扶桑社ミステリー『クトゥルフ神話への招待』（全2巻）
青心社文庫『暗黒神話大系クトゥルー』（全13巻）
東雅夫『クトゥルー神話事典』（第四版、2013年、学研）

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