グリーゼ367

グリーゼ367星系

グリーゼ367（GJ 367）は、太陽からおよそ31光年（約9.5パーセク）離れた、ほ座の方角に位置する小さな赤色矮星です。この恒星は、振幅0.012等級、周期5.16年で明るさが変化する変光星である可能性が示されています。2015年の観測では、この恒星の周囲に別の恒星が存在する兆候は見つかっていません。2022年には国際天文学連合（IAU）の系外惑星命名キャンペーン「NameExoWorlds 2022」の対象となり、チリの赤い花にちなんで「Añañuca」と命名されました。

惑星系の発見

グリーゼ367星系に惑星が存在する可能性が最初に浮上したのは、2019年2月から3月にかけてNASAのトランジット系外惑星探索衛星（TESS）による観測が実施された際です。TESSは、惑星が恒星の手前を通過する際に起こる恒星の明るさのわずかな低下（トランジット）を検出することで惑星候補を発見します。グリーゼ367もTESSの観測対象天体（TOI; TESS object of interest）としてリストアップされました。

その後、2021年1月にかけて行われた地上からのフォローアップ観測による視線速度データから、確実性は低いものの、短い周期で主星の周りを公転する惑星が存在する可能性が示唆されました。この惑星の存在は、2021年12月までに、地上と宇宙の両方からのトランジット観測によって確認されました。これが惑星グリーゼ367bです。

さらに2023年7月には、ヨーロッパ南天天文台（ESO）の高精度視線速度系外惑星探査装置（HARPS）を用いたドップラー分光法による観測結果が発表され、グリーゼ367bよりも外側の軌道を回る二つの惑星、グリーゼ367cとグリーゼ367dが発見されたことが明らかになりました。

惑星グリーゼ367b

グリーゼ367bは、発見された惑星の中でも特に短い公転周期を持つ天体の一つとして知られています。主星グリーゼ367の周りをわずか約7.7時間という驚異的な速さで一周します。主星から極めて近い軌道を回っているため、グリーゼ367bは地球が太陽から受け取る放射エネルギーの約500倍という非常に強い放射線にさらされています。これにより、この惑星の昼間の表面温度は摂氏約1,500度（絶対温度約1,770K、華氏約2,730度）という極端な高温になります。

主星との距離が近すぎるため、グリーゼ367bは潮汐力によって自転と公転が同期している可能性が高いと考えられています。つまり、常に同じ面を主星に向けている状態である可能性が高いのです。このような極限的な環境下では、生命が存在するための条件は満たされていません。惑星の大気は、この超高温により維持されるのが困難です。

グリーゼ367bの内部構造については、その高い密度から、中心核は水星の中心核と同様に鉄とニッケルを主成分としていると推測されています。この高密度の核が惑星の質量の大部分を占めていると考えられています。

惑星グリーゼ367bも、恒星Añañucaと共にIAUの命名キャンペーンの対象となり、チリの短時間しか咲かない小さな花にちなんで「Tahay」と命名されました。その短い開花時間が、惑星の非常に短い公転周期を象徴しています。この惑星は、その極端な性質から、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の優先観測目標の一つにも指定されています。

惑星グリーゼ367cとグリーゼ367d

2023年に発見が公表された二つの惑星、グリーゼ367cとグリーゼ367dは、グリーゼ367bよりもさらに外側の軌道を公転しています。

グリーゼ367cの公転周期は約11.5日です。
グリーゼ367dの公転周期は約34.4日です。

これらの惑星は、ドップラー分光法による観測からその存在が確認されており、それぞれ地球の約4倍、約6倍の最小質量を持つと見積もられています。この質量から、これら二つの惑星は地球より大きく海王星より小さい、「スーパーアース」に分類されると考えられています。現時点では、これらの惑星が主星の手前を通過するトランジット現象は観測されていません。

まとめ

グリーゼ367星系は、比較的近距離にある赤色矮星とその周囲を回る複数の惑星から成り立っています。特に内側の惑星グリーゼ367bは、非常に短い公転周期とそれに伴う極端な温度や放射線、そして特異な内部構造を持つことが特徴です。その後発見されたグリーゼ367cとdは、より外側を回るスーパーアースであり、この星系の多様性を示しています。これらの天体は、系外惑星の研究、特に赤色矮星系の形成や進化、さらには極端な環境下の惑星の性質を理解する上で重要な観測対象となっています。IAUによってそれぞれ「Añañuca」と「Tahay」という愛称が与えられたことで、より親しみやすい存在として研究が進められています。

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