グリーゼ876b

グリーゼ876b：赤色矮星を公転する太陽系外惑星

グリーゼ876bは、地球から約15光年離れたみずがめ座の方向に位置する赤色矮星グリーゼ876を公転する太陽系外惑星です。1998年6月に発見され、赤色矮星を公転する太陽系外惑星としては初めて確認されました。この発見は、太陽系外惑星の研究において重要な一歩となりました。

発見の経緯

グリーゼ876bの発見は、1998年6月22日に国際天文学連合会議でジェフリー・マーシー氏らによって発表されました。彼らは、ケック天文台とリック天文台の観測データを用い、ドップラー分光法によって惑星の存在を間接的に証明しました。この方法は、恒星のスペクトルのわずかな変化から惑星の重力の影響を捉えるもので、当時の惑星探査技術における革新的な手法でした。また、マーシー氏の発表から2時間後には、ジュネーブの太陽系外惑星探査チームもオート＝プロヴァンス天文台とヨーロッパ南天天文台の望遠鏡を用いて、この惑星の存在を独立して確認しました。

グリーゼ876惑星系には、この惑星を含め4つの惑星が存在することが確認されていますが、グリーゼ876bはその中で最初に発見された惑星です。

特徴

物理的特徴

グリーゼ876bは、質量が大きいため、表面が固体ではなくガスで構成されていると考えられています。この惑星はドップラー分光法によって検出されており、主星に及ぼす重力の影響から質量を推測することができますが、半径、組成、表面温度などの詳しい情報はまだ分かっていません。

組成が木星に似ており化学平衡の状態にあると仮定した場合、温度の低い地域では水の雲が形成される可能性が指摘されています。ただし、大気中に水の雲が存在していても、その量はごくわずかであると予測されています。

ドップラー分光法によって測定されたグリーゼ876bの質量の下限値は木星の1.93倍です。しかし、実際の質量は軌道傾斜角に依存するため、ドップラー分光法だけでは正確な質量を求めることは難しいです。幸い、グリーゼ876惑星系は地球から比較的近い位置にあるため、ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって惑星の軌道傾斜角が84 ± 6°であることが分かりました。さらに、惑星系内の惑星同士がラプラス共鳴を起こしていることから、実際の軌道傾斜角は59°、質量は2.2756 MJであると判明しました。平衡温度は194 Kと推定されています。

また、グリーゼ876bは、他の惑星と同様に、かつて惑星移動を行っていた可能性も指摘されています。

主星グリーゼ876

グリーゼ876bの主星であるグリーゼ876は、質量が太陽の約0.32倍、半径が太陽の約0.3倍の赤色矮星です。有効温度は3129 K、年齢は約25.5億年です。

軌道

グリーゼ876bは、内惑星であるグリーゼ876cとグリーゼ876eと1:2:4のラプラス共鳴をしています。これは、木星の衛星であるイオ、エウロパ、ガニメデ間の共鳴に次いで2番目に発見されたラプラス共鳴です。この共鳴により、惑星の軌道要素は時間とともに変化します。グリーゼ876bの軌道離心率は小さく、太陽系の惑星の軌道に近い楕円軌道を描いています。軌道長半径は0.208 auであり、これは太陽と水星の間の距離よりも短いですが、グリーゼ876が小さいため、ハビタブルゾーン内に位置していると考えられています。

将来の居住可能性

グリーゼ876bは、現在ハビタブルゾーンの外側境界付近に位置していますが、主星の赤色矮星がゆっくりと進化するため、ハビタブルゾーンは何兆年もの時間をかけて外側へ移動すると考えられています。つまり、数兆年後にはグリーゼ876bがハビタブルゾーンの内側に位置する可能性が出てきます。ガス惑星における生命の存在可能性は不明ですが、もしグリーゼ876bに大きな衛星が存在すれば、その衛星には生命が存在できる環境が整う可能性があります。潮汐力の影響があっても、大きな衛星であれば生命の存在は十分に可能でしょう。

衛星の安定した軌道には、惑星周囲の公転周期と恒星周囲の公転周期の比率が1/9になる必要があります。シミュレーションによれば、巨大ガス惑星や褐色矮星の衛星で、太陽のような恒星から1auほどの位置にある場合、公転周期は45日から60日以内が最適とされています。グリーゼ876bの場合、衛星の公転周期が7日より短くないと安定した軌道を維持できません。

潮汐力は、衛星でプレートテクトニクスを引き起こす要因となり、火山活動による衛星の温度上昇や磁場の生成にも関与していると考えられています。46億年もの間、地球のような大気を維持するためには、衛星の密度が火星に似ていて、質量が0.07 M⊕以上である必要があるでしょう。大気の非熱的散逸を防ぐためには、衛星が強い磁場を持っている必要があり、これは恒星風をそらす役割を果たします。NASAの探査機ガリレオの観測によれば、衛星であるガニメデも磁場を持っていることが分かっており、大きな衛星であれば磁場を持つ可能性が高いと言えるでしょう。

まとめ

グリーゼ876bは、赤色矮星を公転する太陽系外惑星の中でも特筆すべき存在であり、その発見は太陽系外惑星の研究における重要なマイルストーンとなりました。質量は木星の2倍以上と大きく、ガス惑星であると考えられています。ハビタブルゾーンに位置する可能性も指摘されており、今後の観測によって、より詳しい情報が明らかになることが期待されます。

脚注

関連項目
グリーゼ876 - b - c - d - e
外部リンク
The Extrasolar Planets Encyclopaedia
SIMBAD
Open Exoplanet Catalogue

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