グロウラー (潜水艦)

グロウラー(SS-215): ガトー級潜水艦の激動の艦歴

第二次世界大戦においてアメリカ海軍太平洋艦隊で活躍した潜水艦「グロウラー(USS Growler, SS-215)」は、ガトー級潜水艦の1隻としてその名を歴史に刻みました。艦名はオオクチバスの通称に由来し、米英戦争で鹵獲したイギリス艦を改名した艦を含めると、4代目にあたります。本稿では、その波乱に満ちた艦歴を詳細に解説します。

艦の建造と初期の哨戒

グロウラーは1941年2月、コネチカット州グロトンで起工され、同年11月2日に進水。1942年3月20日、ハワード・W・ギルモア少佐の指揮下で就役しました。就役直後にはミッドウェー海戦に参加し、オアフ島近海で哨戒に当たっています。

最初の哨戒は1942年6月から7月にかけてアリューシャン列島方面で行われました。ミッドウェー島で給油後、キスカ島沖で哨戒を開始したグロウラーは、7月5日未明、濃霧の中、日本海軍の特設運送船「あるぜんちな丸」や水上機母艦「千代田」、そして第十八駆逐隊の駆逐艦「霰」「霞」「不知火」からなる小艦隊と遭遇します。

巧みな攻撃により、「霰」を撃沈、「霞」と「不知火」に大損害を与え、その後の哨戒を続けました。7月7日には、第21駆逐隊による爆雷攻撃を受けましたが、被害はありませんでした。27日間の行動後、グロウラーは真珠湾に帰投しました。

東シナ海での活躍と艦長戦死

2回目の哨戒（1942年8月～9月）では東シナ海方面に向かい、複数の日本輸送船や特設砲艦「千洋丸」、特務艦「樫野」などを撃沈する戦果を挙げました。この哨戒では、激しい爆雷攻撃にも耐え抜き、49日間もの長期間にわたる作戦行動を成功させました。ギルモア艦長は、この活躍により勲章を授与されました。

3回目の哨戒（1942年10月～12月）ではソロモン諸島方面に向かい、ガダルカナル島の戦いに対応。多くの目標を確認したものの、攻撃機会に恵まれませんでした。49日間の行動後、ブリスベンに帰投しました。

4回目の哨戒（1943年1月～2月）もソロモン諸島方面で、陸軍輸送船「智福丸」を撃沈。しかし、この哨戒中に悲劇が起きます。2月7日未明、ニューブリテン島とニューアイルランド島の中間地点で、特務艦「早埼」と衝突。この衝突により、ギルモア艦長以下複数の乗組員が戦死、艦も損傷を受けました。副長が艦長心得となり、ブリスベンに帰投。修理後には「カンガルー・エクスプレス」という愛称が付けられました。ギルモア艦長には死後名誉勲章が授与されました。

連続哨戒と謎の沈没

その後もグロウラーは、5～7回目の哨戒でソロモン諸島やビスマルク諸島方面で活動し、輸送船などを撃沈。8回目の哨戒（1944年2月～4月）では東シナ海で哨戒を行い、輸送船「帝瑞丸」を攻撃、監視艇を撃沈しました。9回目の哨戒（1944年5月～7月）ではルソン海峡方面で哨戒を行い、輸送船「香取丸」を撃沈しました。

10回目の哨戒（1944年8月～9月）では南シナ海で活動し、ヒ72船団を攻撃、海防艦「平戸」や駆逐艦「敷波」を撃沈する大活躍を見せました。

最後の11回目の哨戒（1944年10月～11月）ではルソン島近海で活動中、SJレーダーの故障により帰投命令を受けました。しかし、帰投途中、1944年11月8日、原因不明のまま沈没。全乗組員が行方不明となり、その最期は謎に包まれています。日本側の記録では、グロウラーの攻撃を受けた輸送船「萬栄丸」が撃沈されています。

グロウラーは、その輝かしい戦功から8個の従軍星章を受章し、「駆逐艦退治人」という異名も持っていました。その短いながらも激動に満ちた艦歴は、第二次世界大戦におけるアメリカ海軍潜水艦部隊の活躍、そして戦争の残酷さを物語る象徴的な存在となっています。映画『太平洋機動作戦』では、グロウラーとギルモア艦長をモチーフにしたシーンが登場しています。

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