ケントゥリア民会

ケントゥリア民会：古代ローマの軍事と政治が交わる場

ケントゥリア民会（Comitia Centuriata）は、古代ローマにおける重要な民会の一つで、「兵員会」とも訳されます。この民会は、単なる民意を測る場としてだけでなく、軍事的な単位であったケントゥリア（百人隊）を社会制度へと転用することで、軍事と政治が密接に結びついていた当時のローマ社会を象徴する存在でした。

ケントゥリア民会の起源と構造

伝承によれば、ケントゥリア民会は王政ローマ時代、第6代の王セルウィウス・トゥッリウスによって創設されたとされています。彼は、ローマ軍を構成する全市民を財産に応じて6つの「クラシス（階級）」に分け、さらに各階級を細かく区分して、合計193のケントゥリアを組織しました。ただし、実際には紀元前5世紀頃に設けられたという説が有力です。

各クラシスとケントゥリアの構成は以下の通りです。

騎兵 - 18ケントゥリア
第一クラシス - 資産10万アス以上：40ケントゥリア（老年層：47歳以上）+ 40ケントゥリア（青年層：17～47歳）
第二クラシス - 資産7万5千～10万アス：20ケントゥリア
第三クラシス - 資産5万～7万5千アス：20ケントゥリア
第四クラシス - 資産2万5千～5万アス：20ケントゥリア
第五クラシス - 資産1万1千～2万5千アス：30+3ケントゥリア
その他 (兵役免除) - 1ケントゥリア

各ケントゥリアを単位として投票が行われ、執政官、法務官の選出、重要な裁判、戦争の決定など、国家の重要事項が討議されました。この構造から、ローマ市民の共同体が、重装歩兵を中心とした軍事的な性格を持っていたことが伺えます。ケントゥリアは「百」という意味を持ちますが、必ずしも100人定員ではなく、階級ごとに割り当てられた人員が均等に振り分けられていました。

ケントゥリア民会の開催場所

ケントゥリア民会は、その軍事的起源から、ローマ市内のポメリウムと呼ばれる神聖な境界内での開催が禁止されていました。そのため、ローマ郊外のカンプス・マルティウス（マルス神の地）で開かれていました。しかし、ローマの都市が拡大し、カンプス・マルティウスが事実上市内の一部となっても、この場所で会議が開かれ続けました。

投票システムと民会の影響力

投票は個人ではなく、ケントゥリア単位で行われました。各ケントゥリアは一つの投票権を持ち、その意思決定は所属する階級の多数意見によって左右されました。しかし、193のケントゥリアのうち98が富裕層によって占められていたため、貧困層の意見が民会で反映されることはほとんどありませんでした。

共和政後期になると、ケントゥリア民会は法案作成の役割を失い、公職選挙の場としての機能が中心となりました。野心を持つ政治家たちが、クルスス・ホノルムと呼ばれる官職昇進のための票を集める場となっていったのです。

語源と関連性

興味深いことに、英語の「委員会（committee）」という言葉は、この「民会（comitia）」に由来するとされています。このことからも、ケントゥリア民会がローマ社会において重要な役割を果たしていたことが伺えます。

まとめ

ケントゥリア民会は、古代ローマの社会構造、軍事組織、政治制度が複雑に絡み合った結果として生まれた独特の制度でした。その構造は、古代ローマの社会構造や権力構造を理解する上で、重要な手がかりとなるでしょう。

関連項目

民会 (ローマ)
クリア民会
プレブス民会（平民会）
トリブス民会
委員会

もう一度検索