ケンヒー

ケンヒー（鯁魚）

ケンヒー（学名: Cirrhinus molitorella）は、コイ科ラベオ亜科に属する淡水魚です。中国南部の珠江水系を中心に、台湾、ベトナム北部などにも分布しています。日本統治時代の台湾での呼び名である「ケンヒー」が和名として定着しました。地方名も多く、台湾では「ケンアー」「レンアー」、中国では「リンユー」などと呼ばれ、ベトナムでは「cá trôi việt」と呼ばれています。

形態と生態

ケンヒーは細長く、タモロコに似た体型をしていますが、背びれと尾びれはより大きいです。体長は約25cmほどですが、最大40cmを超える個体もいます。体高の約3.4倍の長さで、頭部は体長の約4.8分の1と小さいのが特徴です。主に水草やプランクトンを餌とし、水底付近で生活しています。寿命は約3年で成魚となります。

分布

中国では珠江水系が主な生息地ですが、閩江水系、海南島、香港、ベトナム北部のソンコイ川水系などにも分布しています。台湾への導入は、広東省からの養殖個体と考えられています。

利用

ケンヒーは中国、特に広東省で盛んに養殖されています。ソウギョ、ハクレン、コクレンと共に「四大家魚」の一つに数えられ、広東省の漁獲量の約3割を占める重要な食用魚です。

新鮮なケンヒーの身は滑らかで旨味がありますが、小骨が多いことが難点です。そのため、すり身にして利用されることが多く、「鯪魚球（リンユーチュー）」と呼ばれるつみれが一般的です。このつみれは、スープや粥鍋の具として使われます。順徳料理の「魚皮角（ユーペイコッ）」というスープワンタンも、ケンヒーのすり身を使った餡で作られています。

すり身は、ピーマンに詰めて揚げたり、ケンヒーの皮に詰めて鉄板焼きにしたりするなど、様々な料理に使われます。大型のケンヒーは、ネギやショウガ、豆豉と一緒に蒸したり、スープの具にしたりします。

また、豆豉と食用油と一緒に缶詰にした「豆豉鯪魚（トウチリンユー）」は、広東省の名産品として中国国内外に広く流通しており、日本でも中華食材として容易に入手できます。これは、そのままご飯のおかずとして食べる他、塩味が強いので、野菜と炒めて食べたり、蒸したりするなど、様々な調理法があります。この缶詰では、ケンヒーをウグイと誤訳している例も見られますが、両者は異なる亜科に属する魚です。

近縁種

ケンヒー(Cirrhinus molitorella)と近縁の種として、Cirrhinus cirrhosus（英語名：Mrigal carp）が知られています。これはバングラデシュなどに分布しています。

参考文献

鄭慈英，『珠江魚類志』，科学出版社，1989，北京
中国水産科学研究院珠江水産研究所 他編，『広東淡水魚類志』，広東科技出版社，1991，広州

外部リンク

Fishbase Cirrhinus molitorella
FAO水産養殖局 Cirrhinus molitorella (英語)

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