ハクレン(白鰱)について
ハクレン(
学名:
Hypophthalmichthys molitrix)は、
コイ科ハクレン属に分類される
淡水魚で、
中国を原産とします。レンギョの一種として知られ、
中国では古くから養殖されてきた重要な食用魚です。
中国四大家魚の一つとしても数
えられています。
名称
中国では標準的に「白鰱(バイリエン)」と呼ばれ、一般的には「鰱魚」という名称が用いられます。地方によっては「扁魚」、「鏢魚」、「鱢魚」といった呼び名もあります。
ベトナムでは「
華南の白いレンギョ」を意味する「カーメー・チャン・ホワナム」または単に「カーメー」と呼ばれます。タイでは「舌の魚」を意味する「プラーリン」という名称で知られています。
分布
ハクレンの本来の生息域は、シベリア東部から
中国にかけての
アムール川から
西江までの流域です。日本では、
1878年に初めて導入され、
1942年に本格的な移入が行われました。現在では、
本州や
九州に帰化していますが、自然繁殖が確認されているのは利根川、
霞ヶ浦周辺のみです。世界的には、ユーラシア大陸東部やアメリカの
ミシシッピ川水系にも定着しています。
特徴
ハクレンは、産卵期に水面を跳ねる豪快な集団跳躍が特徴的で、
中国では「跳鰱」とも呼ばれます。最大で130cm以上にも成長する大型魚で、成長が早いのも特徴です。日本で確認されるものは100cm程度までが多いようです。体色は白銀色で、
鱗は細かいです。下顎が発達した受け口を持ち、眼が顔の下の方についているため、独特なアンバランスな顔つきをしています。この特徴的な顔つきから、地方によっては「シタメ」と呼ばれることもあります。普段は、河川の下流域から中流域の上層から中層を群れでゆっくりと回遊しています。
ハクレンは主に植物プランク
トンを餌としており、摂食時には上流を向いてエラを開閉させ、水を吸い込みながら濾し取って食べます。この採餌方法に対応するため、成長とともにエラにある鰓耙が発達し、海綿状になります。
繁殖行動
5歳以上になると性成熟したハクレンは、5月下旬から7月中旬の産卵期に、川の中流域まで一斉に遡上し集団で産卵を行います。利根川では、埼玉県
久喜市栗橋地区や茨城県
古河市中田地区、五霞町北部付近が主な産卵場所です。
産卵直前に見られるハクレンの跳躍行動は、音や振動に反応していると考
えられていますが、正確な原因はまだ解明されていません。産卵行動との因果関係も不明です。一説には、もともとの生息地での天敵から逃れるための行動が残っているとも言われています。巨大な魚体が競うように跳ねる様子は圧巻ですが、観察できるのは1年のうちごくわずかな期間に限られています。産卵は、この集団跳躍の後に行われることが多く、雌は産卵しながら水流に身を任せて流下し、そこに数匹の雄がまとわりついて放精します。
受精卵は1.5~2mm程度ですが、吸水すると5mmほどに膨らみ、浮遊しながら川を下り、約2日後に孵化します。
中国のような大河では問題ありませんが、日本では流域面積の狭い河川が多いため、孵化前に受精卵が海に流出したり、孵化直後の仔魚にとって不利な水域に到達してしまうことが多く、自然繁殖が難しいとされています。日本で自然繁殖が確認されているのは、利根川水系のみです。利根川では、産卵2日後にちょうど
霞ヶ浦や
北浦付近に差し掛かり、仔魚が止水域に入り込むことができるため、繁殖が成功していると考
えられます。
養殖
ハクレンは、
コクレンと同様に、
中国や
台湾などで古くから食用として養殖されてきました。
中国では、
華南地方を中心に四大家魚を同じ養殖池で養殖することが一般的でしたが、現代の大規模養殖では別々に養殖されています。ハクレンは、
中国で全
淡水魚の中で3番目に出荷量が多く、
2010年には360.8万
トンが出荷されました。主な生産地は、
湖北省、
江蘇省、
湖南省、
安徽省、
江西省、
四川省、
広東省、
山東省です。
利用
ハクレンは、
アオウオ、
ソウギョ、
コクレンとともに
中国の「四大家魚」と称され、中華料理の食材として広く利用されています。小骨が多いものの、淡泊な味わいで、蒸し魚、唐揚げ、
スープなど、様々な料理に使われます。
コクレンに比べると劣りますが、頭部の味が良いため、頭だけを蒸したり、土鍋で煮る料理も人気があります。四川料理の「水煮魚」や「酸菜魚」には、本種がよく用いられます。
日本では、当初食用目的で導入されましたが、他にも選択肢が多かったため普及しませんでした。しかし、
アオコの除去効果が期待されたため、
アオコによる湖沼
富栄養化対策として各地に放流されました。一般的には
釣りの対象とはなりませんが、その大きさを利用してゲームフィッシングの対象とする人もいます。
また、魚粉として畜産
飼料や養殖
飼料、有機肥料としても利用されており、外来魚駆除の一環として
地産地消品としての有効利用も進められています。
脚注
関連情報
四大家魚
魚の一覧
コクレン
ソウギョ
アオウオ
外部リンク
ハクレン倶楽部 - ゲームフィッシングの対象として利用している例。
巨大魚ハクレンの跳ぶまち栗橋 - 国土交通省 関東地方整備局 利根川上流河川事務所 - ウェイバックマシン(2007年2月26日アーカイブ分)
ハクレンのジャンプ - 久喜市栗橋観光協会
*
ハクレンジャンプ(巨大魚のジャンプ) - 久喜市ホームページ