コソボの歴史

コソボの歴史

コソボはバルカン半島に位置する地域であり、その歴史は複雑で、多くの民族や国家が関わってきました。古代にはダルダニアと呼ばれ、ローマ帝国の支配を経て、中世にはセルビア人国家の統治下に入りました。その後、オスマン帝国の支配を受け、セルビア、ユーゴスラビアの一部となり、2008年に独立を宣言しました。コソボはセルビア人とアルバニア人の間で民族紛争が絶えず、多くの人命が失われ、民族間の緊張が続いています。

古代

バルカン半島には、旧石器時代から人が居住していました。コソボ地域は、新石器時代にはヴィンチャ文化の中心地となり、青銅器時代、鉄器時代を経て、紀元前4世紀にはイリュリア王国の一部となりました。その後、ローマ帝国の支配下に入り、上モエシアの一部となりました。395年のローマ帝国東西分割では、東ローマ帝国の一部となりました。

ユスティニアヌス1世の時代には、東ローマ帝国の領域が拡大し、コソボも再びローマ帝国の支配下に入りました。5世紀以降は、ゴート族やフン族が侵入し、6世紀から7世紀にかけてスラヴ人が到達しました。

中世（839年 - 1455年）

第一次ブルガリア帝国の時代には、コソボはブルガリアの支配下に入りました。その後、東ローマ帝国の支配を経て、12世紀後半からセルビア人国家の一部となっていきました。13世紀には、イヴァン・アセン2世の時代に一時的にブルガリアの支配を受けましたが、その後はラシュカ公国の支配下に入り、1346年から1371年までセルビア帝国の一部となりました。1389年のコソボの戦いでは、セルビア大公ラザル・フレベリャノヴィチがオスマン帝国に敗れ、1455年に最終的にオスマン帝国の支配下となりました。

12世紀までのセルビアは統一国家ではなく、ラシュカ公国とドゥクリャ公国が有力でした。1180年代、ステファン・ネマニャがドゥクリャとコソボの一部を支配し、その子ステファン・プルヴォヴェンチャニが1216年にコソボの残りの部分を確保し、現在のセルビアとモンテネグロに相当する地域を支配しました。ネマニッチ朝の時代には、多くのセルビア正教会の聖堂や修道院が建設され、プリズレンやプリシュティナが首都となりました。コソボはギリシャとアドリア海を結ぶ交通の要衝であり、経済的に重要な土地でした。ノヴォ・ブルドやヤニェヴォでは鉱業が盛んでした。

ステファン・ウロシュ4世の時代にセルビア帝国は最盛期を迎えましたが、彼の死後、衰退し、コソボ地域はヴク・ブランコヴィッチの支配下となりました。オスマン帝国がバルカン半島に侵攻し、セルビア人国家の分裂に乗じて勢力を拡大しました。

当時のコソボの民族構成は、セルビア人、アルバニア人、ヴラフ人のほか、ギリシャ人、アルメニア人、サクソン人、ブルガリア人などがいました。勅書に記された名前はスラヴ風の名前が多く、スラヴ人が多数派であったことを示唆しています。同様の事実は、1455年のオスマン帝国の徴税記録にも見られ、当時のコソボではセルビア人が多数派であったことが示されています。

コソボの戦い

1389年6月28日、コソボ・ポリェの平原で、ラザル・フレベリャノヴィチ率いるキリスト教徒連合軍と、ムラト1世率いるオスマン帝国軍が激突しました。セルビア側は敗北しラザルは戦死しましたが、ムラト1世もミロシュ・オビリッチによって暗殺されました。セルビアはその後も独立を保ちましたが、1455年にオスマン帝国の支配下に入りました。ノヴォ・ブルドの要塞は、豊かな銀の産出のために重要でしたが、1455年6月1日にオスマン帝国の手に落ちました。

1448年10月には、フニャディ・ヤーノシュ率いるハンガリー軍とムラト2世率いるオスマン帝国軍の間で第二次コソボの戦いが行われました。オスマン帝国が勝利し、ハンガリー軍は撤退しました。

コソボの戦いは、キリスト教諸国によるオスマン帝国の侵攻に対する抵抗の重要な局面でした。セルビア人の間では、コソボの戦いは民族的悲劇を象徴するものとして伝説化され、英雄主義や逆境の中での戦いを賞賛するものとなりました。

オスマン帝国時代（1455年 - 1912年）

オスマン帝国はコソボにイスラム教を持ち込み、コソボ州を設置しました。オスマン帝国の統治は約500年間続きました。この間、多くのスラヴ人がイスラム教に改宗し、帝国に仕えました。コソボには、複数のサンジャク（県）と呼ばれる行政区画が置かれ、それぞれサンジャクベイによって統治されました。ムスリムには異教徒よりも高度な権利が与えられていたため、イスラム教への改宗の主な理由は経済的、社会的なものでした。

アルバニア人の多くはイスラム教を受容しましたが、セルビア人の間では改宗者は少数にとどまりました。オスマン帝国は16世紀中ごろに最盛期を迎えましたが、その後はオーストリアなどとの戦争によって疲弊し、住民に対する課税が強化され、反発を生じるようになりました。

近現代

1912年のバルカン戦争でセルビア領となり、その後ユーゴスラビア王国の一部となりました。第二次世界大戦中には、イタリアの保護領となっていたアルバニア王国に編入されました。戦後、ユーゴスラビア連邦人民共和国の構成国であるセルビア人民共和国の一部となり、コソボ・メトヒヤ自治州が設置されました。

1990年代のユーゴスラビア崩壊に伴い、コソボではセルビア人とアルバニア人の民族対立が激化し、コソボ紛争が発生しました。1999年には、NATOによるユーゴスラビア空爆が行われ、コソボは国際連合の統治下に置かれました。2008年2月17日、コソボ議会は独立を宣言し、コソボ共和国を自称しました。しかし、セルビアはコソボの独立を認めていません。

コソボは、セルビア人とアルバニア人の間で民族紛争が絶えず、多くの人命が失われ、民族間の緊張が続いています。紛争によって多くの文化遺産が破壊され、民族間の憎悪が深まっています。コソボの将来は、民族間の和解と共存にかかっています。

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