コニツ

コニツ：ボスニア・ヘルツェゴビナ南部に位置する歴史都市

コニツ（Konjic）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦のヘルツェゴビナ＝ネレトヴァ県に属する都市です。サラエヴォの南西約40キロメートルに位置し、標高約300メートルのネレトヴァ川沿いに広がっています。周囲は山々と森林に囲まれた、自然豊かな環境です。人口は約2万9千人です。

古代からの歴史と多様な文化

コニツ周辺には、約4000年前から人が居住していた痕跡があり、約2000年前にはイリュリア人がネレトヴァ川沿いに定住していたと考えられています。1382年には、ラグーサ共和国（現在のドゥブロヴニク）の記録にもその名が確認できます。中世にはボスニア王国の一部となり、その後オスマン帝国の支配下に入ります。オスマン帝国時代には、特徴的なイスラム教建築様式を受け継いだ橋やモスクなどが建設され、オリエント風の文化が根付きました。その後、オーストリア＝ハンガリー帝国の支配を経て、第二次世界大戦中はナチス・ドイツの傀儡政権であるクロアチア独立国の支配下に置かれます。
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国時代には、サラエヴォとアドリア海沿岸を結ぶ鉄道の要衝として発展しました。イグマン弾薬工場やユーゴスラビア人民軍(JNA)の兵舎も存在し、多民族都市として栄えました。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争とコニツ

1990年代初頭、ユーゴスラビア紛争が勃発すると、コニツはサラエヴォとボスニア・ヘルツェゴビナ南部を結ぶ重要な連絡路として、紛争に巻き込まれます。サラエヴォ包囲戦では、ボスニア政府軍にとって戦略上重要な拠点となりました。倉庫、弾薬工場、通信施設など、多くの軍事施設が存在していたため、激しい戦闘が繰り広げられました。

1992年3月、セルビア人コニツ自治体が一方的に宣言されます。セルビア民主党(SDS)はJNAと協力して自治体の運営や軍事組織の訓練を行い、事実上の自治を維持しようとしました。クロアチア勢力もまた、独自の自治を要求しましたが、セルビア人ほど強い勢力を有していませんでした。

ボスニア・ヘルツェゴビナの独立が国際的に認められると、SDSはコニツ自治体の議会から離脱し、戦時議会を形成します。1992年4月から5月にかけて、ボスニア政府軍はコニツ自治体の多くの戦略資産や武器を掌握しましたが、セルビア人勢力は外部からの道路網を掌握し、効果的な補給路を遮断しました。これにより、自治体周辺に住むボシュニャク人難民が流入し始め、セルビア系住民はセルビア人勢力が掌握した村へと移住していきました。

1992年5月4日、JNAとセルビア人勢力はコニツへの砲撃を開始しました。この砲撃は、デイトン合意が成立するまで3年以上も続きました。砲撃によって多くの犠牲者が出、コニツの住民は堪え難い状況に置かれました。難民の増加により、住居、食料、その他生活必需品の不足が深刻化しました。国際的な援助団体からの支援はありましたが、生産設備は破壊され、経済的な打撃は大きかった。

コニツ自治体の最優先事項は、サラエヴォやモスタルとの交通・通信の確保でした。セルビア人勢力との交渉は失敗に終わり、クロアチア勢力と共同で武力行使に出る計画が立てられます。この武力行使の結果、多くのセルビア系住民が逮捕され、チェレビチ強制収容所が設置されました。収容者の中には拷問を受けた者や殺害された者もいたとされ、深刻な人権侵害が行われました。

コニツの現在

現在のコニツは、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争からの復興を進めています。ネレトヴァ川沿いの美しい自然環境と、歴史的建造物を活かした観光業の振興も期待されています。スウェーデンのストレングネースとスペインのバルセロナを姉妹都市としています。

コニツの地区

コニツには、Argud、Bale、Bareなど多くの地区があります。これらの地区は、コニツの豊かな歴史と文化を語る上で重要な役割を果たしています。

人口動態

1971年と1991年の国勢調査によると、コニツの人口構成はボシュニャク人、クロアチア人、セルビア人が多くを占めていました。紛争の影響で人口動態に大きな変化が見られたことがうかがえます。

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