コンピュータ・クラスター

コンピュータクラスタとは

コンピュータクラスタとは、複数のコンピュータを連携させ、あたかも一つのシステムとして機能させる技術です。これらのコンピュータは「ノード」と呼ばれ、高速なネットワーク「インターコネクト」を通じて相互に接続されます。この技術により、単一のコンピュータでは実現できない高い計算能力や可用性を得ることが可能になります。

クラスタは、その見た目から「葡萄の房」に例えられることが多いです。これは、各ノードがネットワークを介して繋がり、一つのまとまりとして機能する様子を表現しています。

クラスタの構成と種類

クラスタは、その目的や共有形態、実現レベルによって分類できます。

目的による分類

スケーラビリティ (拡張性)：複数のコンピュータを統合し、高い処理速度を追求します。大規模な計算処理が必要な分野で利用されます。例として、スーパーコンピュータやWebサーバの負荷分散などがあります。
リダンダンシー (冗長性)：複数のコンピュータを連携させ、システム全体の信頼性を高めます。一部のコンピュータが故障しても、システム全体のサービスが停止しないようにします。例として、高可用性クラスタがあります。

実際には、拡張性と高可用性を兼ね備えたクラスタ構成が多いです。これにより、システムの安定性と性能向上の両立が図れます。

共有形態による分類

密結合クラスタ：複数のコンピュータがストレージなどのリソースを共有します。高速なデータアクセスが可能ですが、単一障害点となるリスクも存在します。
疎結合クラスタ：各コンピュータが独立したリソースを持ち、ネットワークを通じて連携します。ネットワークの性能がボトルネックになる可能性があります。

クラスタの歴史

近代的なクラスタの起源は、1983年のDECによるVMSclusterに遡ります。このシステムは、複数のVAXコンピュータを連携させ、システム障害時にも短時間で復旧できるようにしました。

その後、メインフレームでのクラスタリング技術も登場し、高可用性が実現されました。1990年代には、商用UNIXシステムでもクラスタリングが普及し、より低コストで高可用性を実現できるようになりました。現在では、OSやミドルウェアと連携した高度なクラスタリング技術が利用されています。

主要なクラスタパッケージ

クラスタを構築するためのパッケージは多岐にわたります。

HPC向け：SCore、Beowulf、Globusなど、高性能計算を目的としたパッケージです。
高可用性向け：IBMのPowerHA、HPのMC/ServiceGuard、オラクルのOracle Solaris Clusterなど、システム停止を防ぐためのパッケージです。
高性能かつ高可用性向け: IBMのIMS XRF, 並列シスプレックス、オラクルのReal Application Clusters（RAC）などがあります。

これらのパッケージは、OSやハードウェアに合わせて選択され、システムの信頼性向上や性能向上に役立ちます。

まとめ

コンピュータクラスタは、現代のITインフラを支える重要な技術です。計算能力の向上、可用性の確保、そして災害対策など、多岐にわたる分野でその恩恵を受けることができます。クラスタ技術の進化は、今後も情報社会の発展に不可欠な役割を果たすでしょう。

関連項目

クラスタリング
分散コンピューティング
並列コンピューティング
グリッドコンピューティング
ロードシェア
サーバファーム
疎結合クラスター
密結合クラスター
高可用クラスター
ユーティリティコンピューティング
アムダールの法則
計算科学
Scientific Linux
Linux-HA

外部リンク

ローカルクラスタとフェイルオーバー - ウェイバックマシン
@IT - 多様化するクラスタ方式
ITPro - 主なクラスタソフト
PCクラスタの作り方 (PDF)
PCクラスタコンソーシアム（PC Cluster Consortium）
* The Beowulf Cluster Site （英語）

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