ゴム (イラン)

ゴム（Qom/Ghom）

ゴムは、イラン中部に位置する都市で、ゴム州の州都です。イランの首都テヘランから南に約120キロメートル離れたこの地は、イスラム教シーア派の重要な中心地であり、多くの宗教的施設を有しています。ゴムは、近世ペルシア語での名称「クム（Qum）」や、日本語での「コム」としても知られています。現代のペルシア語では、公正な発音に基づく「ゴム」が用いられています。

人口は約1,201,158人であり、都市の中心には、イマーム・ムーサー・カーゼムの娘であり、イマーム・アリー・レザーの妹でもあるファーテメ・マアスーメの霊廟が存在し、これを中心に発展した宗教都市です。ゴムには、ホウゼ・ウルミーエ・ゴム学院という重要な宗教学校があり、これは1921年に設立され、イスラム法学を学ぶための中心地となっています。歴史的には、イラン革命の理論的指導者であるホメイニーもこの学院で学び、教鞭を執ったことで知られています。

歴史的背景

ゴムの歴史は、イスラム時代の初期にさかのぼります。その頃、アラブ人の移住が相次ぎ、イスラム教、特にシーア派信仰の中心地として認識されてきました。伝説によれば、ファーテメがメルヴに滞在中に亡くなり、彼女の墓への参拝が盛んになり、ゴムは宗教的な重要性を増していきました。10世紀頃には、聖廟に付属して設立されたホウゼが、十二イマーム派の教学の中心として機能し始めました。

16世紀には、サファヴィー朝によって十二イマーム派が国教とされ、ゴムはその後も宗教的な発展を遂げました。その後、イラクのナジャフが隆盛を迎えるとともに、ゴムの注目は相対的に減少しましたが、1920年代にイラン生まれの碩学が教授に迎えられ、再び教学の中心として復活しました。

特に1978年には、ホメイニーを中傷する新聞記事がきっかけとなり、ゴムで学生デモが発生しました。この運動は全国に広がり、1979年にはホメイニーが帰国し、イラン革命が成立しました。

現代のゴム

20世紀末以降、ゴムは国際的な宗教都市としての色合いが増しました。イラクのサッダーム・フセイン政権下でシーア派が抑圧される中、多くの亡命者がゴムに集まり、ソビエト連邦の崩壊後は中央アジアからの留学生も増加しました。現在、ゴムには国際的なイマーム・ホメイニ国際神学校があり、世界70カ国から3000人以上の留学生がイスラム法学を学んでいます。

地理と気候

ゴムはテヘランの南約125キロメートルの位置にあり、気候は砂漠気候（BWh）に分類されます。周辺には油田が広がり、石油や天然ガス産業が主要な産業となっています。

交通と教育

ゴム国際空港があり、また鉄道のゴム駅も存在します。市内ではゴム・メトロやモノレール線の建設が進められています。教育機関には、ゴム大学や医科大学など、多くの高等教育機関が設置されています。これらの要素が、ゴムを国際的な宗教都市としての地位を確立する要因となっています。

もう一度検索