ゴロニオサウルス

ゴロニオサウルス：特異な形態を持つモササウルス科の謎

ゴロニオサウルス（Goronyosaurus）は、モササウルス科に属する絶滅した海生爬虫類の属です。化石は主にニジェールとナイジェリアのデュカマジェ累層から産出し、その時代は後期[[白亜紀]]のマーストリヒチアン期に相当します。当初はモササウルス・ニジェーリエンシスとして記載されましたが、その特異な適応から、1972年に新属ゴロニオサウルスとして再分類されました。ゴロニオサウルスはモササウルス科の中でも特に異質な存在であり、系統解析ではしばしば除外される対象となっています。

発見と命名

ゴロニオサウルスの最初の化石は、1925年にフランツ・ノプシャによって言及され、1930年にW・E・スウィントンによって詳細に記載されました。この時発見されたのは、分離した椎骨、大腿骨、下顎骨の断片、そして歯でした。スウィントンはこれらの化石を新種モササウルス・ニジェーリエンシスとして命名しました。その後、1970年代にイタリアの研究チームがデュカマジェ累層を調査した際、追加の椎骨、上腕骨の断片、部分的な骨盤、そしてほぼ完全な頭骨が発見されました。これらの新たな標本は、同じ地層から発見され、大きさや解剖学的特徴が類似していたことから、当初はモササウルス・ニジェーリエンシスと同定されました。

しかし、追加の化石を研究する中で、モササウルス属とは異なる重要な特徴が明らかになり、これらの化石のために新属ゴロニオサウルスが設立されました。属名は化石が発見されたナイジェリアのゴロニオ地方に由来します。新たに発見された頭骨 N.G.1 は、ゴロニオサウルスのネオタイプとして選ばれました。ゴロニオサウルス属には、巨大な3体の標本を除き、かつてモササウルス属に分類されていたすべての標本が含まれることとなりました。すべての化石のレプリカは、フィレンツェ大学地質古生物学博物館に所蔵されています。

形態

ゴロニオサウルスは比較的小型のモササウルス類で、全長は5.14メートルと推定されています。かつては7.8メートルと推定されていましたが、これは頭部と全身の比率が誤っていたことが判明しました。ゴロニオサウルスの頭部は全長の約9.1%を占め、これはティロサウルス亜科の13.8%と比較してかなり小さいです。

頭骨

ゴロニオサウルスの頭骨は、他のモササウルス科と比較して細長く、長さは約71センチメートル、幅はわずか11.2センチメートルと推定されています。この6.31:1という比率は、他のモササウルス科の爬虫類と比較して非常に細長いことを示しています。前上顎骨、上顎骨、鼻骨などの吻部は変形して平坦化しています。前上顎骨歯は頑丈で、大型の神経孔が前上顎骨の背面に位置します。上顎骨は眼窩よりも後方に伸びており、約11本の歯があったと考えられます。鼻骨は外鼻孔の間で突出しており、表面は起伏に富んでいます。外鼻孔は比較的小さく、後方に位置しています。

頬骨については、研究者間で意見が分かれています。初期の研究では、ゴロニオサウルスの頬骨は極端に長く高いとされていましたが、後にこれは頬骨と下顎の烏喙状突起が結合したものであるという説が提唱されました。真の頬骨は薄く、他のリオドンなどの特徴と類似しています。頭骨の後部については、保存状態が良くないため、詳しい構造は不明確です。頭頂骨は狭く、前頭骨との関節は複雑であったと推測されています。

口蓋の翼状骨には他のモササウルス科と同様の歯が並んでいます。翼状骨の突起は細長く、破損していますが、関連分類群のものに類似していたと考えられます。後頭部の保存状態は良くないですが、上後頭骨には特有の溝があります。基蝶形骨の側面は急勾配であり、翼状管は湾曲していません。

歯

ゴロニオサウルスの歯は、他のモササウルス科とは異なる特異な形態をしています。一般的にモササウルス科は切断用の歯を持つことが多いですが、ゴロニオサウルスの歯は丸みを帯びた頂点を持ち、直線的で、食物を破砕するのに適していたと考えられます。歯冠は歯列の後方ほど大きくなります。歯と歯の間隔が広いのも特徴で、これにより上下の歯がしっかりと噛み合うようになっていました。

軸骨格

環椎と軸椎は発見されていませんが、他の複数の頸椎は保存されています。神経棘は太く、椎弓突起は発達していますが、神経弓と椎骨の関節は存在しません。背中周辺には複数の脊椎が発見されており、椎体は円筒形から始まり、骨盤に近づくにつれて平らになります。側方の突起はわずかに前側と背側を向いています。

分類

ゴロニオサウルスはその特異な特徴から、分類が非常に困難です。多くの系統解析からは除外されており、かつては独自の亜科に分類されていましたが、これは頬骨の特徴に基づいた誤った分類でした。その後、頭蓋の特徴からティロサウルス亜科に位置づけられましたが、必ずしも正しいとは限りません。2010年の包括的な解析では、プログナトドンやプレシオティロサウルスなどと共にモササウルス亜科を形成するとされました。

ゴロニオサウルスとプログナトドン、その他のモササウルス族との共通の特徴としては、前頭骨が外鼻孔の境界を作らないこと、および上腕骨が関節窩の裏側に鉤状の突起を持つことが挙げられます。また、前上顎骨の歯が非常に前方に存在すること、歯列が眼窩の後方まで伸びること、上顎骨が正面で接触すること、などの特徴も共有しています。

古生物学

食性

ゴロニオサウルスは、他のモササウルス科とは異なり、破砕に適した丸みを帯びた歯を持っています。これは、切断用の歯を持つ他の大型捕食動物との競争を避けるため、異なる食物を摂取していた可能性を示唆しています。ワニが淡水域で獲物を襲うように、ゴロニオサウルスも海辺に接近した動物を捕食していた可能性があります。

ゴロニオサウルスの化石は、その特異な形態と生態に関する多くの謎を秘めており、今後の研究によって、さらなる詳細が明らかになることが期待されます。

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