サイクル (文学)

サイクルとは、共通の人物やテーマを中心とした物語の集合体を指す言葉です。多くの場合、神話、伝説、歴史上の人物など、特定の人物や出来事にまつわる物語群を指します。物語の種類や文脈に応じて、作品群、文学群、物語群、伝説群、詩歌群、騎士物語群などと訳されることもありますが、本稿では「サイクル」という言葉で統一して解説します。

代表的なサイクル

以下に、様々なサイクルの中から代表的なものをいくつか紹介します。

アーサー王サイクル (Arthurian cycle)
アーサー王物語を中心に、アーサー王、ランスロット、円卓の騎士といった登場人物にまつわる物語群です。「ブルターニュもの (Matière de Bretagne)」とも呼ばれます。
ランスロ＝聖杯サイクル (Lancelot-Grail Cycle)
アーサー王物語の中でも、ランスロット卿と聖杯にまつわる物語群です。流布本サイクル (Vulgate Cycle) とも呼ばれます。
叙事詩サイクル
トロイア戦争に関連する一連の物語群です。
シャルルマーニュ・サイクル (Charlemagne cycle)
カール大帝 (シャルルマーニュ) にまつわる物語群で、「フランスもの」とも呼ばれます。
ロビン・フッド・サイクル (Robin Hood cycle)
義賊ロビン・フッドにまつわる物語群です。

北欧神話におけるサイクル

ヴォルスング・サイクル (Völsung Cycle)
ヴォルスング一族の英雄たちの物語群です。
チュルヴィング・サイクル (Tyrfing Cycle)
魔法の剣チュルヴィングにまつわる物語群です。

アイルランド文学のサイクル

アイルランド文学には、以下の4つの主要なサイクルがあります。

フェニアンサイクル (Fenian Cycle)
フィン・マックールとフィアナ騎士団にまつわる物語群です。
神話サイクル (Mythological Cycle)
アイルランドの神々や英雄たちの物語群です。
歴史サイクル (Historical Cycle)
アイルランドの歴史的な出来事や人物にまつわる物語群です。
アルスターサイクル (Ulster Cycle)
クー・フーリンをはじめとするアルスターの英雄たちの物語群です。

その他のサイクル

4つのSirventesのサイクル
アラゴン十字軍 (Aragonese Crusade) にまつわる4人のトルバドゥールによる詩歌群です。
ヨーク・サイクル (York cycle)
救済の歴史を題材とした神秘劇のサイクルです。
指輪サイクル (the Ring Cycle)
リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』のことで、黄金の指輪をめぐる物語です。
クトゥルフ・サイクル (Cthulhu Cycle)
クトゥルフ神話の物語群を指すことがあります。
狐物語群
キツネなどの動物を擬人化した中世ヨーロッパの寓話文学です。
* 源平物語群
『平家物語』、『源平盛衰記』、『義経記』、文楽『平家女護島』、小説『新・平家物語』、テレビドラマ『新・平家物語』など、源氏と平家の興亡を描いた作品群です。

サイクルは、特定のテーマや人物を中心に、様々な物語が有機的に結びついた集合体であり、それぞれの物語が相互に影響し合い、より大きな世界観を形成しています。これらのサイクルを通して、各文化の神話、伝説、歴史、文学に触れることができます。

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