サン・ロレンソ (遺跡)

サン・ロレンソ遺跡の概要

サン・ロレンソはメキシコのベラクルス州南部に位置する先古典期前期の遺跡です。この場所は、メキシコ湾岸におけるオルメカ文明の最初の中心地として知られています。サン・ロレンソは紀元前1150年頃から栄えましたが、紀元前900年頃に破壊され、オルメカ文明の中心地はラ・ベンタへと移動しました。

最盛期のサン・ロレンソの人口は、約8,000人から18,000人と推定され、当時のアメリカ大陸において最大規模の集落の一つとして知られています。

遺跡の地理的特徴

サン・ロレンソ遺跡は、コアツァコアルコス川などの水域に囲まれた高台に位置しており、周辺にはいくつかの沼が点在しています。この遺跡は、サン・ロレンソ、テノチティトラン、ロマ・デ・サポテ、エステロ・ラボンの4地区に分かれています。また、コアツァコアルコス川を渡った南東にはエル・マナティ遺跡が存在しています。

遺跡の年代区分

サン・ロレンソ遺跡の年代区分は、オホチ期（紀元前1500-1350年）、バヒオ期（紀元前1350-1250年）、チチャラス期（紀元前1250-1150年）、サン・ロレンソ期（紀元前1150-900年）、ナカステ期（紀元前900-700年）、パランガナ期、レンプラス期に分けられます。オルメカ的な特徴や社会の階層化が顕著に現れるのはチチャラス期以降であり、サン・ロレンソ期にはそのピークを迎えますが、ナカステ期には衰退の兆しが見えるようになります。特にナカステ期には、破壊活動が活発化し、遺跡はほぼ活動を停止します。

この時期に発見されたプラント・オパールの分析では、食生活の主成分がトウモロコシではなく根茎類であった可能性が高いことが示唆されています。

石彫と建造物

サン・ロレンソ遺跡からは62基の石彫が発掘されており、その中には巨石の人頭像、座像、動物像、石碑、祭壇などが含まれています。特に、10体の巨石人頭像が発見され、その中の一つにはジャガーの浮き彫りが施されています。他にも多数のジャガーに関する石彫が見つかっています。

また、南部のラ・ベンタでは大規模な土製の建造物が多く見られますが、サン・ロレンソでは低い土製基壇の構造が一般的であり、建物は南北をほぼ正確に配置されています。特に「赤の宮殿」と呼ばれる施設では、赤鉄鉱が塗料として大量に使用されています。この建物は支配階級の大型住居であったと考えられ、玄武岩製の大きな円柱が含まれています。

発掘調査と遺物

サン・ロレンソの発掘調査は、初期にマシュー・スターリングによって始まり、その後1960年代後半にマイケル・D・コウによって行われました。1990年以降には、アン・サイファースを中心としたさらなる調査が続いています。

発掘された遺物の多くは、ベラクルス州のハラパにある人類学博物館（Museo de Antropología de Xalapa）や、メキシコシティの国立人類学博物館に展示されています。

参考文献

この遺跡に関する詳細な情報を知りたい方は、青山和夫と猪俣健の著書『メソアメリカの考古学』や、伊藤伸幸の『中米の初期文明オルメカ』、古手川博一と黒崎充による『メキシコ湾岸文化―南部地方と中部地方の古代文化』を参考にすることをお勧めします。

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