サン＝ナゼール (ロワール＝アトランティック県)

サン＝ナゼールの概要

サン＝ナゼール（フランス語: Saint-Nazaire、ブルトン語: Sant-Nazer）は、フランスのロワール＝アトランティック県に位置するコミューンであり、美しいロワール川三角江の右岸に広がる港町です。ビスケー湾から大西洋へと伸びる位置にあるため、サン＝ナゼールは古くから漁業や造船業の中心地として発展してきました。また、町の北側にはフランス第二の湿地、ラ・ブリエールが広がっており、豊かな自然も魅力的です。

歴史

古代から中世の発展

サン＝ナゼールの歴史は非常に古く、ガリア人によって築かれた都市「コルビロ」が起源とされています。この都市は古代ギリシャの航海者ピュテアスにも言及されており、周辺にはディシニャックの巨石記念物や三つ石のドルメンなど、歴史的な遺跡が点在しています。中世に入ると、サン＝ナゼールはブルターニュ公国に属し、特にブルターニュ継承戦争の戦場としても名を馳せました。

17世紀には、ユグノーがもたらした脅威に直面し、18世紀にはエギュイヨン公の指導のもとで、海からの攻撃に備えるための要塞が建設されました。近代になると、サン＝ナゼールは主要な港湾都市として歩み続け、1930年代にはフランスの豪華客船SSノルマンディーのための新たなドックが設けられました。

第二次世界大戦と惨劇

しかし、1940年にフランスが第二次世界大戦に突入すると、状況は一変しました。ドイツ軍の侵攻により、サン＝ナゼール港にはイギリス軍の兵士が押し寄せ、撤退を試みました。この混乱の中、客船ランカストリアが5500人を乗せて出航しましたが、爆撃によって沈没し、多くの犠牲者を出しました。この事件はあまり知られていませんが、イギリス海運史の中でも最も悲惨な出来事の一つです。

フランスが降伏すると、サン＝ナゼール港はドイツ海軍の重要な拠点となり、Uボートが多数収容可能な施設が設けられました。この頑丈な構造物は、当時の爆撃に耐えうる設計となっており、今日でもその跡が残っています。さらに1942年には、イギリス軍のチャリオット作戦によって、港の干ドックが破壊され、連合軍側の作戦の重要な一環となりました。

1943年には大空襲があり、サン＝ナゼールの市街地は焼き尽くされましたが、民間人のほとんどは早い段階で避難していました。しかし、その後市街は放置され、戦争が終了するまで復興はされませんでした。

戦後の復興と現在

戦後は1940年代後半に最小限の再建が行われ、今も街には当時の灰色の外観が残っています。しかし、経済的には厳しい状況が続きました。1960年代から1970年代にかけて造船業は縮小し、1980年代には失業率が20%を超えるという危機的な状況に見舞われました。

しかし、現在ではサン＝ナゼールの経済は多様化しており、特に地元の造船所であるシャンティエ・ド・ラトランティクはクルーズ船建造に成功し、世界的な地位を築いています。また、エアバス社の工場もあり、航空業界にも重要な役割を果たしています。

交通と姉妹都市

サン＝ナゼールはナント・アトランティック空港に近接しており、周囲の都市とも良好な交通網が整備されています。最寄りの駅であるサン＝ナゼール駅はTGVも停車し、利便性が高いです。さらに、サン＝ナゼールは多くの姉妹都市を持ち、国際交流を推進しています。姉妹都市には、ドイツのザールルイやスペインのアビレスなどがあります。

以上のように、サン＝ナゼールは豊かな歴史を背負いながら、現在も新たな挑戦を続けている魅力的な都市です。

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