ザオ・ウーキー

ザオ・ウーキー（趙無極）：東洋と西洋の美が融合した抽象絵画

ザオ・ウーキー（趙無極、Zao Wou-Ki、1920年2月1日 - 2013年4月9日）は、中国に生まれ、後にフランスで活躍した画家です。彼の作品は、中国の水墨画の伝統と西洋の抽象表現主義を融合させた、独特のスタイルで知られています。風景や自然を題材にした作品は、見る者に深い感動を与え、20世紀の美術界に大きな影響を与えました。

生涯

1920年、ザオ・ウーキーは中国の名門の家系に生まれました。幼い頃から芸術に親しみ、15歳で杭州国立美術学校に入学。ここでは書道や山水画を学び、その才能を開花させました。1941年には同校の講師となり、後進の育成にも尽力しました。

1948年、ザオ・ウーキーは更なる芸術の高みを目指し、パリへと渡ります。グランド・ショミエール芸術学校でオトン・フリエスに師事し、西洋美術の技術と理論を学びました。翌年には個展を開催し、「中国のボナール」と評されるほどの成功を収め、その才能は瞬く間にヨーロッパで認められるようになりました。

1950年には、ピエール・ルーブ画廊と契約。アンリ・ミショーと出会い、共同でリトグラフ作品を制作しました。この頃には、ジョアン・ミロ、パブロ・ピカソ、ピエール・スーラージュなど、著名な芸術家たちとも親交を深め、特にピカソからは大きな影響を受けました。また、ポール・セザンヌの絵画からは、自然を多角的に捉える視点を学びました。

その後、ヨーロッパ各地を旅しながら、古典から現代美術まで幅広いスタイルを吸収。特にパウル・クレーの作品との出会いは、彼の作風に大きな変化をもたらし、当時台頭していたアンフォルメル運動の影響も受け、徐々に抽象化を深めていきました。

1957年には初来日し、東京、京都、奈良の文化に触れ、その後の作品に新たなインスピレーションを与えました。

1962年には、アンドレ・マルローの著書『西洋の誘惑』の挿絵を担当し、その才能を広く認められました。マルローの助力により、1964年にはフランス国籍を取得しました。1960年代から1970年代にかけては、アルチュール・ランボー、ルネ・シャール、ロジェ・カイヨワなど、著名な作家の書籍の挿絵も数多く手がけました。

1971年からは、墨を用いた絵画制作にも挑戦し、1982年には、友人である建築家イオ・ミン・ペイが設計した北京のホテルに、2点の大作水墨画（280×360cm）を制作しました。ザオ・ウーキーは、「パリでの経験が自分の技術形成に大きな影響を与えていることは否定できないが、自己の個性が確立されるにつれて、中国への回帰が始まった」と語っています。

1993年には、レジオン・ドヌール・コマンドゥール賞を受賞、1994年には高松宮殿下記念世界文化賞（絵画部門）を受賞するなど、国際的に高い評価を得ました。

2013年4月9日、ザオ・ウーキーはスイス・ニオンの自宅で生涯を閉じました。彼の遺志は、2021年にオープンした香港の現代美術館「M+」に12点の作品が寄贈されることによって、次世代へと受け継がれています。

作品の価格

ザオ・ウーキーの作品は、国際的なオークションで非常に高い価格で取引されており、その人気と価値の高さを物語っています。

2017年11月には、作品『29.01.64』（1964年）が香港のクリスティーズで2億260万香港ドル（約2600万米ドル）で落札され、ザオ作品のオークション新記録と、アジア人アーティストが制作した油絵の価格における世界記録を樹立しました。同年5月には、作品『29.09.64』が1億5300万香港ドル（約1960万米ドル）で落札されたばかりでした。

2018年9月には、280×1,000cmにも及ぶ大作『Juin-Octobre 1985』（1985年）がサザビーズ香港で5億1000万香港ドル（約6500万米ドル）で落札され、香港のオークションにおける最高額を更新し、アジア人アーティストの油絵における世界記録を塗り替えました。

関連情報

• - ザオ・ウーキーの作品一覧
• - ザオ・ウーキー財団
• - アーティゾン美術館 ザオ・ウーキー

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