シグナス NG-11

NG-11ミッション

NG-11（旧名称OA-11）は、ノースロップ・グラマン社が開発・運用する無人宇宙補給機「シグナス」の12回目の飛行であり、国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送を目的としたミッションです。これは、NASAとの商業補給サービス（CRS）契約に基づき実施されたISSへの補給フライトとしては11回目に当たります。

このミッションは、延長されたCRS-1（フェーズ1）契約下における最終フライトとして位置づけられています。これ以降、ISSへの商業補給ミッションは、新たなCRS-2契約に基づいて実施されることになります。

NG-11はまた、ノースロップ・グラマン社の打ち上げロケット「アンタレス」の新型機の能力を活用し、打ち上げの約24時間前という直前まで貨物をシグナス宇宙船に搭載できるようになった、その最初の実証ミッションでもありました。

開発背景

ISSへの商業貨物補給サービスを実現するため、オービタルATK社（後にノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズが買収）とNASAは共同で新しい宇宙輸送システムの開発を進めました。NASAの商業軌道輸送サービス（COTS）計画のもと、オービタルATK社は中型打ち上げロケット「アンタレス」と、先進的な宇宙船「シグナス」の開発を担いました。シグナス宇宙船は、タレス・アレーニア・スペース社が製造する与圧貨物モジュールと、オービタルATK社自身のGEOStar衛星バス技術を応用したサービスモジュールで構成されています。

オービタルATK社は2018年6月にノースロップ・グラマン社に買収され、宇宙システム部門はノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズとして統合されました。

ミッションの詳細

NG-11ミッションは、商業補給サービスフェーズ2（CRS-2）契約が本格的に始まるまでの期間、NASAがISSへの継続的な補給ニーズを満たすための延長計画の一環として実施されました。打ち上げは、2019年4月17日 20時46分（協定世界時 UTC）に、バージニア州にあるワロップス島射場から行われました。

シグナス宇宙船の製造および初期組立てはバージニア州ダレスで行われ、与圧貨物モジュールとサービスモジュールの最終的な結合は打ち上げ施設で行われました。ミッション中の運用管制は、バージニア州ダレスおよびテキサス州ヒューストンの管制センターから実施されました。このミッションで使用されたシグナスは、より多くの貨物を搭載できる拡大型の与圧貨物モジュール（PCM）を備えており、この拡大型PCMの飛行としては8回目となります。

このシグナス補給船には、「宇宙船ロジャー・チャフィー」という名称が冠されました。これは、1967年にアポロ1号の訓練中の事故で亡くなった宇宙飛行士、ロジャー・チャフィー氏を追悼し、その功績を称えるものです。

輸送貨物

NG-11ミッションでは、合計 3,436 kg に及ぶ重要な貨物がISSへ輸送されました。内訳は、与圧貨物 3,162 kg と非与圧貨物 229 kg です。

主な積荷の内訳は以下の通りです。

乗員補給品: 987 kg
科学研究機材: 1,569 kg
船外活動装備: 24 kg
宇宙船資材: 628 kg
コンピューター資材: 4.5 kg
ノースロップ・グラマン関連装備: 35 kg

これらの貨物は、ISSに滞在するクルーの生活維持、多岐にわたる宇宙科学実験の実施、およびISS自体の維持・修理に必要なものです。

小型衛星の放出

NG-11ミッション中に、ISSやシグナス宇宙船から複数の小型衛星（キューブサット等）が宇宙空間に放出・展開されました。これらは様々な技術実証や科学観測を目的としています。

展開された小型衛星の一部を以下に示します。

エアロキューブ（AeroCube）10A (JimSat) および 10B (DougSat): エアロスペース・コーポレーション開発。
エテルニタス（Aeternitas）、ケレス（Ceres）、リベルタス（Libertas）: バージニア・キューブサット・コンステレーションの一部。NASAのELaNa-26ミッションの一環として放出され、それぞれオールド・ドミニオン大学、バージニア工科大学、バージニア大学が開発。
エントリーサット（EntrySat）
IOD-1 GEMS (In-Orbit Demonstration - Global Environmental Monitoring Satellite)
KRAKsat: ポーランドのAGH科学技術大学およびヤギェウォ大学製作。
SASSI2 (Student Aerothermal Spectrometer Satellite of Illinois and Indiana)
シーカー（Seeker）: 宇宙船外部検査用のNASAの自律飛行キューブサット。
スプーキー1（SpooQy 1）
スウィアトウィド（Światowid）: SatRevolution開発。
ThinSat: 12系列合計60機。学校や大学の生徒・学生によって組み立てられた実験衛星。
* ウグイス（Uguisu、日本）、ラアヴァナ1（Raavana 1、スリランカ）、ネパリサット-1（NepaliSat-1、ネパール）: BIRDS-3計画の一環として、それぞれの国の学生が開発した1Uキューブサット。

特筆すべき実験装置

今回の貨物には、ISS内の環境制御・生命維持システム（ECLSS）に関連する重要な技術実証装置が含まれていました。「サーマル・アミン・スクラバー」と呼ばれるこの新しいハードウェアは、ISSで初めて試みられるタイプの二酸化炭素除去技術です。2019年4月にISS内で起動され、空気中の追加的な二酸化炭素を効率的に取り除くことで、長期滞在における居住環境の改善に貢献することが期待されています。

NG-11ミッションは、ISSへの重要な物資補給を成功させるとともに、様々な科学研究や技術開発、教育プログラムの機会を提供しました。

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