シティフォン

シティフォン/シティオ：日本の都市部を彩った1.5GHz時代の携帯電話サービス

この記事では、NTTドコモがかつて提供していたPDC方式の第2世代携帯電話サービス「シティフォン」（関西地区は「シティオ」）について、その歴史、特徴、そしてサービス終了に至るまでの経緯を詳細に解説します。

サービス開始と背景

1994年4月、当時三大都市圏で利用者が急増し、800MHz帯のデジタル・ムーバの回線が逼迫していたことを背景に、新たな周波数帯として1.5GHz帯を用いたシティフォンサービスが開始されました。サービスエリアは三大都市圏の都市部（一部地域を除く）に限定され、デジタル・ムーバに比べて基本料金と通話料金を低価格に設定することで、若年層を中心としたライトユーザーの獲得を目指しました。

サービスの特徴と制約

シティフォンは800MHz帯のデジタル・ムーバとは独立したサービスでした。そのため、当初はシティフォン専用の携帯電話が発売されました。デジタル・ムーバと比較して音質は良好でしたが、電波の届きにくさや、ハンドオーバー時の途切れやすさが課題でした。また、データ通信は回線交換式のみで、当時普及しつつあったパケット通信には対応していませんでした。このため、iモードのようなデータ通信サービスは提供されず、通話とショートメール（153シリーズ以降対応）が主な機能でした。

サービスエリアが三大都市圏の都市部に限定されていたことも、加入者数の伸び悩みに繋がりました。他の1.5GHz帯携帯電話サービスとのローミングも無かったため、サービスエリア外では全く利用できませんでした。また、翌1995年にはPHSが登場し、エリアが広く料金も安価なPHSにユーザーが流れたことも、シティフォンの普及を妨げる要因となりました。

デュアルバンド化とサービス終了

シティフォンの低迷を受け、2001年秋以降発売されたmova端末には、800MHz帯の回線が混雑した場合に1.5GHz帯のシティフォン基地局に自動的に切り替わるデュアルバンド機能が搭載されました。これにより、シティフォン回線の有効活用が図られるようになりましたが、2000年発売のP158がシティフォン単体対応機種としては最後の機種となりました。新規加入の受付は2004年9月末に終了し、2008年6月30日にサービスは終了しました。サービス終了時点での契約者数は約6,700件でした。1.5GHz帯の周波数帯域は総務省によって2008年9月30日を期限とされており、FOMAへの移行、mova回線の余裕も相まって、シティフォンサービスは停波となりました。

料金プランと移行策

シティフォンはmovaに比べて料金プランが安価に設定されていましたが、無料通話分は少なく、サービスエリアの制約がありました。サービス終了時には、プランA、プランC、プランD、長得プラン、おはなしプラスSの5つの料金プランが提供されていました。サービス終了に伴い、FOMAへの移行策として、FOMA全機種の無料提供と事務手数料無料化が実施されました。

まとめ

シティフォン/シティオは、日本の携帯電話サービスの歴史において、特定の地域に焦点を当てたサービス展開を試みた事例として注目に値します。その成功と失敗から得られた教訓は、後の携帯電話サービスの進化に貢献したと言えるでしょう。 技術的な制約や市場環境の変化の中で、サービスを維持することが難しくなった結果、サービス終了に至ったことは、通信事業のダイナミズムを象徴する出来事でした。

もう一度検索