シトロエン・C3 WRC

シトロエンC3 WRC：WRC参戦の歴史と栄光、そしてその影

シトロエンC3 WRCは、世界ラリー選手権（WRC）参戦のためにシトロエンが開発したワールドラリーカーです。シトロエン初の5ドアモデルをベースとしたマシンであり、2017年シーズンからWRCの舞台に登場しました。2015年シーズン終了後、シトロエンはWRCからの撤退を表明し、次世代WRカーであるC3 WRCの開発に全力を注ぎ込みました。

開発期間中は、先行モデルであるDS3 WRCを用いたスポット参戦や、世界ツーリングカー選手権に参戦していたC-エリーゼWTCCを用いたテストを繰り返しました。2017年シーズン開幕に合わせてデビューを果たしたC3 WRCは、C-エリーゼとは異なる、完全新設計のエンジンを搭載。フロントサスペンションの改良により、DS3 WRCの弱点であった短いホイールトラベルを克服しました。ダンパーは、C4 WRCから続くシトロエン・レーシングの内製です。

駆動配分については、後輪寄りのセッティングが特徴的でした。これは、当時主流であった前輪寄りの配分とは異なり、ドライなターマック路面でのパフォーマンスに優れると考えられていましたが、実際にはグラベルや混合路面での勝利が多く、純粋なターマックラリーでの優勝は達成できませんでした。

車両の性能は高く、ミークやローブ、オジェといったトップドライバーたちが短期間で勝利を収めています。しかし、慢性的な資金不足がチームを悩ませ、開発速度の遅れはドライバーの移籍という結果に繋がりました。

戦歴と苦難の道

2017年シーズンは、クリス・ミーク、クレイグ・ブリーン、ステファン・ルフェーブルの3台体制で参戦。ミークはラリー・メキシコとラリー・カタルーニャで優勝を飾りましたが、チーム全体としては安定性に欠け、マニュファクチャラーズ選手権では最下位に終わりました。シーズン中盤には、テクニカルディレクターの交代もありました。

2018年シーズンは、ルフェーブルの解雇やミークの事実上の解雇など、チームは大きな混乱に見舞われます。ミークの事故による離脱は、チームの士気を大きく損ないました。エース不在の中で、セバスチャン・ローブが復帰し、ラリー・カタルーニャで優勝。WRC史上最多となる79勝目を挙げ、チームに活気を与えました。しかし、チーム全体の成績は低迷しました。

2019年シーズンは、セバスチャン・オジェとエサペッカ・ラッピという強力なドライバー陣を迎え入れました。オジェはラリー・モンテカルロで優勝し、シトロエンのWRC通算100勝目を達成。シーズン中盤まではタイトル争いをリードしましたが、最終的にオット・タナクに敗れ、オジェの連覇は6でストップしました。このシーズンには、タイトルスポンサーの撤退や、プジョーのル・マン復帰計画発表によるシトロエンのWRC撤退発表など、大きな出来事が相次ぎました。シトロエンの撤退発表は、オジェの離脱を理由とするものと受け取られ、物議を醸しました。

シトロエンはWRCからは撤退しましたが、グループラリー規定のカスタマー向けマシンの開発・販売は継続しており、現在もC3 Rally2車両がWRC2クラスに参戦しています。

C3 WRCは、資金難やチーム運営上の問題、そしてドライバーの移籍という困難な状況の中でも、多くの勝利と記録を達成した、シトロエンの歴史に刻まれた重要なWRカーと言えるでしょう。その活躍は、WRCの歴史に彩りを添えています。

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