シトロエン・ZX

シトロエン ZX：時代を彩った個性派ハッチバック

シトロエン ZXは、1991年から1997年にかけてフランスの自動車メーカー、シトロエンによって製造された乗用車です。GSの後継モデルであるBXと、小型車AXとの間のギャップを埋める役割を担い、当時のシトロエンのラインナップを強化しました。

開発の背景と概要

1982年に登場したBXは、GSの後継として一定の成功を収めましたが、より大型化したため、GSの顧客層を全てカバーすることはできませんでした。また、エントリーモデルであるAXとの間には、大きな車格の差が存在していました。この空白を埋めるために開発されたのがZXです。

プジョー・306とはプラットフォームを共有しており、5ドアハッチバックを基本形として、後に3ドアハッチバック（クーペ）やステーションワゴン（ブレーク）が追加されました。スタイリングは、当時関係の深かったイタリアのデザイン会社ベルトーネが担当し、最終的な調整はシトロエン社内デザインセンターが行いました。特に、ブレークのリア周りはベルトーネのデザインが色濃く反映されています。

ボディサイズは全長4,070mm、全幅1,700mm、全高1,404mm、ホイールベース2,540mm。エンジンは1.1Lから2.0Lまでのガソリンエンジンと、1.9Lのディーゼルエンジンが用意され、シトロエン伝統の前輪駆動方式が採用されました。

サスペンションは、前輪がマクファーソンストラット、後輪がトーションバー式フルトレーリングアームという構成で、GSのようなハイドロニューマチックは採用されませんでした。しかし、セルフステアリング・リアアクスルと呼ばれる、旋回時の横Gに応じて後輪をわずかに操舵する機構が採用され、安定したハンドリングに貢献しました。

1995年にはフロントグリルの形状変更など、小規模な改良が加えられましたが、1997年に後継モデルであるクサラが登場し、ZXの生産は終了しました。

中国での展開

ZXは、PSAグループと中国の合弁会社である神龍汽車（東風プジョー・シトロエン）によって、中国でも生産されました。タクシーなどにも広く使用され、中国市場専用のノッチバック版であるエリゼーも投入されました。

日本での販売

日本では、正規輸入代理店であったユーノスと西武自動車販売が、1992年から5ドアモデルのクラブ（1.6L）とシュペール（1.9L）の輸入を開始しました。1994年にはクーペ（1.8L）が追加され、クラブは1.8Lへ、シュペールは2.0Lへと排気量がアップされました。1995年にはブレーク（1.8L）も追加されています。

1996年にユーノスが消滅した後は、西武自動車販売のみが輸入を継続し、クラブ、クーペ、ブレークの3タイプ全てが1.8Lエンジンを搭載するようになりました。クサラの輸入が開始される1998年まで販売されました。

モータースポーツでの活躍

シトロエンは、プジョーがラリーレイドから撤退した後を受け、1991年からパリ-ダカールラリー（パリダカ）にワークス参戦しました。参戦車両はZXラリーレイドと名付けられ、市販車ZXを宣伝する役割を担いました。しかし、その中身はプジョー・205T16 グランレイドを進化させたもので、鋼鉄製パイプフレーム製シャシー、ミッドシップエンジン、四輪駆動という、T3（プロトタイプカテゴリー）に属する本格的なマシンでした。

330馬力を発生する2.0リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載し、アリ・バタネンやピエール・ラルティーグといった名ドライバーによって、1991年、1994年、1995年、1996年と、パリダカで4度の優勝を飾りました。また、FIAクロスカントリー[[ラリー・ワールドカップ]]のマニュファクチャラー部門では、1993年から1997年まで5連覇を達成。通算42戦36勝という圧倒的な成績を収めました。

しかし、FIAは高速化を抑制するため、1998年にT3クラスのメーカー参戦を禁止し、ZXラリーレイドの活動は終止符を打たれました。

ラリーでは、90年代にグループA規定やF2キットカー規定の下で改造され、フランス国内選手権で使用されました。

シトロエンZXは、その個性的なデザインと、モータースポーツでの輝かしい活躍によって、時代を彩った一台として記憶されています。

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