シナノユキマス

シナノユキマス（信濃雪鱒）

シナノユキマス（学名: Coregonus maraena）は、サケ科シロマス属に分類される魚類で、ヨーロッパ原産です。シロマス属のタイプ種であるホワイトフィッシュ C. lavaretus の近縁種とされています。ロシア語では「マレーナ」と呼ばれます。

各地での呼び名

キタノユキマス（北海道）
白鱒（秋田県）
会津ユキマス（福島県）
ヒメノウオ（愛媛県）

概要

サケ科の魚としては鱗が大きく、取れやすいのが特徴です。一尾あたりの卵数は約1万5000粒で、卵の直径は約2mmとワカサギと同程度です。11月から12月頃に産卵し、約3ヶ月で孵化します。孵化に適した水温は6℃以下です。

成長は比較的早く、1年で80-100g、2年で150-490g、3年で450-800g（全長約40cm）に成長し、2〜3年で成熟して産卵可能になります。孵化直後から餌が必要で、2週間絶食すると、その後の成長に影響が出て斃死することがあります。

分布・生態

シナノユキマスは湖沼性の魚で、22-23℃以下の低水温を好みます。体色は、体側から腹部にかけて銀白色、頭部から背部にかけて青みを帯びた暗灰色をしています。天然魚は、東ヨーロッパ、シベリア、北アメリカなどの北緯50度以北の地域に分布しています。汽水域でも生息可能で、ボスニア湾、バルト海、フィンランド湾などにも生息しています。

餌はミジンコなどの動物性プランクトンで、成長すると底生動物や小魚も食べるようになります。

人間との関わり

養殖

受精卵は、ビン型孵化器と呼ばれる特殊な容器で育成されます。育成期間中は、死んだ卵を随時除去する必要があります。孵化後は、すぐにプランクトンが豊富な養殖池に移されます。養殖時の餌は、ワムシ類、アルテミア幼生、または専用の人工飼料が使用されます。

養殖の歴史

1926年：北米産の近縁種が琵琶湖に移植されるも、増殖に失敗
1969年：青森県がソ連から近縁種オームリの卵を入手し養殖を試みるも失敗
1975年：長野県水産試験場佐久支場がチェコスロバキアからペレッドの卵を導入し、世界で初めて事業規模での完全養殖技術を開発
1978年：採卵規模が拡大するも、当初の発眼率は低かったが、試行錯誤の結果、ビン型孵化器の開発と育成条件の確立により養殖の見込みが立つ
1983年：長野県知事により「シナノユキマス」と命名され、養殖業者向けの種苗稚魚の出荷が開始。ペレッドの稚魚および発眼卵が全国各地の水産試験場に送られる
2000年：孵化管理のしやすいマレーナを主体とする採卵に移行

遊漁（釣り）

1984年から1985年にかけて、女神湖でワカサギへの影響を調査する目的で放流試験が行われました。1987年には漁業権が設定され、長野県内の湖沼（立岩湖、柳久保池、青木湖、松原湖、白樺湖など）に放流され、増殖放流種苗として利用されるようになりました。結氷した湖では、穴釣りも行われます。

料理

シナノユキマスの肉質は白身で、淡泊な味わいが特徴です。淡水魚特有の生臭さがなく、適度に脂がのり、小骨も少ないため、刺身、から揚げ、フライなど様々な料理に利用できます。ただし、生食用は鮮度保持が難しいため、流通が限られています。

主な料理

刺身
焼き魚
燻製
卵（ゴールデンキャビア）

JR中央本線・小海線小淵沢駅では、駅弁として「信濃雪鱒の押し寿司」（丸政）が販売されています。

参考画像

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参考文献

長野県水産試験場「シナノユキマス物語－コレゴヌス養殖技術開発の記録」
長野県水産試験場「シナノユキマスの利用／水産試験場」
国立環境研究所「シナノユキマス」

関連項目

オームリ
* ホワイトフィッシュ

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