シホテアリニ山脈中央部

シホテアリニ山脈中央部：生物多様性のホットスポット

シホテアリニ山脈中央部は、ロシア南東部の沿海地方に位置し、その豊かな生物多様性からユネスコの世界遺産に登録されています。この地域は、北方林と温帯林が交わる特異な環境にあり、多種多様な動植物が生息する、まさに生物多様性のホットスポットです。2001年に最初の登録が行われ、その後2018年にはビキン川流域が範囲に加わり、登録範囲が拡大されました。

世界遺産としての登録

世界遺産としての正式名称は、英語で「Central Sikhote-Alin」、フランス語で「Sikhote-Aline central」です。日本語では、「シホテ-アリン山脈中央部」や「中央シホテ-アリン」などと表記されます。2018年の拡大登録後、「ビキン川渓谷」に変更されたという文献もありますが、公式サイトでは変更されていません。

登録の経緯

シホテアリニ山脈南部には、1935年にシホテアリニ自然保護区が設定され、1978年にはユネスコの生物圏保護区にもなりました。2001年、シホテアリニ自然保護区の一部とゴラリ動植物保護地域が「シホテアリニ山脈中央部」として世界遺産に登録されました。当初、より北方のビキン川渓谷も推薦されていましたが、保護体制の問題から登録が見送られました。その後、ロシア政府は2015年にビキン国立公園を設立し、2018年にビキン川流域を世界遺産に追加登録することに成功しました。

登録範囲とIUCNカテゴリー

登録されている保護区は以下の通りです。

シホテアリニ自然保護区: 401,428ha、IUCNカテゴリーIa
ビキン国立公園: 1160,000ha、IUCNカテゴリーII
ゴラリ動植物保護地域: 4,749 ha、IUCNカテゴリーIV

生物相

シホテアリニ山脈中央部には、約1200種の維管束植物が生育しています。ハルニレ、モンゴリナラ、ダケカンバ、ハイマツ、グイマツ、エゾマツ、ケナシハクサンシャクナゲ、イチイなどが代表的な植物です。動物相は、北方系のオオヤマネコやヒグマ、南方系のトラやツキノワグマの両方が見られます。哺乳類52種、鳥類241種、両生類7種、爬虫類10種、淡水魚48種が生息しており、その多様性は特筆すべきです。

IUCNレッドリストにおけるカテゴリーは以下の通りです（2018年時点）。

絶滅危惧種: アムールトラ、コウライアイサ、シマフクロウ
危急種: シベリアジャコウジカ、ツキノワグマ、ナベヅル、スッポン
近危急種: ユーラシアカワウソ
低危険種: クズリ、オオヤマネコ、イノシシ、ノロジカ、ミサゴ、ナベコウ、サシバ

また、マンシュウアカシカ、クロテン、オナガゴーラル、タンチョウなども生息しています。

先住民と自然

一帯には、ウデゲ族、ナナイ族、オロチ族といった先住民が暮らしており、彼らの文化は森林と深く結びついています。しかし、商業伐採、鉱物採掘、毛皮取引のための狩猟、飼育されていたミンクの野生化などが、生態系に悪影響を与えてきました。自然保護と持続可能な開発の両立が重要な課題となっています。

登録基準

シホテアリニ山脈中央部は、世界遺産の登録基準(10)を満たしています。

(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

この地域は、絶滅危惧種を含む多様な動植物の生息地として、その普遍的な価値が認められました。

まとめ

シホテアリニ山脈中央部は、生物多様性の宝庫であり、貴重な生態系を保護するための重要な地域です。この場所が今後も、持続可能な形で保全されることが期待されます。

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