シャリテー

シャリテー – ベルリン医科大学

シャリテー（Charité – Universitätsmedizin Berlin）は、ヨーロッパ最大級の大学病院であり、フンボルト大学およびベルリン自由大学と提携しています。ドイツ研究振興協会の多数の共同研究センターを擁する研究集約型の医療機関であり、その医学研究と臨床の卓越性で世界的に知られています。2019年にはニューズウィーク誌によって、世界で5番目に優れた病院、ヨーロッパでは最高の病院と評価されました。

生理学・医学分野でノーベル賞を受賞したドイツ人の半数以上がシャリテーで研究や臨床に携わっており、エミール・アドルフ・フォン・ベーリング、ロベルト・コッホ、パウル・エールリヒといった著名な科学者が名を連ねます。また、アンゲラ・メルケル首相やユリア・ティモシェンコ元首相など、政治家や外交官も治療を受けています。2010/2011年にはフンボルト大学とベルリン自由大学の医学部がシャリテーの傘下で統合され、医療教育の中心としての役割をさらに強固なものとしました。

沿革

シャリテーの歴史は1710年に、プロイセン王フリードリヒ1世がベルリンの城壁北側に病院を建設したことに始まります。当初は腺ペストの流行を想定していましたが、流行収束後は貧しい人々のための慈善病院として使われるようになりました。1727年にはフリードリヒ・ヴィルヘルム1世によって「慈善」を意味する「シャリテー」という名前が与えられました。

医学部の起源は1713年に建設された解剖劇場に遡ります。その後、プロイセン科学アカデミーの監督下に入り、医学研究の拠点として発展しました。19世紀には、ベルリン大学（現フンボルト大学）の医学部長であったクリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラントが、1828年にシャリテーを教育病院として統合しました。この時期には、近代病理学の父として知られるルドルフ・フィルヒョウ、結核菌を発見したロベルト・コッホ、ジフテリアの解毒剤を発見したエミール・アドルフ・フォン・ベーリングなど、医学史に名を刻む多くの先駆者たちが活躍しました。

20世紀に入ると、第二次世界大戦中にはベルリンの戦火に耐えましたが、1945年にベルリンは赤軍に占領され、病院も赤軍病院として使用されました。戦後の混乱期を経て、シャリテーは東ドイツの一部となり、冷戦時代には東側の宣伝材料として利用された時期もありました。しかし、1990年のドイツ統一後、シャリテーは再び世界をリードする研究・教育機関としての地位を取り戻しました。

組織

シャリテーはベルリン市内に4つのキャンパスを持っています。

キャンパス・シャリテー・ミッテ (CCM): ベルリンのミッテ地区
キャンパス・ベンジャミン・フランクリン (CBF): ベルリンのリヒターフェルデ地区
キャンパス・フィルヒョウ・クリニクム (CVK): ベルリンのヴェディング地区
キャンパス・ベルリン・ブーフ (CBB): ベルリンのブーフ地区

100以上の診療所と科学研究所から構成され、17の「シャリテーセンター」（CC）と呼ばれる部門で組織されています。これらのセンターは、基礎科学から臨床医学、がん研究、神経科学など、幅広い分野を網羅しています。

17のシャリテーセンターは以下の通りです:

CC 1: 健康と人間科学
CC 2: 基礎科学 (1年次)
CC 3: 歯科、口腔、上顎医学
CC 4: セラピー研究のシャリテーBIH センター
CC 5: 診断検査と予防医学
CC 6: 診断と介入放射線医学及び核医学
CC 7: 麻酔学、手術室管理、集中治療医学
CC 8: 手術
CC 9: 外傷学と再建医学
CC 10: シャリテー総合がんセンター
CC 11: 心臓血管疾患
CC 12: 内科と皮膚科
CC 13: 内科、消化器内科、腎臓内科
CC 14: 腫瘍医学
CC 15: 神経科、脳神経外科、精神科
CC 16: 聴覚学/フォニアトリクス、眼科、耳鼻咽喉科
CC 17: 婦人科、周産期、小児・青年期医学、周産期センター及び遺伝学

これらのうち13のセンターは患者の治療に重点を置いていますが、残りの部門は研究と教育に注力しています。

また、シャリテーには「ベルリン医学史博物館」があり、1899年までの歴史を展示しています。この博物館は、特に病理学と解剖学のコレクションが有名です。

著名な人物

シャリテーは、数々の著名な医師や科学者を輩出してきました。ドイツのノーベル生理学・医学賞受賞者の半数以上がシャリテー出身者であり、その実績は世界的に高く評価されています。

シャリテーにゆかりのある著名な人物の一部を以下に示します。

セルマー・アッシュハイム（婦人科医）
ハインリヒ・アドルフ・フォン・バルデレーベン（外科医）
エルンスト・フォン・ベルクマン（外科医）
アウグスト・ビアー（外科医）
マックス・ビールショウスキー（神経病理学者）
テオドール・ビルロート（外科医）
オットー・ビンスワンガー（精神科医、神経科医）
カール・ボンヘッファー（神経科医）
ハンス・ゲルハルト・クロイツフェルト（神経科医、神経病理学者）
ヨハン・フリードリヒ・ディーフェンバッハ（外科医）
クリスティアン・ドロステン（ウイルス学者）
フリードリヒ・テオドール・フォン・フレリヒス（病理学者）
ロバート・フロリエプ（解剖学者）
ヴィルヘルム・グリージンガー（精神科医、神経科医）
ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ（医師、物理学者）
ヨアヒム・フリードリヒ・ヘンケル（外科医）
ヤーコプ・ヘンレ（医師、病理学者、解剖学者）
エドゥアルト・ハインリヒ・ヘノッホ（小児科医）
オットー・ホイブナー（小児科医）
ラーヘル・ヒルシュ（プロイセンで最初の女性医学教授）
エーリヒ・ホフマン（皮膚科医）
アントン・ルートヴィヒ・エルンスト・ホルン（精神科医）
ゲロ・ヒュッター（血液学者）
フリードリヒ・ヨリー（神経科医、精神科医）
フリードリヒ・クラウス（内科専門医）
ベルンハルト・フォン・ランゲンベック（外科医）
カール・レオンハルト（精神科医）
フーゴ・カール・リープマン（神経科医、精神科医）
レオノール・ミカエリス（生化学者、医師）
ヘルマン・オッペンハイム（神経科医）
サミュエル・ミチャ・ラポポート（生化学者、医師）
モーリッツ・ハインリヒ・ロンベルク（神経科医）
フェルディナント・ザウアーブルッフ（外科医）
クルト・シメルブッシュ（医師、病理学者）
ヨハン・ルーカス・シェーンライン（医師、病理学者）
テオドール・シュワン（動物学者）
ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・フィルヒョウ（医師、細胞理論および近代病理学の創始者）
ルートヴィヒ・トラウベ（医師、病理学者）
カール・フリードリヒ・オットー・ヴェストファル（神経学者、精神科医）
カール・ヴェルニッケ（神経学者）
アウグスト・フォン・ワッセルマン（細菌学者）
カスパー・ヴォルフ（生理学者）
ベルンハルト・ゾンデク（内分泌学者）

ノーベル賞受賞者

シャリテーに関連するノーベル賞受賞者は以下の通りです。

エミール・アドルフ・フォン・ベーリング（生理学・医学賞、1901年）
エルンスト・ボリス・チェーン（生理学・医学賞、1945年）
パウル・エールリヒ（生理学・医学賞、1908年）
エミール・フィッシャー（化学賞、1902年）
ヴェルナー・フォルスマン（生理学・医学賞、1956年）
ロベルト・コッホ（生理学・医学賞、1905年）
アルブレヒト・コッセル（生理学・医学賞、1910年）
ハンス・クレブス（生理学・医学賞、1953年）
フリッツ・アルベルト・リップマン（生理学・医学賞、1953年）
ハンス・シュペーマン（生理学・医学賞、1935年）
オットー・ワールブルク（生理学・医学賞、1931年）

医学部

2003年、ベルリン市と州の下院は、フンボルト大学とベルリン自由大学の医学部をシャリテー傘下に統合する暫定法を可決しました。2010/2011年の学期から、すべての新入生は6年間の医療課程プログラムに登録しています。シャリテー医学部は、ハイデルベルク大学医学部とともに、ドイツで最も競争力のある医学部の1つです。全学生の3.17%はドイツ学術奨学基金から支援を受けており、これはドイツの公立大学の中で最も高い割合です。

シャリテー医学部の学生に提供されるエラスムス計画の交換プログラムには、72の大学が含まれており、ヨーロッパ最大規模を誇ります。学生は、カロリンスカ研究所、コペンハーゲン大学、ソルボンヌ大学、ローマ・ラ・サピエンツァ大学、アムステルダム大学、チューリッヒ大学などの海外大学で最長1年間学ぶことができます。

また、シャリテーは研究プロジェクトへの参加や論文執筆、提携する社会プロジェクトへの参加も推奨しています。

2019年にはベルリン保健研究所がシャリテーの一部となり、連邦政府から直接財政支援を受ける最初の大学病院となりました。この資金は、ベルリン州の資金調達や民間からの寄付と合わせて、シャリテーの研究のための重要な財源となっています。さらに、シャリテーが参加しているベルリン大学協定は、2019年にドイツ大学エクセレンス・イニシアティブからの資金提供を受けています。

国際提携大学

シャリテーは、世界各地の有名大学と提携関係を結んでいます。

英国: オックスフォード大学
英国: ロンドン大学衛生熱帯医学大学院
米国: ジョンズ・ホプキンス大学医学部
米国: ノースウェスタン大学医学部
カナダ: モントリオール大学
オーストラリア: モナシュ大学
日本: 千葉大学
日本: 埼玉医科大学
ブラジル: サンパウロ大学
中国: 同済大学 (上海)
中国: 同済医科大学 (武漢)

アインシュタイン財団

シャリテーは、ベルリン市とベルリン州が2009年に設立したアインシュタイン財団の主要パートナーの一つです。この財団は、世界的に活躍する研究者をベルリンに招くことを目的としています。

主な研究員として以下のような人物が挙げられます。

トーマス・スードフ（生化学者、ノーベル生理学・医学賞、2013年）
ブライアン・コビルカ（化学者、ノーベル化学賞、2012年）
エドバルド・モーセル（神経科学者、ノーベル生理学・医学賞、2014年）

テレビドラマ

ドイツでは、シャリテーを舞台にしたテレビドラマシリーズが制作されています。このドラマは、病院の歴史や医療現場を描いています。

脚注

シャリテーウェブサイト

外部リンク

* Charité website

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