シャルル・デュラン

シャルル・デュラン：フランス演劇界の巨匠

シャルル・デュラン（Charles Dullin, 1885年5月8日 - 1949年12月11日）は、20世紀前半のフランス演劇界を牽引した演出家、劇団主宰者、そして俳優です。彼が育てたアントナン・アルトー、アンドレ・バルサック、ジャン＝ルイ・バロー、ジャン・ヴィラール、ジャン・マレーらは、後に演劇界を担う存在となりました。また、アンリ＝ジョルジュ・クルーゾー監督の映画『犯罪河岸』への出演でも知られています。

生涯

デュランは、サヴォワ県イェンヌで、貧しい判事の息子として生まれました。神学校での生活に馴染めず中退後、リヨンで働いたのち、1904年にパリへ。そこで彼は、場末の芝居に出演したり、酒場で詩の朗読などを行いました。

1906年、21歳でオデオン座に入団しますが、なかなか芽が出ませんでした。1908年には、アルベール・デュラック（ジェルメーヌ・デュラックの夫）と劇団を創設するも、挫折。しかし、1911年、芸術劇場（Théâtre des Arts）のジャック・ルーシェが上演した『カラマーゾフの兄弟』（ジャック・コポー脚色）で、スメルジャコフ役に起用されたことが転機となり、劇界で頭角を現し始めました。

1913年、ジャック・コポーが創立したヴィユ・コロンビエ座に参加。第一次世界大戦では歩兵として従軍しましたが、1917年に軍務を解かれ、ニューヨークで公演中のコポー一座に合流。しかし、コポーとの意見の相違から1918年に解雇され帰国。フィルマン・ジェミエのコメディ・モンテーニュ（後のコメディ・シャンゼリゼ）の演劇学校に迎えられました。

1921年、36歳でモンマルトルにアトリエ座を組織し、ルイジ・ピランデルロの『名誉の悦び』で開場。1924年には、ベン・ジョンソン作、シュテファン・ツヴァイクとジュール・ロマン脚色の『ヴォルポーヌ』が大成功を収めました。

1927年、ルイ・ジューヴェ、ジョルユ・ピトエフ、ガストン・バティと共に、四座カルテル（Le Cartel de Quatre）を結成し、1940年の敗戦まで共同で活動しました。1931年には、ジャン＝ルイ・バローを迎え入れています。

1936年、コメディ・フランセーズの改革を目指す総支配人エドワール・ブールデに、コポー、ジューヴェ、バティと共に客演演出家を委嘱され、翌年、同座でピランデルロの『各人各説』、モリエールの『ジョルジュ・ダンダン』、ボーマルシェの『フィガロの結婚』を演出しました。

1940年、アトリエ座をアンドレ・バルサックに譲り、パリ劇場を経て、1941年、ナチス占領下の市立劇場（Théâtre de la Cité）の支配人となりました。

1943年に軽い脳卒中を起こしましたが、1949年まで演劇活動を続け、巡業も行いました。その後、膵臓癌で衰弱し、パリの病院で亡くなりました。彼の遺体は、セーヌ＝エ＝マルヌ県の墓地に埋葬されています。

舞台と映画

デュランは、生涯で数多くの舞台作品を手がけました。主な作品には、ピランデルロの『名誉の悦び』、『各人各説』、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』、『リチャード3世』、アリストパネスの『鳥』、『平和』などがあります。また、約16本の映画にも出演しました。

日本で公開された映画としては、『狼の奇蹟』（1924年製作、1926年日本公開）、『レ・ミゼラブル』（1933年製作、1938年日本公開）、『犯罪河岸』（1947年製作、1949年日本公開）、『賭はなされた』（1947年製作、1951年日本公開）などがあります。

シャルル・デュランの遺産

シャルル・デュランは、フランス演劇界に多大な影響を与えた人物として、今もなお高く評価されています。彼のアトリエ座は、実験的な演劇の拠点として、多くの才能を輩出しました。また、彼の演劇に対する情熱と革新的な試みは、後世の演劇家たちに大きな影響を与え続けています。

参考文献
岩瀬孝ほか：フランス演劇史概説（増補版）、早稲田大学出版部（1995） ISBN 9784657954206
渡辺淳：パリ・開幕、丸善ブックス072（1998）ISBN 9784621060728
中田耕治：ルイ・ジュヴェとその時代、作品社 （2000） ISBN 9784878933530
川島順平：現代のフランス演劇、カルチャー出版社（1954）

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