シュツルンツ分類

シュツルンツ分類：鉱物の化学組成に基づく体系的な分類

シュツルンツ分類は、鉱物の化学組成、特に陰イオンの種類を基準として鉱物を分類する体系です。ドイツの鉱物学者カール・フーゴ・シュツルンツが1941年に発表した『Mineralogische Tabellen』（鉱物学表）で初めて提案され、その後も改訂を重ね、現在に至っています。この分類は、鉱物学において世界的に広く用いられており、国際鉱物学連合（IMA）の新規鉱物命名分類委員会（CNMNC）もその有用性を認めています。

分類の枠組み

シュツルンツ分類では、鉱物を大きく10のクラス（族）に分類します。それぞれのクラスは、特定の化学的性質を持つ鉱物を集めたものです。例えば、硫化鉱物クラスには、閃亜鉛鉱（ZnS）や黄銅鉱（CuFeS₂）といった硫黄を含む鉱物が含まれます。

具体的なクラスは以下のとおりです。

1. 元素鉱物: 金、ダイヤモンドなど、単一の元素から構成される鉱物。
2. 硫化鉱物: 閃亜鉛鉱、黄鉄鉱など、硫黄と金属元素からなる鉱物。セレン化物、テルル化物なども含まれます。
3. ハロゲン化鉱物: 蛍石、岩塩など、ハロゲン元素（フッ素、塩素、臭素、ヨウ素）と金属元素からなる鉱物。
4. 酸化鉱物: 磁鉄鉱、コランダムなど、酸素と金属元素からなる鉱物。水酸化鉱物、亜砒酸塩鉱物なども含まれます。
5. 炭酸塩鉱物: 方解石、ドロマイトなど、炭酸イオンを含む鉱物。硝酸塩鉱物も含まれます。
6. 硼酸塩鉱物: ホウ砂、トルマリンなど、ホウ素を含む鉱物。
7. 硫酸塩鉱物: 石膏、重晶石など、硫酸イオンを含む鉱物。セレン酸塩、テルル酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩なども含まれます。
8. リン酸塩鉱物: アパタイト、トルコ石など、リン酸イオンを含む鉱物。砒酸塩、バナジン酸塩なども含まれます。
9. ケイ酸塩鉱物: 長石、石英など、ケイ素と酸素からなるケイ酸イオンを含む鉱物。これは鉱物の中で最も種類が多いグループです。さらに、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩、層状ケイ酸塩、骨格状ケイ酸塩など、ケイ酸イオンの結合様式に基づいた細かな分類がなされています。
10. 有機鉱物: 蜜蝋石、カルパチア石など、有機物から構成される鉱物。

シュツルンツ分類の改訂と発展

シュツルンツ分類は、初版の発表以来、多くの改訂を経てきました。特に、アーネスト・ヘンリー・ニコルとの共同作業による改訂版（ニコル・シュツルンツ分類）は、鉱物学において重要な役割を果たしています。この分類は、Mindat.orgなどのオンラインデータベースでも利用されており、国際的な標準として広く認識されています。

シュツルンツ分類の詳細

各クラスはさらに門、科、群、そして種といった階層的な分類に細分化されています。例えば、閃亜鉛鉱は、硫化鉱物クラスに属し、更にその中の亜鉛・鉄・銅・銀などの硫化鉱物に分類されます。このように詳細な分類により、鉱物の化学組成や結晶構造に関する情報を網羅的に示すことができます。

シュツルンツ分類は、鉱物の体系的な理解、分類、そして研究に不可欠なツールであり、今後も鉱物学の発展に貢献していくでしょう。

参考文献

Strunz, Hugo; Nickel, Ernest H. (2001). Strunz Mineralogical Tables (9 ed.). Stuttgart: Schweizerbart. pp. 869. ISBN 978-3510651887
関連する日本の地質調査総合センターの発表論文など。

もう一度検索