シュリアノス

シュリアノス：アテナイ・アカデメイアの学頭と新プラトン主義

シュリアノス（437年没）は、5世紀の東ローマ帝国において活躍した著名な新プラトン主義哲学者です。彼はアテナイのアカデメイア学頭として、その隆盛に大きく貢献しました。プルタルコスの後任、プロクロスの前任という重要な位置を占め、新プラトン主義の思想発展に多大な影響を与えた人物と言えるでしょう。

生涯とアカデメイア

アレクサンドリア出身のシュリアノスは、若き日に同地で修辞学と哲学を学びました。その後、アテナイに移住し、415年のヒュパティア殺害や425年のコンスタンティノープル大学設立といった激動の時代の中、異教の学問を追求し続けました。

430年頃、アテナイに移住してきた若きプロクロスをアカデメイアに迎え入れ、師であるプルタルコスに紹介しました。その後、432年頃にプルタルコスが亡くなると、シュリアノスはアカデメイアの学頭を引き継ぎました。学頭在任中は、新プラトン主義の中心地としてアカデメイアを維持し、後世に大きな影響を与えるプロクロスを育成する役割を果たしました。

シュリアノスは、プロクロスにアリストテレスとプラトンの全著作を教授しました。特に、アリストテレスの著作は「小秘儀」、プラトンの著作は「大秘儀」として、アカデメイアにおける高度な教育課程において重要な位置を占めていたと推測されます。

シュリアノスとプロクロスの関係は師弟関係を超えて深く、プロクロスはシュリアノスと同じリュカベットス山麓の墓所に埋葬されました。また、ダマスキオスの『イシドロス伝』によると、シュリアノスは容姿端麗で博識な人物だったと伝えられています。彼の弟子であったヘルメイアスとその妻アイデシアは、それぞれシュリアノスの弟子と親戚関係にあったとされています。

著作と遺産

シュリアノスは多くの著作を残しました。現存しているのは、アリストテレスの『形而上学』の注釈、修辞学者タルソスのヘルモゲネスの著作の注釈（「ソフィストのシュリアノス」名義）、そしてヘルメイアスを通じて伝わったプラトンの『パイドロス』講義です。他にも、アリストテレスやプラトンの諸著作に関する注釈が多数存在したと推測されますが、残念ながら散逸してしまっています。

彼の注釈は、古代におけるアリストテレスとプラトンの解釈を理解する上で非常に貴重な資料であり、後世の新プラトン主義や哲学研究に多大な影響を与えました。

シュリアノスの著作は、新プラトン主義の思想体系や、古代ギリシャ哲学の解釈方法を理解する上で重要な手がかりを提供するものです。彼のアカデメイアにおける教育活動、そしてプロクロスへの影響を通して、シュリアノスは新プラトン主義の黄金時代を築き上げる上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。彼の研究は、現代においても哲学史研究において高く評価されています。

参考文献

國方栄二 著「ダマスキオス」、水地宗明; 山口義久; 堀江聡 編『新プラトン主義を学ぶ人のために』世界思想社〈学ぶ人のために〉、2014年。
廣川洋一『プラトンの学園アカデメイア』岩波書店、1980年。※講談社〈講談社学術文庫〉1999年。
* 堀江聡; 西村洋平 著「プロクロス」、水地宗明; 山口義久; 堀江聡 編『新プラトン主義を学ぶ人のために』世界思想社〈学ぶ人のために〉、2014年。

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