シリアの歴史

シリアの歴史：古代から現代までの変遷

シリアは、世界最古の文明発祥地の一つであり、その歴史は紀元前数千年にも遡ります。肥沃な三日月地帯に位置するシリアは、古くから農耕と交易の中心地として栄え、数々の文明が興亡を繰り返した地でもあります。本稿では、シリアの歴史を古代オリエント時代から現代までの流れに沿って概観します。

先史時代から古代オリエント時代

シリアにおける人類の活動は、紀元前1万年頃、氷河期が終わり温暖化が始まった頃から確認できます。紀元前8000年頃には麦による農耕が始まり、紀元前6000年頃には灌漑農業が発達、豊かな農業を基盤とした文明が芽生えました。紀元前3千年紀には、エブラやマリなどの都市国家が成立し、メソポタミアやエジプトとの交易で繁栄を極めました。これらの都市国家は、アッカド帝国やバビロニアなどに征服された後も、独自の文化を維持し続けました。

紀元前15世紀にはミタンニ王国が興り、やがてアッシリア帝国の台頭により、この地域はアッシリアの支配下に置かれました。アッシリア帝国はニネヴェ図書館に代表される高度な文化を築き上げましたが、紀元前612年に新バビロニアとメディアに滅ぼされました。その後、アケメネス朝ペルシアがオリエント世界を統一し、シリアもその支配下に置かれました。

ギリシア・ローマ時代

アレクサンドロス大王の征服により、シリアはギリシア文化圏に組み込まれ、急速なギリシア化が進みました。アレクサンドロス帝国の崩壊後にはセレウコス朝が成立し、広大な領土を支配しましたが、その後、アルサケス朝パルティアやローマ帝国の台頭により勢力を弱め、紀元前64年にはローマ帝国に併合されました。ローマ帝国の支配下では、パルミラなどシリアの都市は繁栄を続けました。ローマ帝国が東西に分裂すると、シリアは東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の領土となりました。

イスラム時代

7世紀、イスラム勢力が興隆し、シリアはイスラム世界に組み込まれました。ウマイヤ朝ではダマスカスが首都とされ、その後アッバース朝ではバグダードが首都となるものの、ダマスカスは重要な都市として繁栄を続けました。その後、ファーティマ朝、セルジューク朝、アイユーブ朝などの王朝がシリアを支配し、十字軍との激戦も繰り広げられました。13世紀にはモンゴル帝国がシリアを征服し、イルハン朝が成立しました。

オスマン帝国時代

16世紀にはオスマン帝国がシリアを征服し、その後長い間オスマン帝国の支配を受けました。オスマン帝国時代には、ダマスカス、アレッポ、トリポリなどの都市が重要な交易拠点として発展しました。しかし、19世紀後半からオスマン帝国は衰退し、第一次世界大戦後にはイギリスとフランスの支配下に入ります。

近現代

第一次世界大戦後、シリアはフランスの委任統治領となりました。フランスの支配に抵抗する動きが続き、1946年にシリアは独立を達成しました。独立後のシリアは、政情不安定が続き、クーデターや政権交代を繰り返しました。

1958年にはエジプトと連合してアラブ連合共和国が成立しましたが、1961年に解消、シリア・アラブ共和国として再独立しました。1963年にはバアス党が政権を掌握し、その後、ハーフィズ・アル＝アサド、そしてその息子であるバッシャール・アル＝アサドが長期政権を維持しました。バッシャール・アル＝アサド政権下では、民主化を求める運動や、シリア内戦が勃発するなど、激動の時代を迎えています。

シリアの歴史は、古代オリエントからの長い歴史の中で、数々の文明や勢力の興亡、戦争や紛争を経験し、その歴史は複雑で多様な側面を持っています。 現在もその歴史的変遷の影は色濃く残り、現代シリアの政治や社会構造に影響を与えています。

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