ジム・パチョレック

ジェームズ・パチョレック：日米野球界に名を刻んだ名打者

ジェームズ・ジョゼフ・パチョレック。1960年生まれのアメリカ合衆国ミシガン州出身の元プロ野球選手である。愛称は「パッキー」。内野手、外野手として活躍し、その卓越した打撃センスと確実性で、日本プロ野球の歴史に名を刻んだ選手の一人と言えるだろう。

大学時代とMLBドラフト

ミシガン大学在学中、パチョレックは野球だけでなくアメリカンフットボールでもレギュラーを務めるほどの運動能力の持ち主だった。大学入学はアメリカンフットボールの奨学金を得て実現している。1981年には、日米大学野球選手権とワールドゲームズのアメリカ代表に選出。日米大学野球では、後にNFLのスーパースターとなるジョン・エルウェイが4番打者であったが、不振のため、終盤はパチョレックに4番を譲る場面もあった。
MLBドラフトでは、1981年にクリーブランド・インディアンスから14巡目で指名されたものの、契約には至らなかった。翌1982年、ミルウォーキー・ブルワーズから8巡目で指名され、プロ野球選手としての道を歩み始める。マイナーリーグ時代は、長打力よりも確実性を重視する打者として実績を積み重ねた。AA級エルパソ・ディアブロス時代には9本塁打が最高記録だった。

メジャーリーグでのデビューと日本プロ野球への挑戦

1987年、AAA級バンクーバー・カナディアンズで好成績を残したパチョレックは、ついにメジャーリーグ昇格を果たす。主に一塁手、三塁手として48試合に出場した。デビュー戦では、チームメイトのフアン・ニエベスが球団史上初のノーヒットノーランを達成する歴史的瞬間に立ち会う。パチョレック自身も左翼手として先発出場し、守備で貢献した。
日米大学野球選手権で日本を訪れた経験から、かねてから日本でのプレーを希望していたパチョレックは、1988年に横浜大洋ホエールズに入団。すると、初年度から打率2位、安打数1位という驚異的な成績を残し、外野手としてセントラル・リーグのベストナインにも選出された。真面目な態度と確実な打撃で、日本のファンをたちまち魅了した。

横浜大洋ホエールズ時代と阪神タイガースへの移籍

横浜では、4番打者カルロス・ポンセの後を打つ5番打者として、長年にわたり安定した成績を残した。1989年には再び打率2位となり、1990年には念願の首位打者タイトルを獲得した。しかし、1991年は前半戦で不振に陥り、チームフロントから「ホームランが少ない」と指摘を受けたこともあって、この年限りで契約を打ち切られた。大洋時代の応援歌は、映画「大脱走」のテーマソングで、「パッキー」の愛称とともに、多くのファンに親しまれた。
1992年、友人のトーマス・オマリーの誘いを受け、同じセ・リーグの阪神タイガースに移籍。阪神甲子園球場のラッキーゾーン撤去とチームの守備力向上により、チームはAクラス入りを果たす。当初は3番打者だったが、オマリーの負傷により、後半戦は4番を打つ機会が増加。この年、自己最多の22本塁打を放つなど、打撃面でも大きく飛躍。159安打、14勝利打点の成績を残し、ベストナインとゴールデングラブ賞（一塁手部門）を受賞した。

阪神タイガースでの最終年と引退後

1993年は、外国人選手登録枠の制限により「PKO問題」と呼ばれる騒動に巻き込まれた。チーム事情により、出場機会が減少。加えて、開幕前から続いていた微熱と外野守備の負担から腰痛を発症したため、出場選手登録枠を郭李建夫に譲り、二軍に降格。シーズン中に現役引退を表明し、帰国した。阪神時代も、ファンから厚い支持を受け、引退後も日本のファンから記憶に残る選手として語り継がれている。
引退後は、阪神のアメリカ在住スカウト、母校高校のコーチなどを務めた。2004年には、「日米交流150年」記念セレモニーの一環として、横浜スタジアムで行われた古巣・横浜対阪神のホーム開幕戦で始球式を務め、11年ぶりに来日。両チームに在籍した経験から、どちらのチームを応援するか問われた際には「今日はクジラ（大洋）を応援しようかな」とユーモラスなコメントを残した。

パチョレック家：野球一家

パチョレック家は、ジムを含め三兄弟がメジャーリーグでプレーした野球一家として知られている。兄のジョンは、わずか1試合の出場ながら3打数3安打3打点という驚異的な記録を残し、「生涯打率10割」の伝説を持つ。もう一人の兄トムは、1392試合に出場し、多くの実績を残した。ジムとトムは、1987年に兄弟同時出場という珍しい記録も達成している。息子のジョーイも、MLBドラフトで指名されマイナーリーグでプレーしている。

ジェームズ・パチョレックは、その卓越した打撃センス、確実性、そして真面目な人柄で、日米両国の野球ファンに愛された選手であった。その功績は、今後も語り継がれていくであろう。

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