ジム・マーシャル (野球)

ルーファス・ジェームス・マーシャル：日米球界を彩った名選手

ルーファス・ジェームス・マーシャル（Rufus James Marshall、1931年5月25日 - ）は、アメリカ合衆国イリノイ州出身の元プロ野球選手（内野手）、コーチ、監督です。その長いキャリアの中で、メジャーリーグと日本プロ野球の両方で顕著な足跡を残しました。

メジャーリーグでの挑戦

1950年にシカゴ・ホワイトソックスと契約したマーシャルは、長らくマイナーリーグでのプレーを続けました。1958年にボルチモア・オリオールズでメジャーデビューを果たし、その後、シカゴ・カブス、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ニューヨーク・メッツ、ピッツバーグ・パイレーツと、計5球団を渡り歩きました。1960年には日米野球で来日し、日本の野球ファンにその存在を知らしめました。

中日ドラゴンズでの活躍

1963年、マーシャルは日本プロ野球（NPB）の中日ドラゴンズに移籍しました。これは、現役メジャーリーガーがNPBでプレーする初のケースとして、当時大きな話題を呼びました。当時のNPB最高の年俸40,000ドルに加え、家族用のマンションや滞在用の高級ホテルが用意されるなど、破格の待遇でした。監督の杉浦清は、マーシャルと江藤慎一を打線の軸として期待し、コーチの与那嶺要もその実力を高く評価していました。

オープン戦では不調だったものの、公式戦が始まると、マーシャルはメジャーリーガーとしての実力を発揮し、打ちまくりました。江藤慎一、ボブ・ニーマン（後に葛城隆雄）とともにクリーンナップを形成し、特に巨人戦ではめっぽう強く、バントヒットも得意としていました。1年目には、打率.258ながら28本塁打、92打点を記録し、チームトップの成績を挙げました。

1964年6月17日の巨人戦では、レフトフェンス際の大飛球をファンが捕球してしまい、アウトと判定される「幻のホームラン事件」が起こりました。この判定に中日側は猛抗議し、一時は没収試合も辞さない構えを見せましたが、最終的には「提訴試合」とすることで試合は再開されました。オールスターゲームでは、第2戦で逆転2点二塁打を含む2安打を放ちMVPを獲得し、副賞の軽自動車を愛用していました。この年のシーズンでは、打率.280、31本塁打を記録しました。

1965年もオールスターゲームに出場しましたが、シーズンでは成績がやや落ち、その年限りで引退しました。

引退後、指導者としてのキャリア

引退後、マーシャルはアメリカ球界に戻り、マイナーリーグの監督やメジャー球団のコーチを歴任しました。1974年にはシカゴ・カブスの監督に就任し、NPB経験者のジャック・ブルームフィールドをコーチに起用しました。1979年にはオークランド・アスレチックスの監督を務めましたが、チームは最下位に終わりました。しかし、この時期にはリッキー・ヘンダーソンをマイナーからメジャーに昇格させるなど、選手の発掘にも貢献しました。

1981年、親友の近藤貞雄が中日ドラゴンズの監督に就任すると、マーシャルは一軍総合コーチとして古巣に復帰しました。ケン・モッカを日本に紹介し、平野謙をレギュラーに抜擢するなど、チームの戦力強化に尽力し、1982年のリーグ優勝に大きく貢献しました。

その後

再度アメリカに帰国したマーシャルは、マイナーリーグの監督を歴任し、1991年には日米OBオールスター戦で全米監督として来日しました。その後、野球界を離れ、不動産会社で勤務しましたが、1998年にはアリゾナ・ダイヤモンドバックスの創設に尽力し、現在はチームのシニアアドバイザーを務めています。

選手としての特徴

少しクロス気味の構えから、滑るようなステップで、滑らかなスイングで左右に打ち分ける広角打法が特徴でした。当時の外国人選手はプルヒッターが多かった中、マーシャルの美しい打撃フォームは多くのファンを魅了しました。

逸話

対戦チームのファンから、「マーシャルの子供は『子マーシャル』」という野次を飛ばされたことがあり、この野次は観客に大ウケし、球場全体が笑いに包まれました。

詳細情報

表彰
NPBオールスターゲームMVP：1回（1964年 第2戦）
記録
NPB初出場・初先発出場：1963年4月13日、対国鉄スワローズ1回戦
NPB初本塁打：1963年4月17日、対阪神タイガース1回戦、村山実からソロ
NPBオールスターゲーム出場：3回（1963年 - 1965年）
背番号
27（1958年）
44（1958年）
12（1959年）
25（1960年 - 1961年）
6（1962年 - 同年途中、1963年 - 1965年）
14（1962年途中 - 同年終了）
1（1974年 - 1976年、1979年）
* 62（1981年 - 1983年）

マーシャルは、その卓越した野球センスと指導力で、日米両球界に多大な貢献を果たした人物として、今もなお、多くの野球ファンに語り継がれています。

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