ジャック・アルカデルト

ジャック・アルカデルト

ジャック・アルカデルト（Jacques Arcadelt）またはヤコブ・アルカデルト（Jacob Arcadelt）は、16世紀ルネサンス音楽の作曲家で、フランドル楽派の一員として知られています。1504年または1505年に生まれ、1568年10月14日にパリで亡くなりました。姓はアルカデ（Arcadet）、アルカダン（Arcadent）とも表記されます。

アルカデルトは、主にマドリガーレやシャンソンといった世俗音楽の作曲家として活躍しました。彼の出自はリエージュである可能性が高いとされていましたが、近年ではフランス人説も有力です。

生涯

アルカデルトの生い立ちについては、詳しい情報はほとんど残されていません。しかし、1539年にはローマのジュリア礼拝堂の一員であったことがわかっています。その後、システィーナ礼拝堂に移り、少年聖歌隊の指導者である"magister puerorum"に任命され、後に楽長に昇進しました。

1539年には、全6巻からなる4声のマドリガーレ集のうち4巻を出版しました。1553年頃にフランスへ移住し、そこで残りの生涯を過ごしました。フランス時代には、多数のシャンソンを作曲しました。

1557年には、パトロンであったロレーヌ枢機卿シャルル・ド・ギーズにミサ曲集を献呈しました。アルカデルトは晩年、ギーズの楽長（maître de chapelle）を務めています。

音楽と作曲様式

アルカデルトは、モテット24曲、ミサ曲集全3巻、シャンソン126曲、そして200曲を超えるマドリガーレを作曲しました。彼の音楽は、旋律が豊かで洗練されており、親しみやすいのが特徴です。彼の作品は、イタリアやフランスで100年以上にわたって人気を博しました。特に『マドリガーレ 第1集』は34版も重ねられ、当時としては驚異的な売れ行きでした。

アルカデルトの作品は非常に人気が高く、作者不明の作品が彼の作品と誤って伝えられることも多くありました。アルカデルトの音楽が支持された理由は、イタリア的な感性を捉え、フランドル楽派の和声的で対位法的な作曲技法と融合させた点にあると考えられます。また、彼の音楽は歌いやすく、聴衆の心に響くような旋律を生み出す才能に恵まれていました。

アルカデルトの最も有名なマドリガーレの一つに『真白で優しい白鳥は（Il bianco e dolce cigno）』があります。この曲は、明快なフレーズ構成、洗練された歌心、そして反復を巧みに用いた構成が特徴で、後のマドリガーレ作曲家たちにも大きな影響を与えました。パレストリーナもアルカデルトの影響を受けた一人です。

アルカデルトのアヴェ・マリア

一般的に《アルカデルトのアヴェ・マリア》として知られる作品は、実はアルカデルトのオリジナル作品ではありません。アルカデルトのシャンソン『男たちは恋を徳と見（女の恋は不自由なもの）』を基に、ピエール＝ルイ・ディーチュが改変・捏造したものです。しかし、リストなど、この事実を知らずに騙された人も少なくありません。日本では、ザ・ドリフターズの番組『8時だョ!全員集合』で、少年少女合唱隊のオープニング曲として使われていたことで知られています。

まとめ

ジャック・アルカデルトは、ルネサンス音楽の発展に貢献した重要な作曲家です。特にマドリガーレとシャンソンにおける彼の功績は大きく、その音楽は現代においても多くの人々に愛され続けています。

外部リンク

アルカデルトのMIDI音源 - ウェイバックマシン（2019年3月30日アーカイブ分）
ジャック・アルカデルトの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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