ジャック2世 (キプロス王)

ジャック2世の生涯：波乱に満ちた道のり

ジャック2世（Jacques II de Chypre, 1438/39/40年 - 1473年10月3日）は、キプロス王、名目上のエルサレム王、キリキア・アルメニア王として知られています。彼は「私生児ジャック（Jacques le bâtard）」や「大司教ジャック（Jacques l'archevêque）」とも呼ばれていました。その生涯は、波乱に満ちたものでした。

誕生と初期の生活

ジャックは、キプロス王ジャン2世と愛妾マリエット・ド・パトラの間に庶子として生まれました。父王は彼を非常に可愛がり、1456年には16歳のジャックをニコシア大司教に任命しました。しかし、ジャックとその母は、ジャン2世の正妻である王妃エレニ・パレオロギナに憎まれ、母マリエットは王妃によって鼻を削がれるなどの迫害を受けました。

逃亡と復帰

1457年、ジャックは宮廷の侍従ヤコポ・ウッリを殺害し、大司教職を剥奪されてロドス島に逃亡しました。その逃亡中、彼は船を出してくれたカタルーニャ出身の冒険商人ジュアン・タフレスと親友となり、生涯にわたる友情を育みました。後に、父王の許しを得てキプロス島に戻り、大司教職に復帰しました。

王位簒奪

1458年に父王ジャン2世が亡くなると、王位は父と正妃エレニの娘シャルロットが継承しました。1460年、ジャックはエジプト・マムルーク朝のスルタン、アシュラフ・イーナールからの軍事的支援を得て、異母妹シャルロットに対して反乱を起こしました。彼はシャルロット女王とその夫をキレニア城に追い詰め、1463年にシャルロットは島を脱出してローマに亡命しました。これにより、ジャックはキプロス王ジャック2世として戴冠しました。

ヴェネツィアとの関係

1468年、ジャック2世はヴェネツィアの門閥貴族の娘カタリーナ・コルナーロと代理結婚式を挙げました。これは、不安定な政権をヴェネツィア共和国からの政治的支援で安定させるための政略結婚でした。正式な結婚式は4年後の1472年にファマグスタで行われましたが、その数ヶ月後、ジャック2世は急死しました。彼の死はヴェネツィアのスパイによる毒殺の疑いがあると言われています。

死後の影響

ジャック2世の遺志により、妊娠中であった王妃カタリーナがキプロスの摂政に任命されました。カタリーナはその後、ジャック3世を出産しましたが、彼は生後1年で亡くなりました。その後、未亡人となったカタリーナがキプロス王位を引き継ぎましたが、彼女の治世中にキプロスはヴェネツィア商人の植民地化が進みました。1489年にカタリーナが退位させられた後、キプロス島は1571年にオスマン帝国に征服されるまで、ヴェネツィア共和国領となりました。

ジャック2世の家族

ジャック2世は、王妃カタリーナとの間に1人の息子をもうけました。

ジャック3世（1473年 - 1474年）：キプロス王

また、結婚前に4人の庶子をもうけています。

ウジェーヌ・ド・リュジニャン（1536年没、於ヴェネツィア）：シチリア貴族の娘パオラ・マラッツァと結婚、マルタ島の貴族バッカーリ男爵家の祖
ジャニュ・ド・リュジニャン（1552年以降に没）：1504年にデ・トーロ家の娘と初婚、1547年にヴィルジニア・コサンツァと再婚
シャルロット・ド・リュジニャン（1469年没）：1463年、ソル・デ・ナーヴェスと結婚
* シャルロット・ド・リュジニャン（1468年 - 1480年、於パドヴァ）：ナポリ王フェルディナンド1世の庶子アルフォンソ・ダラゴーナと結婚、夫はガリラヤ公を称する

ジャック2世の生涯は、キプロス王国の歴史における重要な転換点であり、彼の行動と死が、その後のキプロスの運命を大きく左右したと言えるでしょう。

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