ジャンケン娘

映画『ジャンケン娘』解説

『ジャンケン娘』は、1955年11月1日に公開された東宝製作の日本映画です。中野実の小説を原作とし、美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの「三人娘」が初めて共演した作品として知られています。この映画は、単なるアイドル映画に留まらず、ミュージカル映画としての魅力も兼ね備えています。また、1951年の『カルメン故郷に帰る』に続く、東宝の総天然色（カラー）映画としても話題を集めました。

作品の特徴

この映画の大きな特徴は、三人娘それぞれの個性を際立たせた演出です。リーダー格で「中立派」のひばりは黄色、お転婆で「情熱派」のチエミは赤、そして「ウエットで薄幸」のいづみは青の衣装を身にまとい、それぞれのキャラクターが視覚的にも表現されています。劇中には、三人娘による歌や踊りが随所に盛り込まれ、観客を魅了しました。当時は「通俗的な映画」とも評されましたが、若い世代を中心に大きな人気を集めました。

制作背景

当時、絶大な人気を誇っていた三人娘は、多忙なスケジュールを抱え、それぞれの所属事務所やファンの層も異なるため、共演は困難とされていました。しかし、この映画の大ヒットをきっかけに、1956年には『ロマンス娘』、1957年には『大当り三色娘』、1964年には『ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば』と、三人娘の共演映画が次々と制作されました。さらに、団令子、重山規子、中島そのみの三人娘による『大学のお姐ちゃん』をはじめとする「お姐ちゃん」シリーズも制作され、東宝の女性トリオ映画というジャンルを確立しました。

ストーリー

物語は、女子高生ルリと由美が修学旅行で京都を訪れる場面から始まります。二人は加茂川で写真を撮ろうとして川に落ちてしまい、そこで出会った青年と写真を撮ります。その後、ルリの母親の友人であるお稲が経営する茶屋で、舞妓の雛菊と出会い、仲良くなります。雛菊が東京に上京後、京都で会った青年を探してほしいと二人に頼みます。二人の協力で青年が伊豆にいることが判明。ルリは母親に反対され伊豆へは行けませんでしたが、由美と雛菊は伊豆へ向かいます。そこで青年と再会した雛菊は、彼が由美の両親に結婚を申し込んでいたことを知り、失意のうちに京都へ帰ります。しかし、青年は実業家の父親に相談し、雛菊を自由の身にするための援助をします。

ルリの日本舞踊の発表会当日には、ルリの父親である外交官の北島がフランス大使として赴任する前に、娘に会いたいと会場へ現れます。発表会には、由美、青年、そして立ち直った雛菊も駆けつけます。ルリは父親との再会を果たし、感動的な結末を迎えます。

キャスト

阿佐見ルリ：美空ひばり
千明由美：江利チエミ
雛菊：雪村いづみ
お信：浪花千栄子
北島：高田稔
北島夫人：一の宮あつ子
森政治：江原達怡
斎藤又兵衛：山田真二
公明（由美の父）：小杉義男
絹子（由美の母）：南美江
亀沢先生：岡村文子
桑原先生：瀬良明
斎藤重兵衛：小川虎之助
須村：龍岡晋
堺：福田和郎
踊りの師匠：塩沢登代路
おいね：沢村貞子

音楽

主題歌：「ジャンケン娘」（歌:美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみ）
主な挿入歌
美空ひばり：「祇園小唄」、「ラ・ヴィ・アン・ローズ」、「エスキモーの娘」
江利チエミ：「ウスクダラ」、「スコキアン」
雪村いづみ：「夢のマンボ」、「スィート・アンド・ジェントル」、「スマイル」

その他

劇中には、明治製菓の商品が度々登場することから、同社がスポンサーであったことがうかがえます。

参考文献

東京国立近代美術館フィルムセンター編 『日本映画史研究(2) 東宝映画50年のあゆみ(2)』1983年。
藤原佑好 『江利チエミ物語 テネシー・ワルツが聴こえる』 長崎出版、2009年。ISBN 978-4-86-095139-9
* 岡田喜一郎 『昭和歌謡映画館 ひばり、裕次郎とその時代』 中央公論新社〈中公新書クラレ〉、2009年。ISBN 978-4-12-150324-4

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