ジャンネット・デ・ロッシ

ジャンネット・デ・ロッシ（1941-2021）は、イタリア王国ラツィオ州ローマに生まれた、多才な映画技術者でした。メイクアップアーティスト、特殊メイクアップアーティスト、特殊効果技師、そして映画監督としても活動し、そのキャリアを通じて数々の印象的な映像表現を生み出しました。

デ・ロッシの技術は、父アルベルト・デ・ロッシや祖父カミッロ・デ・ロッシから幼少期に学びました。父アルベルトはイタリア映画界の著名なメイクアップアーティストであり、往年の大スターたちの顔を手がけていました。デ・ロッシは10代後半から父の助手として映画製作に参加し、『山猫』（1963年）、『じゃじゃ馬ならし』（1967年）、『ウエスタン』（1968年）といった大作で経験を積みました。父から全権を任された『ワーテルロー』（1970年）を機に、独立したメイクアップアーティストとして活動を開始します。

彼の名前が国際的に知られるようになったのは、ホラー映画監督ルチオ・フルチとの協業が大きいです。特に『サンゲリア』（1979年）での腐敗したゾンビのリアルな特殊メイクは強烈なインパクトを与え、世界的なヒットと共にデ・ロッシの名声も高まりました。続く『ビヨンド』（1980年）でも前作を上回る残酷描写を実現し、イタリアンホラーにおける特殊効果の金字塔を打ち立てたと評価されています。初期にはコメディ映画『エロティシスト』（1973年）で俳優を実在の政治家に似せる特殊メイクや、SFX効果も手がけています。

デ・ロッシは、キャリア初期のイタリア製ゾンビ映画『悪魔の墓場』（1974年）でも、カラーでのゾンビメイクの先駆けとなる視覚効果を創造し、高い評価を得ました。また、ジョー・ダマト監督の『Emanuelle in America』（1977年）では、スナッフフィルムを模した残酷描写の特殊効果を手がけ、そのあまりのリアリティから本物と誤解されてフィルムが差し押さえられるという騒動を引き起こしました。このシーンはデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ヴィデオドローム』（1983年）に影響を与えたとも言われています。

しかし、デ・ロッシの仕事はホラー映画に限りません。ベルナルド・ベルトルッチ監督の『1900年』（1976年）、フェデリコ・フェリーニ監督の『フェリーニのカサノバ』（1976年）、セルジオ・レオーネ監督、フランコ・ゼフィレッリ監督、デヴィッド・リンチ監督など、イタリア国内外の多くの著名監督の作品で、多様なメイクアップや特殊メイクを担当しました。特に1980年代後半以降は、SF、アクション、文芸映画といった幅広いジャンルで活躍しました。

プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスに招かれ、ハリウッドでもその手腕を発揮。『デューン/砂の惑星』（1984年）では、サンドワームの造形をわずか3日で完成させる離れ業を見せ、『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2|キング・オブ・デストロイヤー_コナンPART2』（1984年）では印象的なクリーチャースーツを製作しました。『ランボー3/怒りのアフガン|ランボー3_怒りのアフガン』（1988年）では、ランボーが傷口を火薬で焼く有名なシーンの特殊効果を手がけ、主演のシルベスター・スタローンを感嘆させ、『デイライト』（1996年）への起用につながりました。また、『仮面の男』（1998年）で使用されたマスクのデザインでも知られています。

彼は後進の指導にも力を注ぎ、マウリツィオ・トラーニのような優れたメイクアップアーティストを育てました。私生活では、ヘアスタイリストである妻ミレッラ・デ・ロッシとしばしば共同で映画製作に参加しました。

2003年には、フランスの若手監督アレクサンドル・アジャの依頼でホラー映画『ハイテンション』の特殊メイクを担当し、シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀特殊メイク賞を受賞するなど、晩年まで精力的に活動しました。残念ながら、2021年4月10日に80歳でこの世を去りました。彼の残した功績は、映画における視覚効果の進化に大きく貢献したと言えるでしょう。

（イタリアの特殊効果技師ジーノ・デ・ロッシとは別人です。）

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