ジョン・オールデン・カーペンター

ジョン・オールデン・カーペンター（John Alden Carpenter, 1876年2月28日 - 1951年4月26日）は、20世紀前半に活躍したアメリカ合衆国の作曲家です。彼は製粉会社の副社長という実業家としての顔も持ち、多忙な業務の傍ら作曲活動を行う、いわゆる「週末作曲家」でした。当時のアメリカで流行していた娯楽音楽、特にジャズやブルース、サロン音楽から強い影響を受け、さらにエリック・サティやフランス六人組といったヨーロッパの近代音楽からも刺激を受けながら、アメリカ独自の題材や響きを持つ音楽の創造を目指しました。その革新的な試みは、後の世代のジョージ・ガーシュウィンやアーロン・コープランドといったアメリカを代表する作曲家たちに道を拓いた先駆者として、高く評価されています。

生涯

カーペンターはシカゴの裕福な家庭に生まれ、将来的に家業である製粉会社の経営を引き継ぐ予定でした。ハーヴァード大学では、著名な作曲家ジョン・ノウルズ・ペインのもとで作曲を学びました。学生時代には合唱団のリーダーを務めたり、学生クラブのための社交音楽を作曲したりするなど、音楽との関わりを深めます。大学卒業後、ローマで休暇中のエドワード・エルガーに作曲を師事する機会がありましたが、両者の音楽的嗜好が大きく異なったため、師事関係は短期間で終わりました。アメリカ帰国後は、予定通り家業に入り副社長に就任。実業家としての責任を果たす一方で、シカゴのドイツ人音楽教師から引き続き作曲の指導を受けるなど、音楽への情熱を持ち続けました。

主要作品

カーペンターの作品は、ジャズやブルース、フランス近代音楽など、多様な音楽様式からの影響を独自に融合させた点に特徴があります。特に管弦楽曲やピアノ曲に重要な作品が見られます。

管弦楽曲

ジャズや当時の社交界の音楽に影響を受けた作品として、アメリカの漫画「クレイジー・キャット」を題材としたパントマイム《クレイジー・キャット》（1921年）や、ニューヨークの都市生活を描いたバレエ音楽《摩天楼 Skyscrapers》（1925年）が挙げられます。これらは当時のアメリカ社会を反映した題材と、ジャズの要素を取り入れた音楽で注目されました。彼の最もよく知られた代表作としては、印象主義的な色彩を持つ管弦楽組曲《乳母車の冒険 Adventures in a Perambulator》（1914年）と、同年に作曲された《ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ》があります。その他、ジョージ・ワシントン生誕200周年記念の《信仰の歌 The Song of Faith》（1932年）や、近年初稿が発見され演奏機会が増えている印象主義風の交響詩《海流 Sea Drift》（1933年）などがあります。

室内楽曲・ピアノ曲

室内楽曲では、《ヴァイオリン・ソナタ》（1912年）が、和声と旋律の美しさを追求し、循環主題の使用などからフランクやルクーの影響が指摘される作品です。《弦楽四重奏曲》（1927年）では、旋律、音色、リズム、線的対位法が探求され、ドビュッシーからの影響がうかがえます。《ピアノ五重奏曲》（1927年）は、新古典主義的な簡潔さと喜びに満ちたリズムが特徴的です。

ピアノ曲は多数ありますが、特にサロン風の小品には再評価されるべき作品が多く含まれます。《アメリカ風ポロネーズ》は、キューバやメキシコの民族音楽影響が見られ、《アメリカ風タンゴ》はスコット・ジョプリンやナザレーを思わせる作品です。《即興曲 変ホ短調》にはドビュッシーの影響が感じられます。《小さな踊り子》は印象主義風のカン・カン、《小さなインディアン》は印象主義風のマクダウェルを思わせます。5曲からなる《組曲 Diversions》（1930年）は、ラヴェルを想起させる透明な響きとモダンな和声を持ちながらも、ハバネラやワルツ、ケークウォークなど多様なリズムを用いたユニークな作品です。ハーヴァード時代の《ピアノ・ソナタ》は個性に乏しいとされます。

まとめ

ジョン・オールデン・カーペンターは、本業を持ちながらも精力的に作曲活動を行い、アメリカ音楽に新しい風を吹き込んだ作曲家です。ジャズや近代ヨーロッパ音楽を取り入れた彼の作品は、後のアメリカ音楽が国際的な地位を確立する上で重要な足がかりとなりました。彼は間違いなく、ガーシュウィンやコープランドといった次世代の作曲家たちの基礎を築いた先駆者として、アメリカ音楽史において重要な位置を占めています。

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