ジョン・ペリー (数学者)

ジョン・ペリー：工学・数学の先駆者、日本の教育改革に貢献

ジョン・ペリー（John Perry、1850年2月14日 - 1920年8月4日）は、アイルランド出身の工学者・数学者であり、明治時代にお雇い外国人として来日し、日本の工学教育に大きな影響を与えました。

生涯

ペリーは1850年、ロンドンデリー県で測量士の息子として生まれました。クイーンズ・カレッジ卒業後、グラスゴー大学でケルヴィン卿ウィリアム・トムソンの助手として研究に携わり、その後、ロンドン・シティ・ギルド協会で機械工学の教授を務めました。

1875年（明治8年）、日本政府の招聘により来日。工部大学校（現在の東京大学）で数学の教鞭を執り、助教授として後進の指導にあたりました。同僚にはウィリアム・エドワード・エアトンやジョン・ミルンなどがいました。当時、日本ではまだ普及していなかった方眼紙を工学教育に導入し、関数をグラフで視覚化することで、学生の理解を深めました。門下生には井口在屋がいます。

1882年（明治15年）に帰国後、1896年から1913年までインペリアル・カレッジ・ロンドンの数学教授を務めました。1900年には英国電気工学会(IEE)の会長に、1906年から1908年までロンドン物理学会の会長に選出されています。1901年、数学教育の改革運動を推進し、この運動は後に「ペリー運動」として、小倉金之助らによって日本にも紹介されました。

ペリーは、かつての上司であるケルヴィン卿を深く尊敬しており、1890年に行ったコマ回しに関する講義をまとめた書籍には、ケルヴィン卿への賛辞が掲載されています。この書籍は後に復刻され、2022年には『コマとジャイロ　回転体の科学と技術』として日本語訳が出版されました。

また、ペリーはジャイロコンパスの実用化にも取り組み、シドニー・ブラウンとともに研究を進め、1919年にアメリカ合衆国特許を取得しています。

地球の年齢に関する異論

ペリーは、ケルヴィン卿が提唱した地球内部の熱伝導率に関する仮説に異議を唱えました。ケルヴィン卿は、地球の年齢を2千万～4億年程度と推定していましたが、ペリーは1895年の論文で、地球内部が部分的にでも流動的であれば、熱伝導効率が向上し、地球の年齢はケルヴィン卿の計算よりもはるかに長くなる可能性があると主張しました。

しかし、当時の科学界はペリーの説を支持せず、地球物理学のモデルは地球が固体であるという前提で構築されていました。1903年に放射性崩壊による熱の発生が発見され、岩石の放射年代測定が開発されたことで、地球の年齢がケルヴィン卿の主張よりもはるかに長いことが確認されました。ペリーの説が再評価されたのは、1960年代に大陸移動説が再評価されてからです。

ペリーは1901年6月にグラスゴー大学から名誉博士号を授与されました。

日本語訳著書

ムーア共著『数学教育論』鍋島信太郎訳、岩波文庫、1936
『初等実用数学』(数学教育名著叢書 新宮恒次郎訳. 山海堂出版部, 1930
『技術者のための微分積分学』武田楠雄 訳編. 森北出版, 1959
フェリックス・クライン共著『数学教育改革論 (世界教育学選集 丸山哲郎訳. 明治図書出版, 1972
* 『コマとジャイロ　回転体の科学と技術』髙島直昭 訳、森博嗣 監修. 誠文堂新光社, 2022

ジョン・ペリーは、工学・数学の分野における先駆者であるとともに、教育者として、日本を含む世界の教育改革に貢献した人物です。彼の功績は、今日においても高く評価されています。

もう一度検索